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【連載第5回】ごみを資源に!真庭市の「バイオ液肥」を紹介|移住支援員の移住のはなし

岡山県真庭市の移住支援員、藤本一志は2拠点居住の兼業農家。さらに真庭市への移住者でもあります。今回のテーマは「バイオ液肥」。ごみを”資源”として活用する、真庭市ならではの仕組みです。その誕生の理由や使い方を紹介します。


ごみ拾い活動

写真提供:真庭市交流定住センター▲最近は地域をきれいにすべく、ごみ拾い活動をしています
岡山県真庭市で移住支援員をしつつ、米農家・ライターをしている藤本一志と申します。「地方移住」をテーマに連載をしています。

僕の暮らしている真庭市では、農地にまく肥料「バイオ液肥」が市から無料配布されています。その仕組みや取り組みの背景、使い方を紹介します。

岡山県真庭市についてはこちら!

バイオ液肥とは

バイオ液肥とは
写真撮影:藤本一志
バイオ液肥とは、家庭や事業所から出る生ごみやし尿、浄化槽汚泥を原料とした液体状の肥料です。これらは普通、お金をかけて処理するものですが、真庭市では“資源”として活用しているのです。市内9カ所で無料配布されており、農家や家庭菜園をしている人が多く利用しています。僕も家庭菜園で育てている野菜に、定期的に使っています。

バイオ液肥を始めた背景

ごみの分別
写真撮影:藤本一志
真庭市ではかつて、年間約14,000トンのごみを、約7億円の費用をかけて処理していました。しかし、出されるごみのうち85%が燃えるごみで、そのうち7割はリサイクル可能なものでした。つまり、きちんと分別すれば燃やす量を1/6まで削減できたのです。また、ごみ処理施設の老朽化や最終処分場の残余容量の減少も懸念されていました。

そこで真庭市は、生ごみ・し尿の液肥化と、紙ごみの資源化を始めました。

液肥化に関しては専用プラントを建設し、久世地域の各所に生ごみ回収用のバケツを設置。家庭の生ごみを回収し、液肥化する仕組みを整えました。液肥の成分検査も実施し、作物の生育や品質に悪い影響はないことも明確にしました。

そして、仕組みが動き始めて7年経った現在では、年間約400トンの生ごみと1,100トンのし尿・浄化槽汚泥を液肥化するまでになりました。

バイオ液肥の循環の仕組み

バイオ液肥で育ったナス
写真撮影:藤本一志▲バイオ液肥で育ったナス
真庭市では、市民が生ごみを分別し、それを専用プラントに運んで液肥化して、農地に散布。そこで採れた野菜を食べる、循環と地産地消の仕組みができ上っています。その仕組みを詳しく紹介します。

(1)生ごみを回収

生ゴミ分別用の青色のバケツ
写真撮影:藤本一志
真庭市久世地域のごみ収集場所には、写真のような青いバケツが置かれています。市民は家庭で出た生ごみを、このバケツの中に入れます。するとバケツごと回収されて、専用プラントに運ばれます。「バケツに入れるだけ」なので、市民がやることはとても簡単です。
ちなみに卵の殻や貝殻などはリサイクル困難なので、燃えるごみで出さなければなりません。

(2)専用プラントでメタン発酵

専用プラント
写真撮影:藤本一志
回収された生ごみやし尿は、専用プラントでメタン発酵にかけられます。2015年にできた専用プラントは、年間で約1,500トンもの生ごみやし尿を液肥にしています。ここで作られたバイオ液肥は、市内9カ所の配布場所に運ばれます。

(3)農地に散布し、できた作物を食べる

バイオ液肥で育ったニンジン
写真撮影:藤本一志
できあがったバイオ液肥は配布場所のタンクに入れられます。その後、市民によって畑や田んぼに散布されます。農家の人はもちろん、僕のように家庭菜園をしている人もバイオ液肥を使っています。そして、収穫した野菜やお米を食べて、出た生ごみは再び分別されます。

このように、真庭市では日常の中に循環の仕組みが存在します。「がんばろう!」と意識することなく、SDGsの取り組みが行われているのです。ちなみに市内の農家・農業法人がバイオ液肥を使って作った野菜は、真庭あぐりガーデンをはじめとする真庭市内のお店で販売されています。バイオ液肥は資源循環だけでなく、地産地消にもつながる取り組みなのです。

バイオ液肥の使い方

バイオ液肥の使い方
写真撮影:藤本一志
それでは、バイオ液肥はどのように使うのでしょうか。実はとても簡単です。

(1)タンクがある場所にくみに行く

バイオ液肥スタンド
写真撮影:藤本一志
真庭市役所や各振興局には、写真のようなオレンジ色のタンクが設置されています。バイオ液肥はこの中にあります。この配布場所に容器を持って行き、バイオ液肥をくみます。タンクから伸びる管に付いている蛇口をひねると、バイオ液肥が出てきます。容器いっぱいに入ったら、しっかりとふたを閉めます。結構臭うので、車の中でこぼすと大変ですからね。

(2)畑にまく

農地に散布
写真撮影:藤本一志
持ち帰ったら、あとは直接畑や田んぼにまくだけです。とても簡単ですね。ちなみに市役所のホームページには野菜ごとに目安の量が書いてあるので、気になる人はチェックしてください。

循環の様子を見学できるツアーもある

バイオマスツアーの様子
写真撮影:藤本一志▲バイオマスツアーの様子。季節によっては、収穫したての野菜をそのまま食べられる
真庭観光局の主催する「バイオマスツアー」では、今回紹介した循環の様子を見学できます。真庭市の循環の仕組みを間近に見られる、とても貴重な機会です。ツアーの内容は以下の通りです。

バイオマスツアー「バイオマス循環農業コース」の内容
・概要説明
・生ごみ液肥プラントの見学
・バイオ液肥を使っている農場の見学
・収穫体験(季節による)

僕も実際に参加して、液肥プラントを見学しました。プラントの中をのぞくという、とても貴重な経験ができました。そのときの様子はこちらの記事にまとめてあるので、ぜひご覧ください。

今後は生ごみ分別を市内全域に拡大予定

真庭市の生ゴミ分別マップ
画像作成:藤本一志
現在は久世地域のみで行っている生ごみの分別ですが、今後は新しいプラントの建設にあわせて、市内全域に拡大する予定です。分別→液肥化→生産→消費のサイクルにより多くの人が参加できるようになります。暮らしの中にSDGsが存在する町、真庭市。ごみ処理費用の削減を目的に始まった取り組みは、市民の日常生活に溶け込んでいます。

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藤本一志プロフィール
1994年岡山県岡山市生まれ。岡山大学環境生命科学研究科修了後、岡山市の企業に1年勤務した後、2020年3月に真庭市に移住。真庭市交流定住センターで移住支援員として情報発信に取り組みつつ、米農家、Webライターとしても活動中。活動のミッションは「今ある風景を次世代につなぐ」。

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藤本一志

1994年岡山県岡山市生まれ。岡山大学環境生命科学研究科修了後、岡山市の企業に1年勤務した後、2020年3月に真庭市に移住。真庭市交流定住センターで移住支援員として情報発信に取り組みつつ、米農家、Webライターとしても活動中。ライター活動の一環で、移住に関するブログ「赤トンボの田舎暮らし」を運営。活動のミッションは「今ある風景を次世代につなぐ」。

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