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農業者のためのCSAの基礎|概念やメリット、課題とそれを乗り越えるため工夫を解説。アメリカの事例も

生産者と消費者が対等な関係を築きながら、農産物の売買をするCSA(コミュニティ・地域支援型農業)という仕組みがあります。CSAの概要や歴史、取り組むメリットや課題について、日本とアメリカのCSAをよく知る石川凜さんに解説してもらいました。


アメリカのCSA

写真提供:石川凜
CSA(Community Supported Agriculture)は、新たな農業の形として注目されているので、耳にしたことがある人もいるでしょう。新規就農者の中にも、農業経営にCSAを取り入れたいと考えている人もいるかもしれません。

日本ではCSAには明確な共通認識がなく、さまざまな解釈ができます。CSAに取り組む場合には、継続できる仕組みを考え、入念に準備をする必要があるでしょう。アメリカでCSAの実習を受け、CSAに関する日本とアメリカとの比較について卒業論文を書いた石川凜さんに、CSAの基本的な概念、課題とそれを乗り越えるためのアイデアなどについて解説していただきました。

次代の農と食をつくる会
石川さんが登壇された「次代の農と食を語る会:地域で支える農業のかたち CSAのこれまでと未来を考える」を元に、主催者の許可を得てまとめています。

お話を聞いた人

石川凜
写真提供:石川凜

石川 凜さん プロフィール
出身:宮城県仙台市
現職:株式会社 ポケットマルシェ 事業開発+株式会社 坂ノ途中 webライター
前職:クックパッド株式会社 クックパッドマート物流チーム
略歴:
2014年 京都大学農学部食料・環境経済学科入学
2017年 アメリカ・ケンタッキー大学農学部へ1年間の交換留学、大学の圃場(ほじょう)でCSAの実習
2019年 卒業論文「CSA農家の矛盾とジレンマ:日本とアメリカ・ケンタッキー州のCSA比較」

CSAの概要

アメリカのCSA
写真提供:石川凜
CSAは日本語ではコミュニティ・地域支援型農業と訳されます。まずは、CSAの概要について整理します。

CSAのコンセプト|生産者と消費者が対等な関係

CSAは、消費者への直販の一つで、「消費者との関係を大事にしたい生産者」と「特定の生産者を会員として応援したい消費者」が対等な関係性で連携し、互いに支え合いながら定期的に農産物を売買する仕組みです。

CSAの歴史|実は日本発祥?

CSAの歴史は諸説ありますが、日本で1970年代から90年代初頭にかけて広まった有機農業運動の一環である産直提携のコンセプトから影響を受けたといわれることもあります。2000年ごろにCSAという形で、アメリカから日本へやってきました。

2000年ごろからは、フランスではAMAP(農民農業支援維持団体)、イタリアではGAS(連帯購入グループ)としてCSAと同様のコンセプトが波及しています。

日本でのCSAの共通認識は?

CSAで営農する生産者数が多いアメリカでは、CSAについてある程度の共通認識があります。例えば、非営利団体のJust Foodは、CSA認証の付与だけでなく、生産者と消費者へ向けて理解促進のために情報提供なども行っています。また、欧州が拠点の国際機関のURGENCIは、基本的な原則を立てています。一方、日本ではCSAの明確な共通認識がなく、CSAに取り組む生産者の解釈も多様です。
石川凜さん
石川凜さん
日本では、CSAとうたっていなくても、実質的にCSAに取り組んでいる農園もあるので、正確なCSA農園数を把握することは難しいです。

このように明確な共通認識がない中で、日本でCSAに取り組んでいるとはっきりと示すための栽培作目や栽培方法など条件はあるのでしょうか。
石川凜さん
石川凜さん
CSAを実践している生産者は、有機栽培や多品目栽培をしている人が多いですが、日本ではお米などの単品目や畜産の人もいます。栽培方法や作目で限定されているわけではありません。

CSAは地域支援型農業と訳されていますが、CSAは地産地消の意味合いを含んでおり、消費者の居住地域は限定されるのでしょうか。
石川凜さん
石川凜さん
CSAは、コミュニティで支援する形態なので、生産者と消費者のつながりを地域内に限定する必要はありません。オンラインでのつながりでもありだと思っています。

CSAと消費者直販は何が違うの?

