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芝生大国アメリカ。なぜこんなに広まった?日本でも役立つメンテナンス方法とは?|アメリカ生活アグリ日誌Vol.9

【連載】アメリカ在住日本人家族が体験した農業イベントや、現地の「食・農」に関する情報をレポートするコラム「アメリカ生活アグリ日誌」。 第9回のテーマは「芝生大国アメリカ。なぜこんなに広まった?日本でも役立つメンテナンス方法とは?」。近所のあちらこちらの庭から芝刈り機の音が鳴り響いてくると、それは初夏の訪れを知らせるサイン。アメリカの芝生事情に迫ります!


lawn yard

出典:Pixabay
アメリカ在住の筆者が現地の農場や食、ガーデン事情を不定期でレポートします。違った視点から見ると、何か新しい発見があるかも!?

前回はアメリカの卵について、料理のときに感じたことからの深掘り、「ケージフリー」表示とその動向、イースターの行事紹介をしました。

今回は新緑の時期、若葉とともに青々として美しい「芝生」について取り上げます。
マンガ『宇宙兄弟』では、アメリカのシーンで「芝刈りの技術さえあれば仕事には困らないね」と言う台詞がありましたが、まさにそう。アメリカでは公園だけでなく、家の庭、路肩にも。あたりを見回すと芝生が必ず目に入ってきます。

日本でも「芝生が美しい庭」というのは憧れですが、きれいに維持するにはそれなりの労力がかかるもの。アメリカ人と芝生との関わり方を見つつ、メンテナンス法など、日本でも役に立つ情報をお届けします。

一家に一台。アメリカの一般家庭には芝刈り機がある!

lawn mower
出典:Pixabay
初夏といえば、芝刈りのスタート。気温が上がってくると、近所のあちらこちらの庭から芝刈り機が鳴り響く音が聞こえてきます。
芝刈り機は手押しタイプもありますが、写真のような乗車タイプを使用する人も。アメリカの家の庭は広く、しかも一面芝生に覆われているので、一気に効率的に作業したい人だとこうなるのです。

気温も高くなるこの季節には週1回、もしくは伸びているのを少し我慢したとしても、2週間に1回の刈り込みは必須なかなかの重労働で、たいがいどの家も、芝刈りはお父さんが担当しています。

我が家のように賃貸の物件だと、芝刈り代が家賃に含まれていて担当の人が定期的に来てくれます。機械を買うだけでも相当の出費(新品の乗車タイプになると約15万円以上)だし、上手な芝刈りには技量も必要。アメリカ人でも外部業者(学生アルバイトも多い)に委託している人はいます。

ちなみに、芝刈りロボットも販売されているのですが、費用面や性能面で折り合わないためか、今のところ近くで走る姿は一度も見ていません自由な時間を生み出すためのニーズは高いはずなので、将来的に普及するのか、今後も注目して見ていきます。

なぜ、アメリカはこんなに芝だらけなのか?

townhouse
出典:Pixabay
都市部と郊外ではまた住宅事情が異なりますが、ミシガン州で近隣の住宅を見る限り、どこの家にも必ず芝生があります。写真のような「タウンハウス」という、同じような外観が続く集合住宅にも通常、前庭に芝生があり、きれいに管理されています。

日本だと家の周りが塀やフェンス、生け垣で囲われていることが多いですが、アメリカの家はとてもオープン。その土地の治安の良さにもよりますが、囲われていることはあまりありません。

そもそも芝生のあるアメリカの家はどのようにでき上がってきたのでしょうか。

芝生は古くから裕福であることの象徴

caste
出典:Pixabay
ヨーロッパの古城の周りには必ず芝生がありますよね。これは森に囲まれた土地だと敵が潜んでいても見えないので、警備上開けたスペースが必要だったという事情によります。ただし、もともとはグラウンドカバーとして、芝生より手入れが簡単なカモミールやタイムが使われていたといわれています。

芝生が庭園のデザインにも取り入れられ、イギリスやフランスの富裕層の邸宅にも広がったのは一説によると17世紀。芝刈り機がない当時、沢山の芝生をきれいに整えるためには、それだけ多くの家畜や人員が必要であり、「自分はこれだけの財産を持っている」という豊かさの証しが芝生だったのです。

不動産開発でヒットした、アメリカの「芝生つきの家」

subdivision
出典:Flicker(Photo by Edgar Zuniga Jr.)
アメリカの住宅地を上空から眺めると、通りをはさんで整然と家が並んでいることがわかります。そして、似たような区画があちらにも、こちらにも。

このような大規模開発の住宅地の先駆けが、1940年代後半から1950年代にニューヨークやペンシルベニア郊外などに作られたレヴィットタウン(Levittown)です。

Levitt親子が手がけたこの住宅地は、戦地から帰還してから結婚したカップル層に受け、大ヒット。みんな同じデザインで画一的な造りの家ですが、前庭に芝生がある」という新しい設計デザインと「大量生産方式なのでマイホームが手ごろな価格で買える」というのが人気の理由でした。

それから70年余り。芝生が広がる庭はアメリカ住宅のスタンダードとなり、今に受け継がれています。
参考:TodayIFoundOut.com

きれいな芝生を保つために覚えておきたいこと

mower
出典:Pixabay
隣の芝生は青い」という慣用句がありますが、アメリカにいると周りの家の庭も気になります。というのも、隣の家の敷地とはっきりとした境界線がなく、庭が芝生続きになっていることも多いため、手入れの良し悪しが目につきやすいのです。

