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出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、コロナ禍をきっかけに観葉植物の魅力にハマる。現在はフローリスト&グリーンコーディネーターとして勤務する傍らWebライターとしても活動中。家の中をジャングルにするのが夢です。…続きを読む
「ブルーベリーを育ててみたいけれど、種類があり過ぎてどれを選べば良いのか分からない…」そんなお悩みはありませんか?ブルーベリーは、かかりやすい病害虫の種類も少なく一般家庭でも栽培しやすい果樹です。とはいえ、品種によっては寒さに強いものもあれば弱いものもあります。ブルーベリーを元気に育てて、たくさん果実を収穫するには、栽培する地域に合った品種を選ぶことが重要です。この記事では、ブルーベリー博士の福田俊先生に品種の選び方を教えていただき徹底解説。おすすめの品種も紹介します!
ブルーベリーは3種類に大別される
毎年のように新しい品種が発表されているブルーベリー。現在国内で入手できるブルーベリーの栽培品種は100種以上にものぼりますが、それらは大きく「ノーザンハイブッシュ系」「サザンハイブッシュ系」「ラビットアイ系」の3系統に分かれており、栽培に適する条件がそれぞれ異なります。ここでは、各系統の特徴を解説します。
ノーザンハイブッシュ系
出典:PIXTA
ラビットアイとともに、栽培ブルーベリーを代表するノーザンハイブッシュ。
アメリカ北東部が原産で花芽の休眠打破に必要な低温時期が長いため
耐寒性が強いのが特徴です。-20度以上の寒さに耐えられるとされていますが、
高温多湿には弱いです。日本では
関東以北から東北地方の寒冷地の栽培に適しています。古くから品種改良が行われており、栽培種のブルーベリーでは最も多い品種の数を誇ります。
果実は大きく、大粒の実がなる品種では500円玉大になるものも。味わいは
爽やかな酸味があり、皮が柔らかいため舌触りが良く風味も豊かです。
サザンハイブッシュ系
サザンハイブッシュは、
ノーザンハイブッシュを暖地でも育てやすいように改良した品種です。日本では
東北地方南部から沖縄まで、温暖な地域で広く栽培されています。
耐寒性は弱く、冬季に-10度以下になる地域では、凍害を受ける可能性があるので注意が必要。
樹高はノーザンハイブッシュより低めです。毎年のように果実の品質に優れた新しい品種が多く発表されています。
ラビットアイ系
栽培ブルーベリーの中心であり、冬季が温暖な地域での栽培が盛んです。日本では、
関東地方以南の地域に適応します。
暑さや乾燥には強いですが、耐寒性は弱いので冬季に-10度以下になる地域では凍害を受ける可能性も。
樹形はハイブッシュ系に比べ大きく、果実は小さめですが豊産です。食味は
酸味が少なく甘みが強いのが特徴。
皮が厚めで硬いため、ジャムなどに加工して食べるのがおすすめです。
「ラビットアイ」という呼び名は、果実が熟成し青くなる前にウサギの目のように赤くなることが由来とされています。
「ブルーベリーの育て方」はこちら!
