【連載第9回】つながり広がり、続いていく未来|農業なくして持続可能な社会なし

稲刈り、農林水産省・環境省・消費者庁が行った「サステナウィーク」、農家の嫁ラッパー!?など、今回も持続可能な社会へつながる話が盛りだくさん!
大津愛梨さんの日々の農作業や環境、家族の話を中心に、世界で注目を浴びる“SDGs”も絡めた連載。


軽トラックの上からコンバインを見る子どもたち

提供:O2Farm
九州のほぼど真ん中、熊本県南阿蘇村という場所で米農家をしているO2Farm(オーツーファーム)のEriこと大津えりと申します。「農業者こそ“SDGs(持続可能な開発目標)”を達成するための立役者!」という視点で連載をしています。

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【毎月更新!】農業なくして持続可能な社会なし

いきなり始まった今年の稲刈り

稲刈りと青空
提供:O2Farm
過去最大規模ともいわれていた、2020年9月の台風10号。九州に上陸しなかったのは、まさに不幸中の幸いでした。もちろん、それでも猛威をふるったことには変わりなく、被害を受けられた皆さまには心からお見舞い申し上げます。

ベッタリと倒れた稲

倒れた稲穂
提供:O2Farm
風こそすさまじかったものの、南阿蘇エリアでは大きな被害はなかったようですが、我が家では収穫間近だった稲が見事に倒れてしまいました。
特にコシヒカリは茎が細く、たわわに実った稲穂は倒れやすい品種。しっかり実っていれば、風や台風に関係なくある程度倒れるのは避けられないのですが、それはまぁ見事にベッタリと倒れてしまいました。
倒れた稲を放っておくと、腐ったり芽が出てしまったりするので、台風が通過した翌々日から予定を早めて今年の稲刈りが始まりました!

地球温暖化は進む

体温よりも高い気温、経験したことのない大雨、大型の台風…。その結果として起こる水害、土砂崩れ、海外で多発している山火事など、地球温暖化が着実に進んでいることを感じる出来事が多いこのごろ。一体どうなってしまうのだろうという不安もありますが、嘆いていてもどうにもなりません。
自然を相手にする仕事の我々農家は、変わっていく気候や激化する自然現象に適応することが唯一の生き残る道。ご先祖様だって、その時々の気候や自然災害に一喜一憂しながらも適応してきたわけですから、そう思うと今の状況も何ら変わりないのかもしれません。

お互いに顔が見える生産者と消費者の関係

収穫された米を触る女性農家
提供:O2Farm

今年のお米の出来栄えは…?

幸いなことに今年は夏に雨が少なかったので、稲刈りの予定が早まってもお米は十分熟していました。高温障害も見られず、「クズ米」と呼ばれる粒の小さい米や虫に食われた黒い米の割合も、それほど多くありませんでした。

この記事を書いている時点では、すべての稲刈りが終っていないので、収量についてはまだ何ともいえないのですが、品質についてはそれなりに合格点を出せそうです。いやぁ~、うれしい!本当にうれしい!!

SNSでつながる農家と消費者

さて、この喜びと新米を、誰に届けたいか?それはもちろん、O2Farmのお米を買って食べて頂いているお客様です。
今年から始めたO2FarmのLINE公式アカウントで、無事に収穫ができている様子をまずは報告。すると、「嬉しい!」「新米楽しみ♪」「良かった」と喜びの声が、続々とお客様から届くではないですか。
コンバインに乗って稲刈りを続ける夫の姿を目の前で見ながら、これってすごい…と感動で泣きそうになっている涙腺の弱い私。

例えば、新聞やニュースで「今年の作況指数(主に穀類や豆類について、その年の収量を表す指数)」が報道されても、消費者がそれを見て「ヤッター!うれしい」と思うでしょうか?少なくとも、都会で育った私にとっては、そのニュースは「ふ~ん」という程度のものでした。

それが今は、収穫の喜びを我がことのように喜んで下さるお客様の声が、SNSで私たちにリアルタイムで届くのです。
台風10号が近づいているときも、徐々に強まる風の音を聞きながら、多くの方から「大丈夫ですか?」「気を付けてください」という励ましのメッセージを頂き、心温まる思いをしていました。
インターネットやSNSで消費者と直にメッセージのやり取りができ、つながることができる、農家にとって良い時代が来たんじゃないかと思っています。

農林水産省・環境省・消費者庁が連携して取り組んだ「サステナウィーク」

持続可能な生産消費に向けた取組を進める企業や団体の合同プロジェクト あふの環2030

サスティナウィークとは?