それはメンテナンス状態が常に評価されているようなもの。近隣の庭の状態は一帯の住宅不動産価値にも影響します。状態によっては住宅の管理組合(HOA)から指導も入るので、みんな真剣にならざるを得ないというわけです。

ここでは、アメリカ人がきれいな芝生を保つために心がけている、いくつかのポイントを紹介します。


タンポポを侮ってはいけない。適切な除草対策が身を助ける

Dandelion
撮影:Miyuki Tateuchi
写真で、通り手前に見える黄色い花はタンポポです。見えづらいのですが、通りをはさんで見える黄色い点もタンポポ。タンポポを放置していると、綿毛が風で飛ばされて、付近一帯がいつの間にかタンポポ畑になってしまいます

黄色い花がついているうちはまだかわいらしいのですが、綿毛がなくなる頃には草丈も伸び、もはや立派な雑草畑。芝生をきれいに管理している家の庭にも種は届き、飛び火のような状態です。

タンポポを見つけたら、できるだけ早い対処が正解。私もタンポポは好きですが、周りに迷惑をかけないよう、綿毛ができる前に根っこから摘み取るようにしています。

タンポポを始めとする草別の除草対策はこちら

芝刈りは一定方向にしない

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出典:Pixabay
芝刈りの後につく機械痕。写真のように斜めに線が入っている庭を見かけ、最初は放射線状のデザインかと思っていたのですが、実は合理的な理由がありました。芝生を常に同じ方向に刈り続けていると、毛流れのように芝生の葉の向きにクセができてしまうのです。

均一な美しい刈り痕にするためには、芝刈りのたびに向きを変えるのがポイント。例えば1回目を横方向にしたら、次は縦方向、その次は斜め方法に刈るというようにしていきます。

逆にサッカー場のように交互にくっきりと線が入るようにしたいなら、常に一定の方向に刈り続けます。端まで行ったら次のレーンはその反対向きに常に刈り続けていくと、葉の倒れる向きと光の当たり方により濃淡のある縞(しま)模様を作れるようになります。

日本で買えるおすすめの芝刈り機はこちら

芝の生長点をきちんと意識

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出典:写真AC
芝刈りでは芝の「生長点」を意識することが重要。芝の分げつが進むと、下の方の緑の葉が枯れて茶色くなりますが、ちょうどその色の境目のところに生長点はあります。この生長点を切ってしまうと、それ以降新しい芽が出ず、茶色の芝が残されることに。

目安として、どんなに草丈が伸びてしまった場合でも、一度に刈る長さは上から全体の長さの1/3程度に留めておくことが大切です。

気温が上がったら芝枯れに注意。スプリンクラーが便利

sprinkler
出典:Pixabay
芝生も植物。夏枯れを防ぐため、雨が少ないようであれば、水まきが不可欠です。一気に済ませたいのであればスプリンクラーが便利。回転式で全方向に散水できるもの、ミスト式、タイマー設定で自動で決まった時間に散水できるものと種類も豊富なので、庭の広さや用途に応じて検討しましょう。

おすすめのスプリンクラーはこちら


その他のお手入れ

施肥やエアレーション、サッチングも含めた年間のお手入れ方法については、こちらが参考になります。

手間の代わりにご褒美も大きい芝生づくり

犬と芝生
出典:写真AC
美しい芝生は一日にしてならず。何かとこまめな手入れが必要ですが、美しい庭が手に入ったときの達成感はひとしおですね。

今回調べてみて、日本でもかなりの芝愛好家がいることがわかりました。Instagramに「#芝奴隷」のハッシュタグがあり、手入れの大変さを自虐的にレポートしている内容もありますが、基本的には芝生への深い愛情」があってこそ。個人が管理のこつを発信しているブログも多く、美しい芝生を目指すうえで参考になります。

きれいな芝生は本当に気持ちいいですよね。これからの6月はアメリカの卒業シーズン。卒業生がいる家の前庭には、お祝いのヤードサインが立てられています。
選挙の時には支持者の名前や党名が書かれているヤードサインが不可欠。誕生日でも、成人(飲酒可能年齢)の21歳や節目の50歳で芝生に大きなサインを出してお祝いしている家を見かけたことがあります。
birthday sign
出典:Flicker(Photo by Nick Gray)
肥料や水やりが欠かせないことから「芝生は環境に優しくない」という考えの人も一部いますが、アメリカでは多くの人の間で、芝生は日常の風景。家や家族との思い出のシーンとは切り離せない、大切なものいえるでしょう。

次回は、「アメリカの野菜や果物について驚いたこと」を取り上げます。私が渡米まもなくはそうであったように、ちょっとしたカルチャーショックや驚きがあるかもしれません!


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「アメリカ生活アグリ日誌」

Miyuki Tateuchi プロフィール
就職情報会社、外資系人事コンサルティング会社を経て、2017年よりアグリコネクト株式会社でリサーチ業務に従事。2019年より夫の転勤に伴い、アメリカのミシガン州在住。成長期真っ只中の2児の母。農業と地域、世界の料理などへの興味を元に、情報発信していきます。

 

 

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Miyuki Tateuchi

現在、アメリカのミシガン州に居住中。海外の農業情報や普段の生活を通して感じた食農トピックを紹介します。祖父が農家だった影響もあり、四季折々の「旬」を大切にしたいと思っています。

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