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- AGRI PICK 編集部
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「接ぎ木」は果樹の増やし方の一つ
果樹は、挿し木か接ぎ木で増やす
果樹を種から育てることは、ほとんどありません。受粉で作られた果樹の種は、めしべの品種とおしべの品種の両方の性質を受け継ぐため、品種Aの種を採取しても、実際は品種BやCの性質をあわせ持った、まったく新しい別の品種になってしまいます。たとえば、ブルーベリーの品種「デューク」から種を採取しても、それはもう「デューク」ではない、ということです。しかも種から、実が付くような果樹に育てるまでには、かなり時間がかかります。
そのため果樹は、「挿し木」か「接ぎ木」のどちらかで増やすのが一般的です。果樹や花木の苗を買うとき、よく見ると「挿し木苗」「接ぎ木苗」と書かれていることがありますが、これはその苗がどんな方法で増やされたかを示しています。
「挿し木」については、こちらの記事を参考にしてください。
接ぎ木で果樹を育てるメリット
難しい品種も育てやすくなる
育てやすい品種を台木に、育てにくい品種を接げば、より安定した生長が見込めます。たとえばブルーベリーの「ハイブッシュ」は、味がよく人気の品種ですが、暑さに弱く根付かせるのがやや難しい品種系統です。そこで、生育旺盛で暑さに強く、土壌適応性も高い「ラビットアイ」という品種系統を台木にして、「ハイブッシュ」を接ぎ木して増やす方法がよく使われます。病害虫に強くなる
病害虫に強い品種を土台に、病害虫に弱い品種をつなぎ合わせれば、丈夫に育てることができます。1本の木にいろいろな品種が実る
結実までの期間を短縮できる
挿し木から育てると苗木になるまで1年かかり、さらに収穫できるようになるまで少なくとも2~3年は必要です。ですが接ぎ木は、すでに生長した台木を土台にするので、収穫までの期間を大幅に短縮することができます。1本で収穫できるようになる
オスの品種とメスの品種が存在する「雌雄異株」の果樹は、雌株と雄株を両方植えないと、受粉が成立せず実ができません。たとえばキウイや柿などがそうです。ですが雌株に雄株を接げば、1本だけで収穫が楽しめるようになります。2本以上植えるスペースがないときにおすすめの方法です。接ぎ木のデメリット
果樹の接ぎ木方法|基本の流れ
接ぎ木の時期はいつ?
果樹が冬の休眠から目覚め、芽が動き始めた3月下旬~4月中旬ごろに行うのが一般的です。春に伸びた新しい枝を台木に、5~6月ごろ接木する方法もあります。この接ぎ木方法は葉っぱが付いた枝を使うので、「緑枝接ぎ」と呼ばれます。用意するもの
・台木・穂木
・接ぎ木ナイフ
・接ぎ木テープ
おすすめの接ぎ木テープと上手な使い方はこちら!
台木と穂木の準備
1. 台木の用意
まずは土台となる果樹を用意します。樹勢が強く丈夫な品種を選びましょう。穂木とつなげる部分は、若い枝であるほど接ぎ木活着率(定着する確率)が高くなるといわれています。また、台木と穂木の太さが近いほど、接合部のカルスという癒傷組織の形成が進みやすく、生育良好になります。接ぎ木には相性がある!
どんな台木と穂木の組み合わせでも、自由に接ぎ木できるわけではありません。組み合わせには相性があります。近縁種であればあるほど、接ぎ木の成功率は高くなりますよ。「属」が同じもの同士で挑戦しましょう!
ただ、かんきつ類は例外で、ほとんどの台木に「カラタチ」が使われています。たとえば温州ミカンの場合も、ミカン科ミカン属の木より、ミカン科カラタチ属のカラタチのほうが相性が良いのです。
2. 穂木の採取
台木の上につなぎ合わせたい品種の穂木を、台木とつなぎ合わせる直前に採取します。台木の接木部と似た太さで、樹勢旺盛な枝を選びましょう。穂木は保管しておいたものを使用しても問題ありませんが、貯蔵方法が悪いとカビが生えたり病気になったりするので、直前に採取するのがおすすめです。穂木を保管したいときは
冬の間に穂木を採取し、ビニール袋に入れて密封します。冷蔵庫で約3カ月ほど保存できますよ。
剪定した枝を使いたいときは
穂木をあらかじめ1~2芽間隔で切り離しておき、湯煎で溶かしたロウに2秒くらいつけて取り出し、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。ロウが穂木を完全に覆うことで、切り口から水分が蒸発しにくくなります。ロウは直接火にかけると焦げてしまうので、必ず湯煎で行ってください。
接ぎ木の方法
1. 台木の切り戻し
台木を以下の高さのところで、まっすぐ切り戻します。・鉢植えの場合、地際から5cm程度
・地植えの場合、地際から15cm程度
2. 台木と穂木に切れ込みを入れる
切り戻した台木の断面部分、茶色い樹皮と木質部の間に切れ込みを入れます。穂木は、台木と接合させる部分の皮を薄くはぎ、もう片面を斜め45度くらいの角度で切ります。樹皮の内側にある緑色の部分が「形成層」です。3. 台木と穂木をつなぐ
切れ込みを入れた台木に、鋭く切った穂木を差し込むようにして、ぴったりと切り口同士を合わせます。すき間があかないように注意しましょう。合わせた部分を接ぎ木用のテープできつく巻きます。接ぎ木の成功率を上げるためには
雨が接ぎ木部分に入らないように、テープはしっかり巻いてください。断面に癒合剤を塗ると防水になります。また、この断面部分から害虫が食入することもあるので、地際付近は清潔にし、雑草もこまめに取り除きましょう。
接ぎ木後の管理
また、台木が生長すると、接ぎ木した品種の生長を妨げてしまうこともあります。根元から出てきた芽はかき取って、接ぎ木した品種の生長を台木が阻害しないようにしてください。