CSA
写真提供:石川凜
CSAと野菜のセット販売などの消費者直販とは、非常に近い仕組みのようにみえます。実際には、CSAと野菜のセット販売にはどのような違いがあるのでしょうか。


支払い方法|前払い制

CSAが野菜のセット販売などの直販システムと異なる点は、1年分や数カ月分など一定期間の代金を消費者が生産者に前もって支払うことです。また、前払いにより生産者と消費者がリスクを共有し、不作でも豊作でも消費者側が買い取る姿勢も野菜のセット販売とは異なります。
石川凜さん
石川凜さん
アメリカをはじめ、CSAの基本的なコンセプトは前払いです。でも、日本の消費者は前払い制にはあまりなじみがありません。明確な共通認識がない日本で、CSAに取り組む生産者がCSAの世界観を目指す場合には、本当に前払いが必須なの?その都度払いではいけないの?という点も再考の余地があると思います。

受け取り方法|会員が農園に受け取りにいく

野菜セットの販売は、宅配便を活用する場合が多いですが、CSAの場合は基本的には会員である消費者が農園まで野菜を受け取りに行きます
石川凜さん
石川凜さん
これは車社会のアメリカだからこそ成り立つ仕組みともいえます。CSAの共通認識が明確でない日本でも、会員が農園まで受け取りに行くのは必須なのか、消費者直販の中の宅配スタイルでもCSAとうたっていいのかという点についても議論が必要です。私は、生産者と消費者が対等で、消費者もリスクを負いながら、同じものを目指す直販であればCSAだと考えています

CSAに取り組むメリットは?

CSAとは
写真提供:石川凜
CSAに挑戦するメリットをCSAを行う生産者側と、農産物を購入する消費者側に分けて説明してもらいました。

生産者のメリット

生産者がCSAを実践する主なメリットは、「安定した販路を得られること」「新規就農で資金不足のときに、前払い制のため投資がしやすいこと」「会員数がわかるので、作付け量が把握しやすく計画が立てやすいこと」です。
石川凜さん
石川凜さん
前払い制や会員数(販売数)があらかじめわかるという点は、クラウドファンディングのシステムと似ています。

消費者のメリット

消費者がCSAを実践する農家から農産物を購入する主なメリットは、「生産者のことを深く知ることができること」「スーパーマーケットでは買えない新鮮な旬の野菜が手に入ること」「生産者を介したコミュニティの中で仲間ができ、精神的に充実すること」「会員同士で横のつながりができやすいこと」「子どもの食育やイベントへの参加機会が得られること」です。
石川凜さん
石川凜さん
アメリカでは、流通の仕組みや地理的な条件から、州によっては新鮮な旬の野菜が手に入りにくいのでCSAは有益です。また、会員同士で横のつながりが持てることはCSAの特徴で、日本でもママさんコミュニティとして機能する場合もあります。このように、CSAは新たな居場所づくりにも貢献しています。

CSAの課題と乗り越えるための工夫。アメリカでの事例

マーケット
出典:Pixabay
CSAは生産者にも消費者にもメリットがある反面、さまざまな課題に直面することが多々あります。CSAを行う生産者を応援する消費者が抱える課題を、生産者がどのように工夫して解決に努めているのかアメリカの事例を説明してもらいました。

受け取りに行く手間|職場でのピックアップで解決?

CSAの基本コンセプトは会員が農園に「受け取りにいく」ことですが、車社会のアメリカであっても、消費者は定期的に農園まで受け取りに行く手間がかかってしまいます。
石川凜さん
石川凜さん
アメリカでは、解決策として職場で野菜を受け取ることができるサービスなど、消費者の負担を少なくする工夫をしている農園もあります。

料理のハードルの高さ|レシピで解消?

CSAで野菜を購入すると、生産者からどのような野菜が届くのか事前にわからないため、消費者は料理をする時間とスキルを持った顧客に限定されてしまいがちです。
石川凜さん
石川凜さん
解決策として、アメリカでも日本でもCSAに取り組む生産者は、レシピをつけて調理方法を示したり、食べ方の提案をしたりしています。

また、消費者の好みに合わせて野菜セットの中身を一部カスタマイズする方法もあります。しかし、これは生産者側の大きな負担になります。
石川凜さん
石川凜さん
生産者側に負担をかけずに野菜セットの一部をカスタマイズする例として、アメリカでは、野菜セットをピックアップする場所に交換ボックスを設置し、その中にお客さん自らが不要な野菜を一つ入れ、必要な野菜を箱から一つ持っていく方法を採用する場合もあります。配送については、いち生産者がすべてのカスタマイズに対応する手間がかかってしまいます。それを解決するために活用できるHarvieというウェブプラットフォームもあります。