第75回国連総会が開催された2020年9月17日から27日まで、農林水産省が「サステナウィーク」というキャンペーンを実施しました。サブタイトルは、「食べること、使うこと、知ることで、サステナブルを始めよう」です。

生命を支える「食」と、安心して暮らせる「環境」を未来に継承していくためには、気候変動や生物多様性の危機など、自然環境を取り巻くさまざまな問題に目を向けよう、というコンセプトのキャンペーン運動。ハッシュタグをつけた投稿の発信や、サステナブルな買い物の推進がなされました。

「サステイナブルを目指す生き方」をしている人たちへの取材動画

私が「新農林水産省生物多様性戦略検討会」という長い名前の会の委員を仰せつかっている関係で、この期間中にO2Farmを紹介する動画を、環境省と農林水産省のホームページに掲載して頂きました。
O2farmの動画は、「サステイナブルを目指す生き方」をしている人たちを取材して、それを3カ国語(日本語・英語・中国語)で聞くことができるもの。関西学院大学の学生さんが作ってくれました。学生さんにとっても、自分が作った作品を農林水産省のホームページに載せてもらえる、いい機会になったんじゃないかと思います。

一人ひとりの生き方や暮らし方から

持続可能な社会を作る、というと「自分にできることなんてないかも」と思うかもしれませんが、そんなことはありません!むしろそういった、一人ひとりの生き方や暮らし方が持続可能な社会を作る、というのが私の考えです。
私たちができること&していることは、本当に小さく未完成な取り組みですが、身の回りの自然や人に対して慈しむ心を持ち、それを子どもたちや、さらにその子どもたちへと残していきたい。そんな想いを持って一次産業に従事している姿が、一人でも多くの人に伝わったら本望です。
連載も終盤。ちょっと真面目に「持続可能な社会と農業」について書いてみました。いつもお付き合い頂き、ありがとうございます!

Tokyo Drift Free Style 農業バージョン

神頼みだけじゃどうにもならへん 止まること知らずの温暖化
提供:O2Farm

農家の嫁の情報発信

都会から来た私が情報発信を始めたのは、農家の嫁として、先代から始めていたお米の産直を引き継いだ就農直後。
「こんな暮らしも、こんな現場も知らなかった!」という純粋な驚きの気持ちから、少しでも多くの消費者の皆さんにそういったことを伝えたくて、ブログや「よかとこ通信」なる手紙を書き始めました。
以来18年間、農業や農村の魅力を伝える、という使命を勝手に遂行し続けています。

都会育ちの帰国子女が作った「農家の嫁」ラップ動画!

I wonder if you know how i live in 田舎
提供:O2Farm
そんな私の姿をテレビで見た、都会育ちの帰国子女が4年前に南阿蘇に移住してきました。そして去年めでたく、“熊本の星”ともいわれる若手農家と結ばれて彼女自身も農家の嫁に。顔の見える消費者との関係づくりのためには情報発信が大事、ということを理解している彼女は、18年前の私と同じように、日々の喜びや驚きをInstagramやFacebookで小まめに投稿しています。

「おお、いいね~♪」と嬉しい気持ちで、日々投稿を見ていたところ、ある日突然「農家の嫁の悪ふざけです」という書き出しでアップされた、YouTube動画
うわぁ、そう来たか!と思わず爆笑。本当に頼もしい限りです。視聴&気に入ったら、ぜひ「いいね」をお願いします!

週間連載のコラムも掲載中!

【週間連載】家族経営農家の日常を配信「ハッピーファーマーズ日記」【毎月更新!】月間連載アーカイブ「農業なくして持続可能な社会なし」

大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」

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大津 愛梨
大津 愛梨

慶応大学環境情報学部卒業後、夫と共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里の南阿蘇で農業後継者として就農、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培している。女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長、里山エナジー(株)の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。農業、農村の価値や魅力について発信を続ける4児の母。

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