本記事では、液体肥料(液肥)の種類や使用する際の注意点、家庭菜園でも使いやすいおすすめの液体肥料(液肥)などについて説明します。
液体肥料(液肥)とは?
液体肥料は、肥料生産技術の進歩とともに新たな肥料が開発され、現在ではさまざまな種類の液肥が販売されています。液体肥料の主な特徴
液体肥料の主な特徴をみていきましょう。均一に与えることができる
液体肥料は肥料成分が水に溶けているので、固形肥料と比べ均一に与えることができます。土壌への浸透性が良く速効性
土壌中へ肥料成分が浸透しやすく、植物にとっても吸収しやすいことから効果がすぐに現れる速攻性の肥料で、元肥としてよりも追肥として使います。▼速攻性など肥料の効き方についてはこちらをご覧ください。
▼元肥や追肥についてはこちらをご覧ください。
土壌から流亡しやすい
液体なので土壌から流亡しやすく、肥料の効果は長続きしません。液体肥料の種類
液体肥料の種類には、大きく分けて化学肥料を原料とした「化学液肥」と、有機肥料を原料にした「有機液肥」、化学原料と有機物の両方を原料とした「有機入り液肥」があります。化学液肥(無機液肥)
化学肥料を原料とする化学合成された液肥で、無機液肥とも呼ばれます。現在液肥と呼ばれるほとんどの種類はこの化学液肥です。有機液肥
一般的に有機物のみを原料とした液体肥料のことです。日本古来の有機液肥「下肥(しもごえ)」
窒素やリン酸、カリが含まれる人の糞(ふん)や尿を原料にした日本古来の液体肥料。作物を栽培する上で欠かすことのできない液肥でした。
有機入り液肥
化学肥料と有機物の両方を原料として含み、窒素成分の0.2%以上が有機由来であるものが有機入り液肥と表記されています。液体肥料の使用方法
「土壌に散布、灌注する液体肥料」と「植物体に散布する葉面散布剤」があります。液体肥料の種類によって、土壌に散布、または灌注なのか、葉面散布なのかが異なるので十分に確認した上で使用してください。土壌に散布・灌注
液体肥料を土壌に散布、または灌注することで肥料成分を根から吸収させます。植物体に散布(葉面散布)
植物体に直接散布することで植物体の茎や葉から肥料成分を吸収させます。▼葉面散布剤についてはこちらをご覧下さい。
液体肥料と間違いやすい「活力剤」と「植物成長調整剤」とは?
液体肥料と間違いやすいものに「活力剤」と「植物成長調整剤」があります。液体肥料と何が違うのでしょうか?活力剤
肥料と呼ばれるものには、肥料取締法という法律で肥料成分の含有量の基準が定められています。一方で活力剤は、肥料成分は含まれていても基準値に満たないため肥料ではありません。人間に例えるならば、肥料は食事、活力剤はサプリのようなもの。活力剤だけでは作物を育てることはできません。
▼肥料取締法の肥料の種類についてはこちらをご覧ください。
植物成長調整剤
植物成長調節剤は、本来植物体内で生成される「植物ホルモン」を人工的に与えることで生育を促進・抑制し、作物の品質向上や収量増加などを目的として使用します。農薬の一種なので肥料ではありません。▼植物成長調整剤についてはこちらをご覧ください。
液体肥料(液肥)を使用する際に注意すること
続いては液体肥料を使用する際に注意することについて紹介します。液体肥料を使用する前の注意点
液体肥料を使用する前に注意する点とはどんなことでしょうか?正確な希釈濃度
希釈濃度より薄いと効果が期待できなかったり、反対に濃度が濃いことで肥料やけを起こして植物が枯れてしまったりする問題が起きます。希釈濃度や使用する液体肥料の量の間違いを防ぐ「希釈早見表」や「希釈倍率の計算アプリ」、「希釈キット」などがあるので活用してみましょう。【希釈早見表】
例えば、「希釈倍率500倍」の散布液を「5L」作る場合、希釈早見表を参照すると使用する液体肥料は「10ml」です。
使用する液体肥料(ml) | 散布量(L) | ||||
1 | 2 | 5 | 10 | ||
希釈倍率(倍) | 50 | 20 | 40 | 100 | 200 |
100 | 10 | 20 | 50 | 100 | |
250 | 4 | 8 | 20 | 40 | |
500 | 2 | 4 | 10 | 20 | |
1000 | 1 | 2 | 5 | 10 | |
2000 | 0.5 | 1 | 2.5 | 5 |
希釈倍率と散布量から使用する液体の量を計算してくれるアプリです。
※iPhone用もAndroid用もアプリは無料ですが、ダウンロードや利用時のパケット通信料がかかります。
・iOS版はこちら
・Andoroid版はこちら
【液肥希釈キット】
ほかのものとの混合は要注意!
液体肥料の中には、農薬や石灰硫黄合剤、アルカリ資材などと混合すると有毒ガスが発生する恐れがあり危険なものがあります。液体肥料のパッケージに注意書きが記載されている場合もありますが、農薬やほかの肥料との混合可否については農薬メーカーや肥料メーカーにお問い合わせください。▼農薬を安全に使用することならこちらをご覧ください。
液体肥料使用時の注意点
元肥を混合した用土の場合は、植え付け・種まきから3週間後、混合されていない用土の場合は1週間経過後を目安に液体肥料の使用を開始しましょう。薄めた希釈液は残さず使い切る
液体肥料は水で希釈すると肥料成分が変化しやすくなるため、希釈液はその日のうちに使用するようにしましょう。追肥のタイミング
液体肥料だけで追肥を行う場合は1週間ごとを目安に与えます。※液体肥料の種類によって異なるので、記載されている使用方法をご確認ください。
高温時の多量使用
有機成分を含む液体肥料を高温時に多量に与えると、有機成分が急激な分解によって有機酸や炭酸ガスを発生し作物の生育を阻害する可能性があるため注意が必要です。液体肥料を使用した後の注意点
液体肥料を使用した後に注意する点をみてみましょう。使用後の器具は十分に水で洗い流す
肥料成分によっては乾くとノズルが詰まったりするものがあるため、希釈や散布に使用した器具類は使用後すぐに水で洗い流しましょう。使用後の希釈液
希釈液をペットボトルに入れてそのまま置いておくと、子どもが飲料水と間違えて飲んでしまう可能性があるので、必ず使い切るか廃棄しましょう。誤って大量に飲んだ場合は、気持ちが悪い、吐くなどの症状が出ることがあります。応急処置や受診の必要性などがわからない場合は、中毒110番に相談してください。
応急処置などの緊急情報は「公益財団法人 日本中毒情報センター 」へ
・大阪中毒110番:072-727-2499(24時間)
・つくば中毒110番:029-852-9999(9~21時対応)
化学物質(家庭用品、医薬品、農薬などを含む)及び動植物の毒によって起こる急性の中毒について、応急処置などの緊急情報を提供。
※これらの情報提供は、一般市民向けに無料で行っていますが通話料は相談者負担です。