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【連載第11回】人口逆転のチャンス!?農村に暮らす人を増やそう|農業なくして持続可能な社会なし

コロナ禍だから考える田舎暮らしや農村への移住、温泉からのリモートワークなど、今回も持続可能な社会へつながる提案や話が盛りだくさん!大津愛梨さんの日々の農作業や環境、家族の話を中心に、世界で注目を浴びる“SDGs”も絡めた必見の連載です。


山の上に立つ青年

提供:O2Farm
九州のほぼど真ん中、熊本県南阿蘇村という場所で米農家をしているO2Farm(オーツーファーム)のEriこと大津えりと申します。「農業者こそ“SDGs(持続可能な開発目標)”を達成するための立役者!」という視点で連載をしています。

新型コロナウイルスの感染拡大が再び勢いを増し、不安が広がっている今日このごろ。新型コロナウイルスはいつか終息するはずですが、これを機に「密じゃない暮らし」を検討されている方も増えているはず。今回は、「持続可能な社会」という視点から見た、農村の暮らしについて書いてみます。

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人口を再逆転させるチャンスは「今」かもしれない

タカナ折りの風景
提供:O2Farm

昔は農村の方が人口が多かった

もともとは、農村の人口の方が多かったんです。そりゃそうですよね、田畑がある農村の方が食べ物があるわけですから。それが逆転してる、というところが、そもそも不自然な気がします。私は専門家ではないので感覚的でしかないですが。
写真は、移住したばかりのころのタカナ収穫の風景です。普段は人の少ない農村ですが、春先のタカナシーズンや田植えシーズンは祖父母だけでなく親せきが大勢集まって、みんなで収穫をしたものでした。

今では田畑にたくさんの人が集まる光景もなかなか見られなくなってきましたが、人口を再逆転させるチャンスが「今」かもしれません。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、リモートワークの体制づくりが10年ぐらい早まった気がするからです。

田んぼからオンラインで、会議や講演に参加が可能に!

18年前に阿蘇に移住したときには、すでにインターネットで買い物ができるようになっていて、これなら何も不便はないなと思っていました。でも、講演や会議に呼ばれると、スケジュールの調整がつかなければ欠席。出席できるときは、2時間程度のイベントや会議のために、丸一日もしくは一泊で家をあけなければなりませんでした。
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したことで、イベントや会議がことごとく中止。ステイホームならぬステイファームの状態が続いていましたが、そうこうしているうちに社会が一気に変わりました。

オンライン画面
提供:O2Farm
イベントも会議もオンラインで実施されるようになり、会議や講演の直前まで農作業や家事をしていられます。もちろん出張もなし。先日は、初めて外務省のオンラインシンポジウムに呼んでいただき、晴れていたので田んぼから参加。農村から参加することで、むしろインパクトが強めだった気がしますし、こうなると本当に農村ライフの可能性が広がる気もします!
ちなみに、シンポジウム「日本のオイシイを守る」の内容はYouTubeで視聴できますので、良かったら見てください。

動物だって「密」は危険

阿蘇の山と牛
提供:O2Farm
世界でみると、現時点で人口の半分以上が都市部に住んでいて、その割合は増え続けています。仕事が都市部にあるから人が集まる。人が集まるからもっと仕事ができる。そんなところでしょうか。
もちろん、都会でしかできない仕事・イベント・教育・サービスはあります。でも人口密度が高過ぎると、新型コロナウイルスだけでなく、いろんなウイルスが蔓延しやすくなるのは当然のこと。ニワトリだって、ブタだって、ウシだって、密に飼い過ぎると病気になりますもの。南阿蘇では密どころかウシの数が少なくて、草原が逆にちょっと荒れ始めているのですが…。

都会を離れて農村へ

わらの上をジャンプする親子
提供:O2Farm
都会を否定するつもりはないんです。もともと都会っ子ですから。でも、密度が高くなり過ぎているなら、この際ちょっと離れてみるのも悪くないのではないでしょうか。
この1年ぐらい、できるだけ多くの人が農村暮らしを体験して、新型コロナウイルスが終息した後、再び都会に戻ったとしても、1年ぐらい「疎開」して新鮮な空気と農産物に触れたら、何かが大きく変わる気がするんです。デトックスというか、人間味を取り戻すというか。

農村に暮らす人を増やす

お米を持つ少女
提供:O2Farm
持続可能な社会のためには、農業が必要です。食糧を確保できない社会は、そもそも続きませんから。でも、「だから農業をやりたいんだ」と本気で思う人の数は、それほど多くありません。
だとしたら、農業を少しでも身近に感じる暮らしをする人が増えることが、まずはとっても重要なんだと思います。千里の道も一歩から。

お互いに顔の見える関係を築いていって、

生きていくためには食べ物が必要

その食べ物を作る農業は絶対に必要

農業が続いていくためには、自分たちが国産の農産物を買うことが必要

という、いわれてみれば当たり前のことに気付いてくださる人が、増えてくれることを祈るばかりです。

自分たちで食べるものは自分たちで作る、という意識

「農業じゃ食っていけない」っていうけれど

山仕事をするおじいちゃん
提供:O2Farm
私たちが就農することを決めた時、後継者がいないことを一番憂いていたはずの義理の祖父が反対しました。「農業じゃ食っていけない」と。そんな祖父に私たちは、「食べ物を作っているのだから、食っていけるじゃん」と、若気の至りで噛みついたものです(笑)。すでに他界していますが、祖父と出会えて本当に幸せでした。

食べ物を作りながらのリモートワーク

世界の人口は、爆発的に増えていくと予測されています。国連は「大規模な農業を増やすだけでは、世界の胃袋を満たすことはできない」という見解から、自給的農業や小規模農業を守ろうとしています。実際、自分たちで食べるものは自分たちで作る人が増えなければ、戦争にさえ繋がりかねない事態になっていくでしょう。
リモートワークがしやすくなった今こそ、農村で食べ物を作りながら、密のない暮らしをはじめるグッドタイミング!

半分農業をして半分はほかの仕事をする「半農半X」という提案を知ろう!

「地獄」から再生した場所でリモートワークはいかが?

地獄温泉
提供:O2Farm
そうはいっても、住まいが見つからない状況にあるのが南阿蘇村。空港からも近く、ため息が出るほど美しい景観なので、移住希望者が急増しているのです。古民家や空き家に住むのはそれなりに覚悟がいりますが、長期滞在が可能なキッチン付きの部屋やただ寝るだけのシンプルな部屋が、南阿蘇村の「地獄温泉」にはあります。

熊本地震で、200年の歴史がある旅館が土砂に埋まってしまう、という地獄のような境地を味わってから4年。ようやくリニューアルオープンした温泉施設です。まずは1カ月程度でもお試し移住をして、リモートワークをしながら地域の農業を手伝う、というスタイルの提案ができないかと準備中。

仕事をしながら温泉にも入れる生活

地獄は地獄でも、何度でも何日でもいたくなる夢のような地獄。硫黄のにおいがプンプンする湯治場で、フリーWi-Fiに繋ぎながら仕事と体のメンテナンスを両立させるなんて、コロナ禍ではあり得ないほど最高じゃないですか?
これを足掛かりに、食べるものを作りながら仕事をする人が1人でも増えてくれたら、持続可能な社会にとっても、人口減少が激しい農村にとっても、これほどうれしいことはありません。

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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」

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大津 愛梨

慶応大学環境情報学部卒業後、夫と共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里の南阿蘇で農業後継者として就農、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培している。女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長、里山エナジー(株)の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。農業、農村の価値や魅力について発信を続ける4児の母。

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