ライター 柴﨑 光一 リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。
カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。
現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。
植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。
幼いころから生き物やもの作りが大好きで、庭木・草花・観葉植物を使ったガーデニングの世界を開拓しています。
日本とカナダでの造園・庭師の経験に加え、趣味の植物やコケの収集、植物アート作りを生かして、 みなさんに植物や庭の魅力をお届けします!…続きを読む
出典:Shutterstock
灰色の斑点模様の幹が、すうっと空へ立ち上がり、透き通った薄い小さな葉をたくさん出すシマトネリコ。夏には白い花を咲かせ、秋になると羽の付いた実を付けるので、木漏れ日が差し込む涼しげで季節感のある庭を演出してくれます。また、強い剪定(せんてい)にも負けないので、自由に樹形を整えやすく、シンボルツリーや、目隠し用の庭木としてもおすすめです!
シマトネリコの木の特徴|花・実・葉の観賞時期や、植え付け・剪定の時期 出典:Shutterstock
沖縄や台湾などの熱帯地域に広く自生しているシマトネリコは、冬に葉が一斉に落ちない常緑性の高木。基本的に暑さに強く寒さに弱いですが、品種改良によって、最近では外で育てられる範囲が関東などの中間地(温暖地)まで広がっています。
基本情報 英語名/学名 Himalayan ash、Evergreen ash、Griffith’s ash/Fraxinus griffithii 別名 タイワンシオジ、タイワントネリコ 科名 モクセイ科 属名 トネリコ属 特性・形態 常緑性(半落葉性)高木 樹高 5〜20m 原産地 沖縄、台湾、フィリピン、中国 USDA zone 9a〜10b 耐寒性 やや弱い 耐暑性 強い 耐陰性 あり
USDA zone とは United States Department of Agriculture Plant Hardiness Zone(米国農務省 植物の耐寒性地帯)の略。米国農務省 が開発した、寒さの段階を13のレベルに分け、植物の耐寒性レベルを数値とマップで明瞭化した指標です。造園やガーデニングをするうえで、植物がどの地域で、どれくらいの寒さまで耐えられるのかを確認するために使います。日本では気象庁の観測データを元に、都道府県市町村ごとにレベル分けされています。※指標は、植物を屋外で育てたときの目安。 参考:Japan Plant Hardiness Zone
シマトネリコの鑑賞や剪定などの手入れの時期 イラスト:柴崎光一
鑑賞期:5月下旬〜7月上旬(花)、10〜11月(紅葉) 結実期:10〜11月 植え付け、植え替え:4月 肥料:鉢植え/3月(寒肥) 剪定:7月、10〜12月 シマトネリコの花・実・葉の鑑賞時期 出典:写真AC
シマトネリコは、4月ごろに新芽を出したあと、
5月下旬〜7月上旬に甘い良い香りのする白い花が見ごろ を迎えます。10月を過ぎたころから、羽が付いた白い実が付き、11月ごろに赤紫色に熟します。比較的寒い場所で育つシマトネリコの場合、葉が紅葉し落葉することもあるようです。
シマトネリコの剪定・施肥・植え替えなど、手入れの時期 撮影:柴崎光一
シマトネリコの剪定は、
年に2回のペースで行いましょう。 生育が旺盛なため、追肥は必要ありませんが、植え付けや植え替え時に元肥を入れておきます。
肥料を与えると、シマトネリコの生長に勢いがつき過ぎて、管理が大変になることもあるので追肥はしません。
シマトネリコの生長速度・樹高・苗木の販売価格 出典:写真AC
庭木の中でも、生長速度がかなり早いシマトネリコは、地面に根付くとわずか1カ月で枝葉が10cm以上伸びます。最終的に樹高が10mを超えることも。また、