収穫方法も要チェック
ブルーベリーの品種の選び方
出典:Pixabay
ブルーベリーは、耐寒性や耐暑性といった
系統・品種ごとの特徴を見極め、栽培環境に合ったものを選ぶことが大切です。
系統・品種に合った気象条件下で栽培すると、果実の収穫量が増え、風味も良くなります。また、樹勢の強さを参考に栽培スペースに見合った系統・品種を選んだり、甘みや粒の大きさなど果実の特徴によって選んだりすることも可能です。ここからは、ブルーベリーの系統・品種を選ぶ際の前提知識と、栽培環境や果実の特徴に応じた品種選びのポイントをご紹介します。
栽培環境に合わせて系統を選ぶ
まずは栽培地の気候環境に合わせて系統を選びましょう。耐寒性が強いノーザンハイブッシュは寒冷地向け、耐寒性が弱いサザンハイブッシュ、ラビットアイは温暖地向けです。
ノーザンハイブッシュ | 関東以北〜北海道の寒冷地、高緯度地域の冷涼地 |
サザンハイブッシュ | 東北南部〜九州、沖縄までの温暖地 |
ラビットアイ | 関東以南〜沖縄までの温暖地 |
系統選びにおいては標高も一つの指標になります。関東甲信越や北陸、中国、九州などでも高緯度の冷涼地であればノーザンハイブッシュの栽培が可能です。ブルーベリーの栽培地帯はリンゴと同じで、実際にリンゴの産地として有名な長野県は東北や北海道と同様にノーザンハイブッシュ系の産地になっていますね。
結実させるには同系統の別品種が必要
ブルーベリーは自家不和合性といって
1本だけでは受粉しにくい作物です。多くの果実を得るには
同じ系統から2つ以上の品種を育てて他家受粉させる必要があります。系統の違う品種同士だと、開花時期が異なるため相性が悪くなります。
ブルーベリーの開花時期は長いので早生と晩生でも受粉は可能です。
樹高の高さを考慮する
出典:写真AC
栽培スペースが限られる場合は樹高を考慮して選ぶのもひとつの方法です。一般的にブルーベリーは果樹の中では樹高が低めで、生長しても高さ3m程度に収まるので家庭でも育てやすいとされています。
系統別ではラビットアイよりもハイブッシュの方が樹高が低め。特にサザンハイブッシュの「サンシャインブルー」などは樹高が1.5m程度とコンパクトなので、鉢植えでのベランダ栽培におすすめです。
「甘い」「大粒」「高収量」など品種の特徴で選ぶ
そのまま生食にするなら大粒で甘みと酸味のバランスに優れるハイブッシュ系品種、ジャムやジュースに加工するなら小粒でもたくさん収穫できるラビットアイ系品種など、品種ごとの特徴によって選ぶ方法もあります。
例えば
甘さを重視したい場合は、甘みの強い品種を2品種以上植えるとよいでしょう。
ノーザンハイブッシュ系のおすすめ品種
ここからは、福田先生がおすすめするノーザンハイブッシュ系の品種4選を紹介します!
スパルタン
写真提供:福田俊
特徴
ノーザンハイブッシュの中でも抜群の品質を誇る超大粒品種。やや栽培難易度は高いものの、味は甘みが強く非常にジューシーです。酸味もありますが、それに負けないしっかりとした甘さがあります。生食と加工どちらにも◎ 樹形はコンパクトで小枝が少なく、剪定が楽です。
収穫時期 | 6月上旬〜下旬 |
原産国 | アメリカ・メリーランド |
甘み | ★★★★☆ |
粒の大きさ | ★★★★★ |
チャンドラー
写真提供:福田俊
特徴
スパルタンと同様にブルーベリーの中でも最大級のサイズを誇る大粒品種。大きさだけでなく食味の評価も高く、強い甘みと適度な酸味があります。収穫期間は6週間程度と長めです。樹勢が強く比較的に育てやすいでしょう。
収穫時期 | 6月下旬〜7月中旬 |
原産国 | アメリカ・メリーランド |
甘み | ★★★☆☆ |
粒の大きさ | ★★★★★ |
7月に収穫できる中生種。果実は500円玉サイズの超大粒で直径30mmを超えることも。
レガシー
写真提供;福田俊
特徴
果実は100円玉くらいの標準サイズですが、樹勢、育てやすさ、豊産性、食味などの総合的な評価が高い優良品種。サザンハイブッシュとのハイブリッド品種のため、近年の夏の酷暑にも耐えられます。
収穫時期 | 6月下旬〜7月中旬 |
原産国 | アメリカ・ニュージャージー |
甘み | ★★★★☆ |
粒の大きさ | ★★★★★ |
レイトブルー
写真提供:福田俊
特徴
ノーザンハイブッシュ系の最晩生品種。キレのある酸味が特徴で甘みは控えめです。スイーツのトッピングなどにすると酸味が引き立ちます。完熟すると糖度が増してバランスの取れた味わいに。
収穫時期 | 7月上旬〜7月下旬 |
原産国 | アメリカ・ニュージャージー |
甘み | ★★★★☆ |
粒の大きさ | ★★★☆☆ |