会員属性や地理的なへだたり|オンラインでのコミュニティづくりも

アメリカでCSAを利用する消費者は、都市部近郊などの居住地や、収入レベル、教育レベルなどの属性にへだたりがあります。
石川凜さん
石川凜さん
アメリカでは所得に応じてCSAの会員価格を変えている農園もあります。


また、CSAの定義としては、地域を限定していませんが、実際に地理的なへだたりは生まれてしまいます。
石川凜さん
石川凜さん
FacebookなどSNSで会員限定のコミュニティづくりをして、地理的に離れている会員同士をSNSを活用して心理的につながるケースが見られます。

CSAのボトルネック|これから考えていかなければいけないこと

CSAのこれから
出典:Pixabay
CSAは魅力的な仕組みですが、生産者がCSAに挑戦したからといって必ずしもうまくいくわけではありません。


石川凜さん
石川凜さん
実は、アメリカでは、CSAの総数は頭打ちだといわれており、多くの生産者は開始後1、2年のうちにCSAをやめてしまっています。


生産者が継続的にCSAを続けるためには、どこがボトルネックになっているのでしょうか。また、解決の糸口を見いだすことはできるのでしょうか。

煩雑な事務作業は誰がやる?

CSAを行うと、栽培だけでなく、マーケティング、集金、収穫物の収量管理、梱包(こんぽう)、分配、コミュニティ形成、レシピを作るなどの消費者への情報提供、イベント運営など、市場に流通していれば不要な多岐にわたる作業が増えます。この煩雑な事務作業は生産者にとって負担になります。
石川凜さん
石川凜さん
作業量の多さは、プラットフォームなどを活用して作業を外部化したり、省力化することも解決策の一つです。ただ、CSAに重要なお客さんとの関係構築については、必ずしも生産者側のコストが増えるとはいえません。それは、お客さんとのコミュニケーションや関係構築にしっかり取り組むと、顧客継続率が向上します。リピーターのお客さんが増えれば、新規顧客を集めるためのマーケティングコストが減らせるからです。

労働コストに対する収益性の低さにどう対応する?

CSAを実践しても、栽培以外の煩雑な作業が増える一方で、十分な収益が上げられない傾向があります。十分な収益が上げられない理由は、主に「規模拡大」と「価格設定」です。

規模拡大できない・したくない

CSAを経営の基盤として継続的に運営していくためには、栽培に必要な機械や、業務の効率化のためのシステムに投資も必要です。そうなると、ある程度以上の経営規模が不可欠です。しかし、小規模でのCSA農園の場合、労働力や資金不足により規模拡大できないケースがみられます。また、CSAを行う生産者の中には、お客さんの顔が見える農業を目指しているのでそもそも規模拡大したくないと考える生産者もいます。
石川凜さん
石川凜さん
規模拡大以外の解決方法としては、複数生産者のコミュニティでCSAを運営し、役割分担をすることです。

妥当な価格設定ができない

CSAの基本コンセプトは、生産者と消費者の関係の上に成り立っています。生産者と消費者の関係が深く、近いからこそ、生産者が消費者に寄り添い過ぎてしまい妥当な価格設定ができないということが起こります。結果として、継続的な農業経営をする収益が確保ができないというジレンマを抱えがちです。
石川凜さん
石川凜さん
経営の安定化のためにCSAという方法を選んでいるのであれば、やはりCSAに取り組むにあたっても経営的な視点を持って、持続的な事業にしていくことが必要だと思います。

CSAを継続するための仕組みづくりをしよう

CSA
出典:Pixabay
CSAは、栽培以外にさまざまな活動や作業が増加します。そのため、生産者がすべてを一人で実践するのは非常に困難です。複数の生産者がコミュニティを形成し、役割分担をして業務、作業を行うことや、生産者と消費者が直接的な関係を保ちつつ、そのやりとりを支える調整や編集機能を分化して、外部のプラットフォームやサポーターが担っていくことも今後のCSAの取り組みには必要でしょう。

コンセプトが魅力的なCSAを、どのように経営に組み込んで継続していくのかをしっかり考えましょう。

 

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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