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アメリカの卵:食品ラベルとアメリカの食トレンド②ケージフリー|アメリカ生活アグリ日誌Vol.8


【連載】アメリカ在住日本人家族が体験した農業イベントや、現地の「食・農」に関する情報をレポートするコラム「アメリカ生活アグリ日誌」。 第8回のテーマは「アメリカの卵:食品ラベルとアメリカの食トレンド②ケージフリー」TKGは日本だからこその贅沢?! アニマルウェルフェアについても気になる!アメリカの卵事情にスポットを当てます。

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Miyuki Tateuchi

アメリカのミシガン州に居住中。海外の農業情報や普段の生活を通して感じた食農トピックを紹介します。祖父が農家だった影響もあり、四季折々の「旬」を大切にしたいと思っています。…続きを読む

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easter egg

出典:Pixabay
アメリカ在住の筆者が現地の農場や食、ガーデン事情を不定期でレポートします。違った視点から見ると、何か新しい発見があるかも!?

前回は、春を感じるアメリカの農イベント「メープルシロップツアー」やメープルシロップの活用法について、また簡単にではありますが日本での国産品への取り組みについても紹介しました。
アメリカで春を感じるイベントといえば「イースター」。毎年タイミングが変わりますが、春休みと重なることも多いため、日本でもテーマパークでスペシャルイベントが行われたりするなど、認知度が高くなってきています。
イースターといえば「卵」。今回は農のトピックらしく、身近な食品「卵」についての知識を深めます。

イースターは喜ばしい春のお祭り。何をお祝いするの?

easter egg
出典:Pixabay
イースターはキリスト教にとって、大事なお祭りです。というのも、イースターは十字架にかけられたキリストが復活する日とされているからです。
キリストが十字架にかけられた日が「グッドフライデー」と呼ばれる金曜日、そして、イースターはその3日後の日曜日です。

日にちは「春分の日の後の最初の満月から数えて最初の日曜日」ということになっているので、毎年異なり、2021年のアメリカやヨーロッパでは4月4日でした。2022年は4月17日です。同じキリスト教でも、ローマ・カトリックではない東方教会だと、4月中下旬から5月初旬になります。

イースターと呼ばれる日は1日だけですが、教会では40日前からレントと呼ばれる期間が始まり、初日の水曜日には悔い改める印として教会で額に灰の十字をつけてもらう「灰の水曜日(Ash Wednesday)」があります。レント期間中、毎週金曜日に肉の食事を摂らない人や好きな食べ物を我慢する人もいます。

象徴は卵とウサギ

easter bunny
出典: Pixabay
アメリカのイースターでは、卵とウサギは欠かせません。2つとも生命と豊穣(ほうじょう)のシンボルであり、卵は鳥が卵の殻をつついて出てくるところから「復活」のイメージ、ウサギは多産なことから「新しい命」のイメージに重なります。

動物がいるファームや公園、そして一部の教会では、子どものためのお楽しみとして、「エッグハント」もしくは「Eggstravaganza」と呼ばれるイベントが開催されます。プラスチックの卵や卵型のチョコレートを見つかりにくい草陰などに隠し、それを宝物探しのような感じで子ども達が見つけに行って拾うというものです。

まだ足取りのおぼつかない子どもたちが、小さなかごを持って歩き回ることのかわいらしさ。ウサギの方もイベントによく登場しますが、こちらは等身大の着ぐるみで、子どもが泣き出さないか心配になるくらい(!?)、あまりかわいらしくないのが定番です。

びっくりした派手なイベント

heli egg
出典:Flicker(Photo by Greenville Daily Photo)
変わったところでは、ヘリコプターからカラフルなおもちゃの卵が放出され、それを下にいる人達が一斉に取りに行くというイベントも。キリスト教の荘厳な雰囲気にはなじみませんが、参加者には缶詰など日持ちのする食料の寄付を呼びかけていて、博愛の精神に通じるものでした。ほかには、卵をペイントしたり、鳥の巣箱を作るクラフト系のイベントも。「卵」を主軸にアイデア次第で、イースターにはいろいろな取り組みができそうです。

イースターエッグの作り方や卵の殻の活用方法はこちら

アメリカの卵から出てきた疑問と基礎知識の深掘り

raw egg
出典:写真AC
卵は身近な食材ということもあり、日々、当たり前のように食べている面があると思います。ここでは、アメリカの卵を見たからこそ浮かんだ、卵についての疑問を考えてみます。

なぜ日本の卵は生で食べても安全とされているか?

TKG
出典:写真AC
日本にいた時は、正直あまり特別な感情を持っていなかった卵ですが、アメリカに来てからは「手軽に、生卵で卵かけご飯(TKG)ができない!」ということで私の中でその価値が急上昇しました。

実は、【Pasteurized(パスチャライズド) egg】とパッケージに表示があり、Pの文字が印字されている卵は低温殺菌されているので生でも食べられるとされているのですが、汚染リスクが0ではないこと、普段行くスーパーには売っていないこと、売っていてもお値段がやや張る(1ダース約5ドル/約540円)こともあって、私はまだ試していません。

低温殺菌されていない通常の卵でも「食あたりしたことはない」というアメリカ在住の日本人はいるのですが、毎回ヒヤヒヤしながら食べるのは嫌なので、日本に帰った時の楽しみに取っています。