狭い場所へ植えてしまうと根が太くなりやすく、広い場所で育つシマトネリコよりも生長がさらに早まってしまう ので、できるだけ広めの庭に植え付けると安心です。価格は苗木の大きさや樹形によって違いますが、樹高が70cmほどで、1,100円程度から販売されていることが多いようです。
おすすめのシマトネリコの苗木 シマトネリコの花|爽やかな甘い香りの白い花!花言葉は? 雄花と雌花がそれぞれ別の株に付く、雌雄異株(しゆういしゅ)のシマトネリコ。
雄株も雌株も、3〜4枚の花びらをもったモクセイ科独特の爽やかな甘い香りのする白い花 が、枝先にたくさん集まってふさ状に咲きます。しかし、雄株の花は雌しべが退化し受粉ができないため、秋に実は付きません。
実も鑑賞したい場合は、雌株のシマトネリコの苗木を 購入しましょう。
シマトネリコの花言葉 撮影:柴崎光一
シマトネリコの花言葉は、「偉大」「高潔」「服従」「思慮分別」です。
シマトネリコの実と葉の特徴|常緑なのに葉が落ちる? 出典:Shutterstock
シマトネリコの葉|暖かい場所では常緑、寒い場所では半落葉 出典:写真AC
シマトネリコは、葉軸から5〜15枚程度の先がシュッととがったような小葉を奇数で出す、奇数羽状複葉(きすううじょうふくよう)です。春はライムグリーンの新緑が芽吹き、夏には鮮やかな緑色へと変化します。
暖かい場所では1年中鑑賞できる常緑樹ですが、寒い場所で育てていると、秋に赤味がかった茶色に紅葉し、冬には落葉する半落葉樹になる場合も。
葉が落ちる様子を見ても枯れたとすぐに思わず、新芽が芽吹く4〜5月ごろまで様子をみましょう。 シマトネリコの実|白い羽のついた果実が、赤く熟す 花が咲き終わった雌株のシマトネリコは、10月ごろからカエデのような、薄い1枚の羽をもった果実(翼果)を付けます。
初めは白い果実ですが、寒くなると次第に赤紫色に熟し、プロペラのようにくるくると回転しながら落下 します。
シマトネリコの種は発芽率が高く、種から苗木を作ることもできます。
シマトネリコの3つの魅力|庭木やシンボルツリーにおすすめ! 撮影:柴崎光一
樹齢を重ねると薄い樹皮がペラペラと剥がれ、幹から樹液がしみ出ることもあるシマトネリコは、カブトムシやクワガタが集まりやすい木です。潮風や排気ガスにも強い木なので、海岸近くや道路に面した庭でも元気に育てられるのも魅力の1つ!
シマトネリコの魅力1|単幹か株立ち樹形か選べる 出典:Shutterstock
庭木に使われる木には、大きく分けると地面から出る幹が1本の「単幹樹形」と、幹が複数出てくる「株立ち樹形」と呼ばれる種類があります。シマトネリコには、単幹樹形と株立ち樹形の両方の種類があるので、庭の雰囲気や好みにあわせて選ぶことができます。
幹が太くがっしりとした存在感が出るのは単幹樹形、1本でも自然の中にいるような風情が出るのは株立ち樹形 です。
シマトネリコの魅力2|目隠し用の庭木として透け感を調整できる 出典:Shutterstock
細い葉が重なるように集まって出るシマトネリコ。
芽吹く力が強く、強剪定をしても新しい枝葉を伸ばすため、透け感を自由に調節できる 目隠し用の庭木にもなります。広めの玄関ポーチや門塀の横などに植えると、機能的でハイセンスな庭づくりができます。
シマトネリコの魅力3|病気や害虫の被害にあいにくい シマトネリコは、基本的に病気や害虫に強い樹木です。ただし、枝葉が混み合って風通しが悪くなると、温度と湿度が上がり、まれに
カイガラムシやイラガ(毛虫)の幼虫が付くことも 。定期的な剪定はもちろんですが、消毒をして予防したり、ピンセットや歯ブラシを使って駆除したりしましょう。
イラガは梅雨の時期から夏の間に発生しやすいです。消毒剤は、3〜4月と6〜7月の2回に分けて散布 しましょう。
シマトネリコの育て方|枯れるのを防ぐ!植え付け場所や栽培スペース、土づくりなど 生命力が強いシマトネリコに、難しい管理は必要ありません。ただし、育てる場所や冬の寒さが枯れる原因になることも。植え付け時の注意点やポイントなどをチェックしましょう!