ラビットアイの早生品種と同じ7月に取れる晩生種で、味もおいしいです。
サザンハイブッシュ系のおすすめ品種
ここからは福田先生おすすめのサザンハイブッシュ4品種のご紹介です。
オニール
写真提供:福田俊
特徴
香りが豊かで食感は柔らかくジューシーな味わいが特徴です。完熟まで待って収穫すると糖度が15度を超えて甘みが増します。収穫量はそれほど多いわけではないものの、果実はふっくらとして大きめ。皮が柔らかく雨で裂果しやすいため、梅雨時期は雨除けの下で育てるのがおすすめです。
収穫時期 | 5月下旬〜6月下旬 |
原産国 | アメリカ・ノースカロライナ |
甘み | ★★★★☆ |
粒の大きさ | ★★★☆☆ |
サミット
写真提供:福田俊
特徴
サザンハイブッシュでは珍しく酸味が特徴の大粒・豊産性品種。早摘みだと酸味が強いですが完熟すると甘みが増して酸甘のバランスがよくなります。あまり日持ちしないので収穫後すぐに食べるのがおすすめ。苗木のうちは樹勢が強いものの、実をつけた後は樹勢が弱りやすく、栽培難易度は高めです
収穫時期 | 6月中旬〜7月中旬 |
原産国 | アメリカ |
甘み | ★★★★☆ |
粒の大きさ | ★★★★☆ |
スター
写真提供:福田俊
特徴
早い地域では5月下旬から成熟が始まる早生品種。おいしいと評判のオニールの交配種で、すっきりとした甘さがあります。「スター」という名前のとおり萼片(がくへん)が整った星形をしているのも特徴です。果実は標準サイズで収穫量も中程度。開花から成熟までが早く、一気に熟すので収穫期間は短めです。
収穫時期 | 6月上旬〜6月下旬 |
原産国 | アメリカ・フロリダ北部 |
甘み | ★★★★☆ |
粒の大きさ | ★★★☆☆ |
オザークブルー
写真提供:福田俊
特徴
開花が遅く、ラビットアイ系品種の開花時期に近い晩成品種です。果実は大玉で甘味と酸味の調和が取れてコクがあり、果肉は締まって食感も良好。サザンハイブッシュ系の中では耐寒性が高く、東北地方などでも栽培が可能とされています。
収穫時期 | 6月下旬〜7月下旬 |
原産国 | アメリカ |
甘み | ★★★★☆ |
粒の大きさ | ★★★★☆ |
ラビットアイ系のおすすめ品種
続いてはラビットアイ系品種で福田先生おすすめの4品種です。
フクベリー
写真提供:福田俊
特徴
福田先生みずから育成した超晩生品種。皮が薄く種も小さいため口当たりがよく、程よい酸味が効いて食味に優れます。粒揃いで収穫量が極めて多いのも特徴です。
収穫時期 | 7月下旬〜9月下旬 |
原産国 | アメリカ |
甘み | ★★★★★ |
粒の大きさ | ★★★★☆ |
大きい実は4g程度とラビットアイでは大きい方です。7月下旬から9月まで長期間にわたって収穫できます。貯蔵性抜群で冷蔵で1カ月の実績があり、味が良いと評判です。
デライト
写真提供:福田俊
特徴
果肉が締まって食感がよく、香りや風味も優れる晩生品種。食味はフルーティでマスカットのような爽やかな甘みと酸味が楽しめます。樹勢が強く、ラビットアイの中でも特に対暑性があり栽培しやすいので初心者にもおすすめです。
収穫時期 | 8月上旬〜9月上旬 |
原産国 | アメリカ |
甘み | ★★★★★ |
粒の大きさ | ★★★★☆ |
ティフブルー
写真提供:福田俊
特徴
果実の品質と育てやすさに定評があり、1955年の発表から長く栽培されています。豊産性で果実は中粒。成熟初期は酸味が強いものの、色づいてから4〜5日経つと甘みが増して味が良くなります。病害虫に強く、結実した翌年以降も樹勢が衰えず丈夫です。
収穫時期 | 7月下旬〜8月上旬 |
原産国 | アメリカ |
甘み | ★★★★★ |
粒の大きさ | ★★★☆☆ |
ブライトウェル
写真提供:福田俊
特徴
ほとんど酸味を感じないほど甘みが強く食べやすい早生品種。色づいたばかりのタイミングでもおいしく食べられます。ラビットアイ系品種に多い皮の厚みや舌触りのざらつきはあまり目立ちません。剛健で育てやすく、樹高が低いため摘み取りやすい優良品種です。
収穫時期 | 7月上旬〜8月上旬 |
原産国 | アメリカ |
甘み | ★★★★★ |
粒の大きさ | ★★★☆☆ |
ブルーベリーおすすめ品種一覧表
出典:Pixabay
今回ご紹介したブルベリーのおすすめ品種を一覧表にまとめました。品種選びの参考にしてみてください。
品種名 | 系統 | 収穫時期 | 粒の大きさ | 甘み |
1. スパルタン | ノーザンハイブッシュ系 | 6月上旬〜下旬 | ★★★★★ | ★★★★☆ |
