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そんな真庭市は、都市部からの移住者が増えている町でもあります。「多様性」をキーワードに、さまざまな取り組みを進めています。
南北に広く、地域ごとのカラーが豊かな真庭市
真庭市は、2005年に9つの町村が合併して生まれた町です。南北に広く、北部は鳥取県と接しています。北部の蒜山高原(ひるぜんこうげん)は一部が国立公園に編入されるほど自然豊かで、降雪量が多いことからウインタースポーツなども盛んな地域です。一方市内南部では、雪は年間数日程度しか降らず、都市機能が集約するなど、様子がガラッと変わります。また南北に広いため、桜や紅葉が1カ月にわたって楽しめるという魅力もあります。さらに面積の約8割が森林で、各地域が山で隔てられています。そのため、地域ごとに独自の産業・文化・歴史が育まれてきました。今でも各地域の特色を大切にしながら、まちづくりが行われています。
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真庭市が目指す「真庭ライフスタイル」とは
真庭市もほかの中山間地域と同様、人口減少・高齢化が進んでいます。その中で、「真庭ライフスタイル」という考え方を大切にしています。真庭ライフスタイル=多彩な真庭の豊かな生活
真庭市にある地域資源を生かした生活。「自分にとっての本当の幸せとは何か?」を考え、今の生活の価値を認め、誇り、自分に合った生活を考える、新しい価値観と考え方。
参考:「真庭ライフスタイル」実現への挑戦
真庭市交流定住センターを設置し、さまざまな取り組みを展開
真庭市の移住の窓口は「真庭市交流定住センター(以下「交流定住センター」)」です。よく行政機関と勘違いされますが、行政が設置した施設を、一般社団法人コミュニティデザインが指定管理者制度によって管理している施設です。交流定住センターは、真庭市の移住者受け入れ窓口として、情報発信や移住相談に取り組んでいます。市内の各企業・団体との結びつきも強く、移住希望者のニーズに合わせて対応できるのが魅力です。この「ニーズ」は、移住の段階ごとにさまざま。移住には大きく5つのステップがあります。真庭市では、交流定住センターを中心に、このニーズにどう対応しているのでしょうか。
移住の5つのステップ
一般的に、移住には次の5つのステップがあるとされています。移住の5つのステップ
1.移住の目的を考える
2.情報収集
3.現地に行く
4.仕事を探す
5.住まいを探す
真庭市の移住支援
ここからは、真庭市の移住支援の取り組みを、移住のステップと照らし合わせながら紹介します。交流定住センターや市役所以外でも、移住に関する取り組みをしている団体もあります。また、真庭市に来るきっかけになるような取り組みもあります。1.これからの生き方を考える「真庭なりわい塾」
まずは「移住の目的を考える」取り組みです。真庭市の取り組みの中でも代表的なのが、「真庭なりわい塾」でしょう。「移住の目的」というよりは「これからの暮らし方・生き方」を考える人材育成塾ですが、真庭なりわい塾がきっかけで真庭市に移住した人も多くいます。
真庭なりわい塾では真庭市内の農山村エリアをフィールドに、農山村の暮らしを学びながら、これからの暮らし方・生き方を模索していきます。塾は1期あたり20名程度で、2年間開催されます。1年目は座学で、2年目は実践講座となります。座学では真庭市内で活躍する人だけでなく、著書『半農半Xという生き方』で知られる塩見直紀氏、『ナリワイをつくる』の著者、伊藤洋志氏などを講師に迎えます。そしてインプットした情報・知識を元に、今後の生き方や暮らし方について徹底的に考えます。
「今の働き方を変えたい」「移住のきっかけがほしい」といった人におすすめです。
2.移住に関する情報を発信|真庭市交流定住センターの「COCO真庭」
真庭市の移住に関する情報発信は、主に交流定住センターが担っています。主な取り組みは以下の3つです。真庭市の移住に関する情報発信
・移住ポータルサイト「COCO真庭」やSNSによる情報発信
・COCO真庭「オンライン移住相談窓口」
・真庭市で暮らす人々が登場する移住セミナー
移住相談では、交流定住センタースタッフが電話やZoomで真庭市の暮らしについてお応えします。特に、土日でも対応しているのは、民間企業ならではのポイントです。交流定住センターの休館日である月・火は市役所の交流定住推進課が相談に応じるので、真庭市は年末年始以外は休みなく移住相談に対応できる仕組みが整っています。