逆に、日本では生食が前提です。鶏がサルモネラ菌に感染しないよう飼育の環境を整えたり、流通の際にはGP(Grading&Packing)センターという鶏卵選別包装施設で、ほぼ人の手を介さずに卵殻の洗浄、次亜塩素酸ナトリウムなどでの消毒と汚れやひびを含めた品質の検品が行われています。賞味期限も2週間程度とされ(アメリカでは2カ月というものも見かけます)、お店でも安全衛生管理がされています。安心してTKGが食べられる背景には、見えないところでのさまざまな取り組みがあったわけなのですね。

卵の黄身の色は何で決まる?

omlet
出典:写真AC
アメリカでオムレツを作った時に気になったのは、「あれ?卵の色がなんか薄い?」ということでした。目玉焼きでは気にならなかったのですが、オムレツや卵焼きでは日本で見慣れていた色と違っていて、全体的に白っぽいレモン色なのです。

そして、その答えが「卵の黄身の色は鶏が食べている飼料で決まる」というものでした。アメリカでも日本でも鶏の餌はトウモロコシが主流ですが、日本では濃い色の方が人気があるため、パプリカやマリーゴールドなど、カロチノイド色素が多く含まれている天然素材を飼料に加えています。さらに、「カラーファン」と呼ばれる色味表を使って、実際の黄身の色を検証し、理想の色に近づくように飼料の配合を調整する徹底ぶりです。

ちなみに、「濃い色の方が栄養価が高そう」と思いがちですが、黄身の色によって卵の栄養価は変わらないとのことです。(参考:一般社団法人日本養鶏協会

双子の卵に会えると何だかラッキーな気分!?

双子卵
出典:写真AC
割った卵が双子だったということはありませんか?「二黄卵」と呼ばれるこの卵は、産卵を始めたばかりの若い鶏が産むことが多く、排卵の周期が安定しないため、2個の卵黄が排出されることによってできる自然現象です。割合としては、卵全体の3〜5%の貴重なものです。

この二黄卵、アメリカで立て続けに出会うことがありました。それは、通常買うLサイズの卵が売り切れており【Jumbo(ジャンボ)】というサイズのものを買った時。ほぼ全ての卵が二黄卵でした!

産卵が始まったばかりの卵は通常小さいので、大きい卵だと養鶏場ではある程度の見極めはできます。ただ、日本では二黄卵は検品の段階で取り除かれ、業務用で使用されることが多いため、お目にかかる機会が少ないようです。「二黄卵」だけを集めた卵も商品化もされていますが、偶然出会えたら、なんだか得をしたような、ほっこりした気持ちになりますよね。

今、卵を語るうえで欠かせないキーワード
「ケージフリー」「アニマルウェルフェア」

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出典:Pixabay
アメリカでよく見かける卵のパッケージの表示が、【Cage Free(ケージフリー/平飼い)】。以前、グルテンフリーの記事でも書きましたが、英語の「フリー」は「〜がない」を表す意味もあり、「ケージフリー」は文字通り、「檻(おり)がない=檻(おり)に閉じ込められていない」という意味です。ただし、鶏は鶏舎の中を自由に歩き回ることはできますが、屋外に自由に出られるわけではない点は注意が必要です。


ほかには、【Pasture raised(パスチャー・レイズド/牧草地で育てられた)】という表示も見かけます。これだと屋外に出て牧草をついばむことができるので、ケージフリーよりさらに一歩進んだ飼育環境になります。(この表記と、TKGの項目で取り上げた「低温殺菌」を意味する”Pasteurized”が紛らわしいので、注意が必要です)

日本の実情・アメリカの実情

日本では卵を大量生産・安定供給するために効率性を重視し、養鶏場の90%以上がケージ飼いとなっていますが、この飼い方だと鶏が自由に動き回ることができず、ストレスや運動不足から病気になりやすくなるため、欧米ではアニマルウェルフェア(動物の福祉)の観点からNGになってきています。

卵を取り扱う大手企業、例として外食産業だとマクドナルド(McDonald’s)やスターバックス(Starbucks Coffee Company)、食品だとネスレ(Nestle)やキャンベルスープ(Campbell Soup Company)、流通ではウォルマート(Walmart)やコストコ(Costco Wholesale Corporation)などを始め、多くの企業が2025年までに「ケージフリー」の卵に切り替えることを表明しています。

アメリカでは、カリフォルニア州やマサチューセッツ州を始め、ケージ飼育の中でも特に狭い「バタリーケージ」が禁止されている州は8州(2021年3月現在)となり、私がいるミシガンでは州法により2024年までに鶏だけでなく、豚、子牛もケージなしの環境で育てられることが義務づけられるようになるとのことです。

「ケージフリー」は将来の卵の価格にはね返るとの見方もありますが、私が最近買ったアメリカのコストコでのケージフリーエッグは2ダースサイズで約3ドル50セント(約380円)。
会員制で大量の食品をさばくコストコだからこそなせる業かもしれませんが、生産者、消費者に動物も含めた「三方良し」の関係が卵業界でこれからも広がっていくのか、今後も期待して注目していきたいと思っています。

次回の記事は、新緑の時期をテーマにします。アメリカでも庭に出てガーデニングを楽しむ人が増えてくる季節です。そんな中、庭の中でもたくさんの面積を占めるのが「芝生」。アメリカの芝事情について探ってみます。


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「アメリカ生活アグリ日誌」

Miyuki Tateuchi プロフィール
就職情報会社、外資系人事コンサルティング会社を経て、2017年よりアグリコネクト株式会社でリサーチ業務に従事。2019年より夫の転勤に伴い、アメリカのミシガン州在住。成長期真っ只中の2児の母。農業と地域、世界の料理などへの興味を元に、情報発信していきます。

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