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岡山県真庭市は広くて多様性にあふれる町
真庭市は岡山県の北部にある人口約4万4千人の町です。特徴は「とにかく広い」こと。真庭市は2005年に9つの町村が合併して生まれた町で、東京23区や琵琶湖よりも広い面積を誇ります。だから市内の移動に1時間以上かかることもあります。旧町村のカラーは今でも大切にされており、地域ごとにさまざまな暮らし・産業・文化・歴史があります。そして、地域の特色を生かした地域づくりが行われています。
真庭市を代表する産業は「林業」
木材が流通する仕組みが整っている
真庭市は面積の約8割が森林で、古くから林業が盛んな町です。現在も市内にはたくさんの林業関係の会社・団体があり、木を植えて管理し、収穫する素材生産業者、木材に加工する製材所、それを利用する建築業者がそろっています。つまり、市内で木が流通する仕組みが整っているのです。僕も真庭市に移住してきた当初、製材所の多さに驚きました。大きな木材を載せたトラックが行きかうのも、真庭市ならではの光景でしょう。
木材は、市役所や図書館といった公共施設にも使われています。中に入ると、木の心地よい香りと明るくてエネルギッシュな空間が広がっています。移住希望者を案内すると、みなさん「おお!」と感動されるので、僕は必ずお連れしています。
CLTを使った建築もある
最近では、CLT(直交集成板)の普及促進も盛んです。CLTとは、ひのき板の繊維が直角に交わるように接着した木製パネルです。厚みや幅があり、耐熱性・耐火性・強度が高いのが特徴です。日本での利用はまだ少ないですが、欧米では中高層建築の壁や床などに使われています。真庭市では共同住宅やバスの待合所などに使用。特に、趣ある駅舎とCLTを使ったトイレが並ぶ様子は、真庭市の“迷“風景の1つになっています。
地域ごとに特色のある観光業・農業
観光業|蒜山高原や湯原温泉が人気
真庭市北部にある蒜山高原(ひるぜんこうげん)は、西日本有数のリゾート地として、毎年多くの人が訪れます。雄大で牧歌的な風景が広がっており、キャンプやスキーなどのレジャーが楽しめます。蒜山の少し南にある湯原温泉は、露天風呂番付で西の横綱に選ばれた温泉地。旭川沿いにさまざまな温泉旅館が並んでいます。日帰り温泉も多く、「仕事終わりに温泉に行って帰る」こともできます。ほかにも、白壁や格子窓の風情ある家屋が建ち並ぶ勝山町並み保存地区や、時期になるとホタルが舞う北房ほたる公園など、地域ごとにたくさんの見どころがあります。
農業|ジャージー牛の飼育頭数が日本一
観光で人気の蒜山高原は、ジャージー牛の飼育頭数日本一を誇ります。脂肪分の多い牛乳とその乳製品は、真庭市の特産品として人気です。僕のおすすめはシュークリームです。また、蒜山高原では寒暖差を生かして野菜の生産も盛んです。ひるぜん大根やとうもろこしなど、多種多様な野菜が生産されています。ほかにも、市内中部の勝山地域では、濃厚で強い粘り気が特徴の山の芋「銀沫(ぎんしぶき)」が、南部の北房地域ではピオーネやシャインマスカットなどのブドウの生産が盛んです。
エネルギー循環と食の循環を図る2つのSDGsの取り組み
真庭市は、全国29都市の「SDGs未来都市」の1つです。代表的な2つの取り組みを紹介します。木を使って発電するバイオマス発電
バイオマス発電とは、間伐材や木くずなどの未利用材を使った発電方法です。林業では、木を育てて加工する過程で多くの未利用材、いわゆる「使わない木」が発生します。この未利用材は、以前は捨てられていました。しかし、それを“資源”として捉えて発電に利用することで、木をあますことなく使う仕組みを実現しました。今では、バイオマス発電による発電量は真庭市内の一般家庭をすべて賄えるほどになっています。電力会社との兼ね合いで電気は主に市役所や学校などの公共施設で使われていますが、市内の自然由来の原料を使って発電していることは、真庭市の大きな特徴だと思います。
生ごみからできた肥料、バイオ液肥
バイオ液肥は、家庭から出る生ごみから作られた肥料です。真庭市では、ごみステーションに青いバケツが置いてあります。その中に生ごみを入れると、回収され、バイオマスプラントに運ばれて肥料になります。ここで作られたバイオ液肥は、市内各所で無料配布されています。当初は使うことをためらう人が多くいました。しかし、収量や味に影響がないことがわかると、農家をはじめ、多くの市民が利用するようになりました。そして、生ごみ→バイオ液肥→農家・家庭菜園→レストラン・お店・家庭→生ごみという地域内循環の仕組みができました。
現在、生ごみの回収は久世地域のみで行っていますが、今後は市内全域に拡大する予定です。ちなみに、僕も家庭菜園にはバイオ液肥をまいています。無料で簡単に施肥できるので、とても助かっています。
多様な人々が集まり、これからの地方の可能性を紡ぐ町
最後に、真庭市最大の特徴を紹介します。それは、「人の多様性」です。真庭市は、多様性を育む地域づくりを大切にしています。さまざまな地域があるように、そこに暮らす人々も多様です。そして、人同士が“ゆるく”つながっています。さらに、1人ひとりの「やりたい」「かなえたい」を応援する雰囲気があって、仲間と一緒に取り組む傾向があります。
僕も「人々が心地よくつながって、楽しそうに暮らしている様子」に憧れて、真庭市に移住しました。それぞれを認め合って、それぞれが持ち味を発揮できる真庭市は、自分らしく生きられる町だと感じています。
人のつながり・地域資源の活用・地域内循環。真庭市には、これからの地方社会の可能性が詰まっているのではないかと思います。今回紹介した内容は、今後もっと詳しく紹介できればと思います。
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藤本一志プロフィール
1994年岡山県岡山市生まれ。岡山大学環境生命科学研究科修了後、岡山市の企業に1年勤務した後、2020年3月に真庭市に移住。真庭市交流定住センターで移住支援員として情報発信に取り組みつつ、米農家、Webライターとしても活動中。ライター活動の一環で、移住に関するブログ「赤トンボの田舎暮らし」を運営。活動のミッションは「今ある風景を次世代につなぐ」。
ブログ「赤トンボの田舎暮らし」