お米の収穫はいわば春から始まった米栽培の集大成。私の経験(主にはえぬき)を元に初心者の方にもわかりやすく、お米の収穫適期や稲刈りの手順について、また乾燥調整やバインダーについても説明します。
収穫前の落水
コンバインなど農業機械での収穫前に、準備として「落水」という作業を行います。落水の時期
出穂から25日程度経ったら落水を開始します。※出穂とは茎から穂が出ることです。
落水のタイミングに注意!
早過ぎる落水は「未熟米」や「くず米」、「胴割米」が増えてしまうなど、米の品質低下につながる恐れがあるので注意しましょう。
落水に欠かせない溝切り、中干し
落水せずに田んぼがぬかるんでいると、コンバインに大きな負荷がかかり、ひどい場合は田んぼの中で動けなくなることもあります。土を適度に硬くする溝切り、中干しの作業をしっかり行いましょう。▼溝切りや中干しのことならこちらをご覧ください。
収穫時期の目安
収量は最大限に、品質も最高の米を収穫するためには、出穂したお米が十分登熟した適期に稲を刈り取ることが重要です。籾の色
収穫適期の目安は籾全体の85~90%が黄色になったころです。籾の色以外の収穫適期の判断材料
品種 | 積算温度(℃) |
早生 | 950~1,000 |
中生 | 1,000~1,100 |
収穫適期は出穂後の積算温度でも推測できます。
※積算温度とは、毎日の平均気温を合計した温度。
早刈りや刈り遅れに注意!
適期に刈り取りしないと収量や品質が低下する恐れがあります。早刈りは青米、未熟米が増えて収量が低下する可能性があり、刈り遅れは着色米や胴割米が増えて品質が低下することが考えられます。せっかく実ったお米も刈り取りの良し悪しによって収量などに影響が出てしまうので、時期を見極めて早刈りや刈り遅れにならないようにしましょう。コンバインの準備
籾全体の色合いや出穂後の積算温度を目安に収穫適期を判断したら、コンバインを準備しましょう。コンバインの試運転
コンバインを出したら試運転してみます。コンバインに限らず、農業機械全般にいえることですが、使用期間よりも保管期間のほうが長いため、まずは試運転して、おかしな音がしないか、可動部に問題はないかを確認します。事故なく稲刈りを終えるためにも、使用前の試運転や作業前の注油は必ず行いましょう。▼トラクターなど農業機械での事故のことならこちらをご覧ください。
コンバインの調整
試運転が終わったら、コンバインの調整に取り掛かります。刈り高さ
「刈り高さ」を調整すると、刈り取ったあとの稲株の高さが変わります。一緒に土を掘り上げることのないように、稲の草丈に合わせて調節しましょう。こぎ深さ
「こぎ深さ」とは、脱穀部にどのくらいの深さで稲が入るかということです。深過ぎると籾と一緒になるゴミが多くなってしまいますし、浅いと籾を多くロスしてしまいます。稲刈りに必要な人数
稲刈り(2haあたり)を行う人数の目安は、コンバインのオペレーターと軽トラックなどでの籾の運搬役の計2人です。私が勤めている農家さんでも2人で稲刈り作業を行っています。もちろん1人で刈り取り作業をしながら籾の運搬もできますが、やはり効率が悪くなるので2人は必要だと思います。▼コンバインなど米作りに欠かせない農業機械のことならこちらをご覧ください。
コンバインを使って収穫しよう!
いよいよコンバインを使って稲刈りを始めましょう!刈り取りの時間帯
刈り取り作業に適した時間は朝露が消えるころ。だいたい10時以降が目安です。稲の状態を観察
稲の茎葉が濡れていると、コンバインの各部位に詰まりやすくなります。稲が湿っていない状態で収穫することで、コンバインの作業性を向上させるだけでなく、その後の乾燥機の電気代や灯油代を抑えることにつながります。コンバイン作業の注意事項
刈り取り時に限らず、コンバインが稼働しているときは絶対に近付かないようにします。コンバインの運転席からは周囲が見えづらく、エンジン音や作業音で周囲の音も聞き取りづらくなります。人が近付いてもオペレーターは気付きにくいので、稼働中は絶対に近寄らないようにしましょう。コンバインを使った稲刈りの手順
コンバインでの事故を未然に防ぎ、安全に刈り取り作業を進めましょう。1. 角の部分
田んぼの角の部分は、コンバインの爪が畔に当たってしまうので事前に手刈りしておきましょう。注意!
手刈りした稲は、コンバインの脱穀部に直接手で入れるので、巻き込まれないように十分注意しながら行いましょう。
2. 外側
畦畔から入って外側から反時計回りに刈り始めます。3. 中側
引き続き反時計回りで田んぼの中心に向かって刈り続けます。コンバインのタンクが一杯になったら、軽トラックなどに籾を排出し、乾燥機まで運搬する作業を繰り返します。
注意!
刈り取りの途中でわらが詰まったら、必ずエンジンを停止!エンジンをかけたままでわらを取り除くと、事故につながる恐れがあるので注意が必要です。
4. 残っている外側の一部を刈る
刈り取りができなかった残りの部分は、最後に時計回りで刈り取ります。コンバインの点検
収穫を済ませたコンバインは、可動部に問題がなかったかを確認します。また、コンバインに米粒が残っていると、ネズミの餌になってしまいます。米粒は、藁(わら)などと一緒にできる限りコンバインから取り除いてから格納しましょう。
コンバイン収穫後の乾燥
コンバインで収穫した籾は水分を多く含んでいるため、乾燥機を使って適度な水分状態にします。水分値の目安
刈り取った籾を乾燥させるときの水分値の目安は15%です。参考:農林水産省「玄米の検査規格」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/syoryu/kensa/kome/k_kikaku/)(2020年4月28日に利用)
乾燥
私が勤めている農家さんでは、シンプルに目標の水分値少し前まで乾燥させます。そのほかの方法には、ある程度まで乾燥した時点で一時中断して、一次貯留後に再び乾燥させることもあります。乾燥させ過ぎると?
必要以上に乾燥させると過乾燥と呼ばれる状態になります。過乾燥米は食味が悪くなるだけでなく、乾燥機にかかる電気代や灯油代が余分に増えてしまいます。バインダーを使った収穫と自然乾燥
コンバインよりもコストを抑えて収穫作業を行いたい方はバインダーを使ってみましょう。バインダーは少量の収穫作業におすすめ!
私の勤めている農家さんではバインダーは使用していませんが、収穫面積があまり大きくなく、手軽に収穫作業を行いたい方にはバインダーがおすすめです。バインダーはコンバインよりも低価格で、籾を自然乾燥させるので乾燥機にかかるコストも不要です。また、軽トラックで運べるほどの大きさなので、コンバインよりも省スペースで保管できます。
バインダーでの稲刈りの手順
歩行型の1~3条刈りのバインダーは、稲を刈り取り、紐で株元を結んでくれます。1. 稲を刈る
反時計回りで田んぼの中心に向かってバインダーで刈り取っていきます。2. ハサ掛け
バインダーで結束された稲は、籾を天日で乾燥させる「ハサ掛け」という昔ながらの方法で乾かします。※雨避けのビニールシートは天候によってかぶせる場合もあります。