2. チャンドラー | ノーザンハイブッシュ系 | 6月下旬〜7月中旬 | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
3. レガシー | ノーザンハイブッシュ系 | 6月下旬〜7月中旬 | ★★★★★ | ★★★★☆ |
4. レイトブルー | ノーザンハイブッシュ系 | 7月上旬〜7月下旬 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
5. オニール | サザンハイブッシュ系 | 5月下旬〜6月下旬 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
6. サミット | サザンハイブッシュ系 | 6月中旬〜7月中旬 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
7. スター | サザンハイブッシュ系 | 6月上旬〜6月下旬 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
8. オザークブルー | サザンハイブッシュ系 | 6月下旬〜7月下旬 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
9. フクベリー | ラビットアイ系 | 7月下旬〜9月下旬 | ★★★★☆ | ★★★★★ |
10. デライト | ラビットアイ系 | 8月上旬〜9月上旬 | ★★★★☆ | ★★★★★ |
11. ティフブルー | ラビットアイ系 | 7月上旬〜8月上旬 | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
12. ブライトウェル | ラビットアイ系 | 7月上旬〜8月上旬 | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
※成熟期は、関東南部を基準としています。気象条件や栽培環境によって異なる場合があります。
ブルーベリーの品種に関するQ&A
ブルーベリーの品種選びでよくある質問をまとめました。
品種の分からないブルーベリーの見分け方は?
ラビットアイ系は、樹の高さが2m以上、樹冠幅は2.5~3mほどに生長し、
ハイブッシュ系に比べて樹姿が大きいのが特徴。葉は小さく、
縁がノコギリのようにギザギザしています。
ハイブッシュ系は、ノーザンハイブッシュとサザンハイブッシュで少し樹姿が異なります。ノーザンハイブッシュは、樹の高さが約1.5~2m、樹冠幅は2.5~2.5mほどに育ちます。サザンハイブッシュ系は3つの系統の中で最もコンパクトで、樹高は1m前後、樹冠幅は1.5m前後になります。葉は楕円形(だえんけい)をしているものが多く、
ツルツルとした質感でラビットアイと違って鋸歯(きょし)がありません。
ブルーベリー栽培初心者向けの品種は?
栽培のしやすさは、樹勢の強さや土壌適応性、収穫量の安定性などで決まってきます。初心者のうちはとにかく栽培する地域の気候条件に適した系統を選び、なるべく樹勢が強くて丈夫な品種を選びましょう。
初心者向けのラビットアイ品種:ブライトウエル、ティフブルー、パウダーブルー、ラヒ
初心者向けのサザンハイブッシュ品種:ジュエル、オニール、マグノリア、サンシャインブルー、シャープブルー
初心者向けのノーザンハイブッシュブッシュ品種:ブリジッタ、ブルーレイ、ジュン、レカ、デューク、レガシー
ラビットアイは3系統の中でも樹勢が強く栽培がしやすいので、関東以南であればどの品種でも大丈夫です。その次がサザンハイブッシュです。ノーザンハイブッシュは耐暑性が低く暑さに弱いので、寒冷地でないと難しいでしょう。
自家受粉する品種は?
ハイブッシュは自家受粉で多少結実しますが、小さな果実になります。ラビットアイはほぼ100%自家不和合性なので自家受粉では結実しません。遺伝的に違う他家受粉が原則になります。
高級品種を知りたい!
ブルーベリーの王様のような位置付けの高級品種としてはスパルタン、チャンドラーなどがあります。
ブルーベリーは地域に合った育てやすい品種を選ぼう!
出典:Pixabay
ブルーベリーには100種類以上もの品種がありますが、おいしい果実を収穫するには、まずは栽培する地域の気候条件に適した系統を選ぶことが大前提です。系統ごとの特徴を押さえた上で、粒の大きさや甘み・酸味など味の好みを考慮して選びましょう。ブルーベリーは虫がつきにくく、野菜の栽培よりも簡単なので、初心者の方でも比較的育てやすいのが特徴。自宅の庭などでも育つので、ぜひ挑戦してみてくださいね。