Point1. 日当たりと風通しが良い場所で育てる 出典:写真AC
日陰に強いシマトネリコですが、日当たりと風通しが良い場所で育てると、葉の色味も鮮やかで元気に生長します。日陰過ぎる場所だと幹や枝葉が間延びしやすく、生長が早まって、さらに高木になってしまう場合も。
春から夏の間にしっかり陽が当たるような、暖かい場所に植え付けるのがおすすめ です。
Point2. 直径3〜8m程度のスペースを確保 撮影:柴崎光一
高木に生長するシマトネリコは、大きくなったときを想定して、広めの場所に植え付けることがポイント。
幹が比較的あまり太くならない株立ち樹形は、直径3〜5m程度のスペース を、
幹が太くなりやすい単幹樹形は、直径3〜8m程度のスペース を確保します。また、硬くて太い根が地中に伸びていくため、家の壁隣りや地中にガス管・水道管などがない場所を選びましょう!
Point3. 排水性・通気性のある土に植える 出典:Shutterstock
シマトネリコは土が硬いと根腐れが起こり、枯れてしまうこともあります。苗木を植え付ける前に、
掘り起こした土に赤玉土とバーク堆肥を混ぜて、排水性と通気性を良く しておきましょう。
シマトネリコの植え付け時の肥料や手順 植え穴の深さは根鉢の高さよりも3cm低く掘り、底に油かすなどの有機肥料か、緩効性化成肥料を元肥として入れておきます。 根鉢の表面が少し地面から出るように浅く植え付け、足で踏んで固定します。 シマトネリコが枯れる原因は、主に過湿と深植えによる根腐れです。また、やわらかい黒土は根が張りやすく、生長速度が早まってしまう危険性があるので、できるだけ使わない ようにしましょう。
シマトネリコが枯れるのを防ぐ!植え付ける前の土づくりの関連記事はこちら シマトネリコを植え付けた後の水やり シマトネリコの
植え付け直後は、表面に水をたっぷり与えましょう。 その後は暑さで土が極端に乾いているときにだけ、水やりをすれば大丈夫です。
Point4. 冬には防寒対策を 撮影:柴崎光一
寒さに弱いシマトネリコは、氷点下5℃を下回ってしまうと株が枯れてしまうこともあります。地面が凍ってしまうぐらいの気温になる可能性がある場合は、
マルチングをして冬越し対策 をしましょう。
庭木のマルチングとは 樹木を植え付けたばかりのころや冬が近づくころには、乾燥や保温対策としてウッドチップやバークチップ、腐葉土などを株周りに敷いて、夏越しや冬越しをします。
寒い地方では、幹にわらや麻布(ジュート)を巻いて幹を保温したり、水分の蒸発を防いだりする「幹巻き(みきまき)」も効果的です。
シネマトリコの剪定時期と切り方|バッサリ切ってOK!放置は後悔の元に 出典:写真AC
地植えのシマトネリコは生長速度が早いので、放置すると見た目が悪くなるだけでなく、大きくなり過ぎてしまうことも。また、病害虫の被害などにもあいやすくなるので、
最低でも1年に2回(7月と10~12月)のペースで剪定 をしましょう。
ただし、苗木を植え付けてからの2年間は、シマトネリコを剪定せず、枝葉の出方や伸び方の様子を見てから 切ります。
シマトネリコの最適な剪定時期|7月と10〜12月 撮影:柴崎光一
シマトネリコの剪定は、花が咲き終わる7月か、生長が緩やかになる10〜12月にしましょう。時期を間違えると花芽を切り落としてしまい、花が咲かなくなります。
シマトネリコの剪定方法 撮影:柴崎光一
シマトネリコは、基本的に長く伸びた幹や枝葉を、枝分かれした箇所まで切り戻すような剪定で全体の樹形を整えます。
太い幹や枝を切り詰め剪定し過ぎてしまうと、切った箇所から複数の枝葉が伸びて樹形が暴れる 場合もあるので注意してくださいね!
