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環境によい!?昆虫食が普通になるには|おしゃれじゃないサステナブル日記No.8


【連載】農業・食コミュニケーターとして活動する 紀平真理子さんの「農業と環境」をテーマにしたコラム「おしゃれじゃないサステナブル日記」。第8回は「環境によい?!昆虫食が普通になるには」 健康、経済、環境、温暖化のための食を考える前提として、昆虫食は救世主となり得るのでしょうか!?

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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昆虫食

写真提供:maru communicate 紀平真理子
先日、「雑草・病害虫管理の理想は高く!現実は忘れず!|おしゃれじゃないサステナブル日記No.4」を掲載後に連絡を受け、IPM、天敵昆虫、マルハナバチのお話(ネタ提供)をしていただきました。次回以降、天敵昆虫について語ろうと思いますが、虫のことをぐるぐると考えていたら、まずは「虫を食べること(昆虫食)」についてあれこれ言いたくなってしまいました。


虫を食べることは環境にいい?

昆虫食
写真提供:maru communicate 紀平真理子(ミラノ万博オランダ館)
「虫を食べることが、環境にいい」という情報が強烈に私に向かって走ってきたのは、2015年に開催されたミラノ万博のオランダ館とベルギー館での展示でした。両国とも、「2050年に人口が増え、動物性たんぱく質の必要量が増加する」→「健康、経済、環境、温暖化のための食を考える」を前提として、昆虫食を推奨していました。この前提やフレームには議論の余地がありますが、今回はPOPに昆虫食の話をしようと決めたので無言を貫きます。

ちなみに、そのときオランダ館で紹介されていた「養鶏のホテル化」「施設園芸のロボティクス」「都市近郊の水上農場」「塩耐性ジャガイモ品種」「食べていくための品種開発の強化」「海藻農場」…って、ほとんど実現できている!脱帽です。

「火星でのトマト栽培」や「1haあたりに必要な種イモの播種量を2,500kgから25gへ」は今後に期待です。

なぜ昆虫食が注目された?

昆虫食
写真提供:maru communicate 紀平真理子(ミラノ万博ベルギー館)
昆虫の24%はアメリカ大陸、同じく24%はアジア、38%はアフリカに生息し、ヨーロッパに生息する昆虫はわずか2%だそうですが、わざわざヨーロッパの人が虫を食べる理由は何なのでしょうか。オランダひいてはヨーロッパではどのようなことが起こっているのか調べました。

2013年にオランダのワーゲニンゲン大学の研究グループが中心になって作成した「Edible insects/Future prospects for food and feed security(食用昆虫/食用および飼料の安全保障のための将来の見通し)」という報告書をFAO(国連食糧農業機関)が発表し、昆虫食を推奨したことが注目を集める大きなきっかけとなったようです。推奨理由は、世界中で伝統的に1,900種以上の昆虫が食べられていること、食べる量に対して体重が増える率が高いこと、高タンパク質であることが挙げられています。

オランダにおいては、21の昆虫育種家で組織されているDe Venikという飼料と食品の両方の消費のために、栽培者を集めて昆虫を共同で販売する貿易協会が発足され、コオロギやミールワーム(観賞魚の餌や釣りに使われている虫の幼虫)を中心に、養殖・販売されています。ん?育種?養殖?と摩訶不思議テーゼ。

さらに、新規食品に関する規制(EUにおける健康食品などの安全評価に関する制度)において、2018年に昆虫が「食品」に追加されたことを受け、食品として流通できるようになりました。ビジネスの観点からも昆虫食は十分に需要が見込めるのでしょう。

そのころ、オランダでは普通のスーパーマーケットでも、ミールワームが販売されていました。チェーン店のカフェにも、コオロギ、ミールワーム、バッタを挟んだ強烈なビジュアルのベーグルが登場し、友人たちがSNSにアップしていましたよ。今は昔ですが。

実は虫を食べていた幼少期

昆虫食
出典:写真AC
実は、私は昆虫食には抵抗がありません。というのも、岐阜県出身の祖父母の家にいくと「蜂の子」や「イナゴ」が出てきていたので。幼少期は「蜂の子はやっぱりウジがムニムニしていておいしいよね」とか、「イナゴはエビっぽい」などといって食べていました。今でも、愛知県新城市の方から自家製の蜂の子をいただくことがあります。日本では場所や世代によっては、昆虫を食べることはそんなに珍しいことではないのかもしれません。

昆虫食の普通化

とはいえ、食べたことがない人にとっては相当抵抗感があるのではないかと想像します。分子調理学の専門家である石川伸一先生の『「食べること」の進化史』(光文社新書)の中で、「昆虫食の普通化」が大切だと述べられています。「食材を生活に浸透させるためには、人の感性に訴えながら、その国の食文化にしっかり根ざした料理にその食材を使っていくというのが、効果的な方法のひとつでしょう」との記載があります。

「食べること」の進化史

・著者:石川伸一
・出版社:光文社
・出版年:2019年


日本の食文化と佃煮だけではない新たな昆虫食との融合(レシピ)を目撃できる現在に生きていることを幸運に感じます。そして、センセーショナルではない、選択肢の一つとして昆虫が店頭に並ぶ未来を想い、少しだけニヤニヤしています。

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おしゃれじゃないサステナブル日記

紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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