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オランダの施設園芸はサステナブル?【都市部の友人に聞いてみた】おしゃれじゃないサステナブル日記No.26


【連載】農業・食コミュニケーターとして活動する 紀平真理子さんの「農業と環境」をテーマにしたコラム「おしゃれじゃないサステナブル日記」。第26回は「オランダの施設園芸はサステナブル?【都市部の友人に聞いてみた】」農業従事者ではないオランダ人は自国の農業にどんなイメージを持っているのでしょうか。筆者ゆかりの人たちの声とは?

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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オランダ視察ツアー

写真提供:maru communicate 紀平真理子(懐かしい!オランダ視察ツアー)
前回の「いろいろな国の言葉で「環境」を考えよう(No.25)」では、「環境」という言葉を多言語で考えてみました。
今月は、いただいたコメントを拾う月間です。「【オランダ回顧録】憧れの市民農園でのボランティア(No.21)」に対して、「オランダ農業といえば、サステナブルというイメージだったが、農業現場以外の人はそういう認識じゃないのが興味深い」という感想をいただきました。オランダ人は、オランダの施設園芸をサステナブルだと思っているのか?というテーマで考えてみたいと思います。

オランダ人たちは施設園芸をどう思っているのか聞いてみた

オランダ施設園芸
写真提供:maru communicate 紀平真理子
市民農園の運営者やボランティアの方々は、いわゆる自他共に認める環境や食への意識がとても高い方々だったので、オランダの都市部在住の20〜40代の友人たち(オランダ生まれ、オランダ語が第一言語、農業関係者ではない)に、フランクに「オランダの施設園芸ってサステナブルだと思う?」と聞いてみました。

食や環境に限らず、アンテナを張っている友人たちは、農業に関係ない生活をしていたとしても普段からメディアで農業の情報を目にしているようです。ちなみに何人かの興味関心に火をつけてしまって、今でも議論が続いています。

施設園芸はサステナブルだと考える派の理由

施設園芸施工
写真提供:maru communicate 紀平真理子
まずは、「施設園芸はサステナブルだと思う派」の意見から紹介します。業界がプロモーションしているからという理由や、映画に出てくるからという理由を述べた友人たちは、意外にも受け取った情報を妄信的ではないけど、素直に受け取っている感じがして…興味深い!

オランダの施設園芸は、比較的サステナブルだと思うよ。少なくとも業界はそのようにプロモーションしている。私がサステナブルだと思う理由は、熱の再利用や最新のテクノロジーの使用かな。

「A life on our planet」(Netflix)という映画の最後にオランダの施設園芸はサステナブルだと出てくるから、サステナブル!

さらに、ローカル(国内生産)であれば何でもサステナブル、というどストレートな意見も。

輸入するより、ローカルで作ったものであればいかなる場合であってもサステナブル。

施設園芸サステナブル説に懐疑派の理由

トリジェネレーション
写真提供:maru communicate 紀平真理子
否定はせずとも懐疑的な友人もいました。その多くが、施設内で使用される電照や加温に必要なエネルギーの側面でサステナブルといえるのか?ということでした。特に電照に関しては、施設園芸の集積地帯を夜に通りかかると、光が煌々(こうこう)と輝いているのを目にするので、「施設園芸・サステナブル」のワードを耳にすると、このイメージが浮かぶことが大きい気もします。(※この点については、オランダ施設園芸業界はLCA/ライフサイクルアセスメントなど全体のエネルギー収支を評価して、サステナブルであろうと努めています。また、天然ガスエンジンにより、熱、電気、二酸化炭素を利用するトリジェネレーションシステムなども)

tuinbouw sector(園芸農業)は“greenerソリューション”と“伝統的なソリューション”にわかれていると思う。昼夜問わず温室内の電照を維持するためには、化石燃料が必要だと思う。多くの銀行や企業は、風力発電やメガソーラーなどのグリーンエネルギーに投資をしたとPRしているけどね。

加温のためのガスや、植物生育に必要な電照のための電力とか多くのエネルギーが必要だと思うんだよね。エネルギーはサステナブルに生成されるわけじゃない。農家は大気中にCO2を排出する肥料も使ってるし、温室効果と温暖化に影響を与えていると思う。

テクノロジーは進んでいると思うけれど、エネルギーが必要だと思う。おじさんがかつてイチゴ、ネギ、キャベツを栽培していたし、自分も田舎で育ったんだけど、“ファーマー”は未だに否定的な含蓄をもって語られている。独身農家の結婚相手をマッチングするテレビ番組があって、ロマンティックな田舎生活が描かれてるけど、現実はハイテクだし機械化も進んでいる。農業を目にしない都市にずっといるとわかんないかもね。

ちなみに、独身農家の結婚相手をマッチングするリアリティショー「Boer zoekt vrouw」は、確かにロマンティックな生活が描かれていますが、ハイテク資材や機械類を使うシーンが出てくるシリーズもあって、見始めると止まりません。

わからないという人がいて安心

マイクロハーブ
写真提供:maru communicate 紀平真理子
ほとんどの人から、わりと速効かつ長文でメッセージが返ってきたので、「いったいオランダ人って何なんだ」と思ってドギマギしていましたが、数人から「わからない」とか返信が届いたり、返信がない人がいたりして安心しました。

そもそも、私の友人たちのように他の文化に寛容な人は、似たようなタイプが多いので、もしかしたら意見も偏っている可能性もあるのではと常日頃から考えています。物事を広く考えている人も多いし、金銭的にも食の選択ができる余裕がある人がほとんど。

書いておきながら何ですが、あくまでも事例として楽しんでください。「その他の国では…」という話についても、私は事例として楽しみたいと思っています。

「いい質問」だと褒められた

オランダ施設園芸
写真提供:maru communicate 紀平真理子(拡張中のスプラウトで有名なkoppert crees社のグラスハウス(6m)の屋根に天窓ネットを見学するために登りました。高所恐怖症です)
友人からの回答の前に、「いい質問!」だとか「興味深い質問!」と書いてくれる人が多くてうれしい反面、「この枕詞がつかないときは、いい質問ではないのか…」と質問する恐怖心が生まれました。

最後に…日本の農業に関係ない都市部在住の友人たちに同様のメッセージを送ったら、どのようなリアクションが返ってくるのか…いずれ試してみたいです。次回も同じテーマで続けさせてください。

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おしゃれじゃないサステナブル日記

紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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