1. 遠くから見て、理想の木の高さや幅など、剪定するラインを決める 2. 決めたラインから出ていて、樹形を乱すような幹や枝葉は全て、枝分かれした付け根で切り落とす 3. 枝先から伸びる細かい枝葉を、好みの透かし具合に調節しながら切り戻す
密集し過ぎた枝葉はバッサリ切っても大丈夫! 枝葉が鬱蒼(うっそう)として、壁のような圧迫感のある木になってしまった場合は、幹や枝の数を間引くように切り落とし、向こう側が見えるようにバッサリと剪定することが大事です。ためらって切らずにいると、次回以降の剪定が大変になってしまいます。
シマトネリコの詳しい剪定方法を見る 鉢植えでシマトネリコを育てるコツ|室内に置けば風水効果も!? 出典:写真AC
シマトネリコの木が小さいうちは、観葉植物や盆栽のように鉢植えでコンパクトに育てることができます。鉢植えは季節や日当たりにあわせて移動可能なので、より良い環境で育てられるのも利点!また、風水ではシマトネリコを室内に置くと、下向きに垂れるように葉を出す様子から、気分を落ち着かせる効果があるといわれています。
1. シマトネリコは、マチの広い植木鉢に植え付ける 撮影:柴崎光一
シマトネリコは、たくさんの太い根を地中に浅く張ります。鉢植えにする場合は、
樹高が1〜1.5m程度なら直径30〜50cm、深さ25〜35cm程度のマチの広い鉢 に植え付けましょう。鉢が小さいと根詰まりを起こして、生長不良や枯れる原因にもなります。
2. 鉢底に元肥として肥料を入れておく 出典:Shutterstock
生長したシマトネリコを別の鉢へ植え替えするときは、
土を薄く敷いた鉢やポットの底に、元肥として緩効性化成肥料 を入れておきます。3月にも追肥をすると、生育が良くなります。
用土は地植えと同じように排水性・通気性の良いものを使いましょう。バーク堆肥、ヤシ繊維、などの土壌改良材を使うと、水はけの良い土になります。
3. 鉢の中の過湿はNG 撮影:柴崎光一
シマトネリコの水やりは、鉢の中の土が乾いてからたっぷりと。水を与え過ぎてしまうと、土がいつまでも湿ったままで、根が呼吸できずに枯れてしまうこともあります。
鉢植えでのシマトネリコの詳しい育て方はこちら シマトネリコを挿し木で増やす方法|適期は2~3月 出典:写真AC
シマトネリコを増やしたいときは、枝の一部を切り取って「挿し木」をすると簡単です。挿し木づくりは、春先の2〜3月ごろがベスト。時期を間違えて枝を切ると、花芽を切り落としたり、寒さでシマトネリコを弱らせたりすることもあります。
シマトネリコの挿し穂のつくり方と挿し木の仕方 撮影:柴崎光一
今年出た枝先の若芽を、上から4〜5節目(30cm程度の長さ)でカットし、先端のやわらかい新芽も取り除きます。これを「挿し穂」といいます。 カットした新芽のすぐの下の小葉を5〜10枚ほど残し、それ以外の葉は全て摘み取りましょう。 コップや花瓶に入れた水に3〜5時間ほど挿したあと、水はけの良い土が入ったビニールポットなどに挿して、涼しい日陰で管理しましょう。2〜3カ月で根が出ます。 挿し穂から根が出たら、庭や鉢などに植え付けできます。 地植えや鉢植えでスタイリッシュなシマトネリコを育てよう! 撮影:柴崎光一
生命力が強く、病害虫の被害にあいにくいシマトネリコは、定期的に剪定をすれば、美しいたたずまいのシンボルツリーや目隠し用の庭木になります。鉢植えでも手軽に育てられるので、スタイリッシュな室内の観葉植物にもおすすめです。ぜひシマトネリコを育てて、癒しのある庭づくりをしてみてくださいね!