最近では、岡山県が月に1度開催している「岡山ナイター移住相談会」にも出展中。毎月第3木曜日は、夜間の移住相談にも対応してもらえます。
3.真庭市の暮らしや地域の人を案内してもらえる「真庭暮らし体験ツアー」
真庭市を訪問するきっかけとなるコンテンツは、主に3つあります。1つ目は「観光」です。蒜山高原や湯原温泉、勝山町並み保存地区など、真庭市内にはたくさんの観光地があります。桜やホタル、スキーなど、季節ごとの見どころも豊富。南北に広いので、エリアをしぼって観光するのがおすすめです。
2つ目は「バイオマスツアー」です。これは、バイオマス発電やバイオ液肥を使った循環型農業など、真庭市のSDGsに関する取り組みを学べるツアーです。真庭観光局が開催していて、毎年市内外から多くの方が参加しています。
3つ目は「真庭暮らし体験ツアー」です。これは真庭市への移住希望者を対象に、交流定住センターが開催しています。センタースタッフが、移住希望者1人1人に合わせてオーダーメイドのツアーを組み、真庭市内を案内してくれます。
それも、ただ案内するだけではありません。最大のポイントは、真庭市で暮らす「人」を紹介してくれることです。先輩移住者や移住したい地域のリーダー的存在の人、気が合いそうな人など、事前に聞いた内容を元にセンタースタッフがさまざまな人のところに案内してくれます。移住への不安を和らげることと、移住後の暮らしをイメージしやすくするのが狙いです。
仕事や住まいの紹介も受けられる
気になる物件をいくつか案内してもらったり、興味のある仕事をしている人とつないでもらったりすれば、よりよいツアーとなるでしょう。交流定住センターの広いネットワークを生かして、真庭市の暮らしをより深く知るチャンスです。4.農業や林業などの就労支援のほかに、地域おこし協力隊の募集も積極的
真庭市では、幅広く仕事について相談できる窓口や、就農や起業に特化した支援があります。真庭市の就職・就農・創業について
・市役所のオンライン相談
・真庭オンライン起農スクール
・まにわ創業塾
・真庭市地域おこし協力隊
真庭オンライン起農スクールは、移住して農家になりたい方向けの講座です。真庭市に移住して就農した方や講師のお話を聞きながら、農業経営の知識を学びます。毎年冬に開催されているので、気になる方はCOCO真庭をチェックしておきましょう。
地域おこし協力隊という選択肢も
真庭市は地域おこし協力隊の活動も盛んです。真庭市役所交流定住推進課の小谷佳嗣さんによると、真庭市地域おこし協力隊には、以下の3つの特徴があります。真庭市地域おこし協力隊の特徴
・交流定住センターという拠点がある
・隊員同士の横のつながりが強い
・卒業生との縦のつながりが強い
各隊員の活動情報は、ホームページやFacebookで発信中です。
5.空き家活用の補助金を整備
真庭市の住まいのサポートとしては、空き家を購入・改修した際の補助金があります。また、物件の情報は「住まいる岡山」というサイトに掲載中。新着情報があると、COCO真庭にもアップされます。真庭市の空き家活用補助金
・空き家活用定住促進補助金
(参考)真庭市 ホームページ|「令和3年度空き家活用定住促進補助金(受付開始)」
1.移住の目的を考える | 真庭なりわい塾 |
2.情報収集 | COCO真庭・SNS オンライン移住相談窓口 移住セミナー |
3.現地訪問 | 観光 バイオマスツアー 真庭暮らし体験ツアー |
4.仕事を探す | 市役所のオンライン相談 真庭オンライン起農スクール まにわ創業塾 真庭市地域おこし協力隊 |
5.住まいを探す | 空き家活用補助金 物件情報サイト |
移住後には「人をつなぐ」サポートも
移住では、移住後のフォローも大切です。真庭市では人々の多様性を生かし、「人をつなぐ」サポートをしています。移住の窓口である交流定住センターは、移住者が集まる場所でもあります。センタースタッフをはじめ、地域おこし協力隊メンバーの多くは移住者。逆に真庭市出身者の方が珍しいようです。また、交流定住センターは移住者をはじめとする真庭市内の人に関する情報に精通しているため、「こんな人いませんか?」と聞けば、大抵「○○地域の××さん!」と答えが返ってきます。人の多様性を大切にする、真庭市らしいサポートですね。
真庭市に移住して「こんな人いないかな」「ほかの移住者と知り合いたいな」と思ったら、まずは交流定住センターに行ってみましょう。きっといい答えが聞けるはずです。
まずは真庭市交流定住センターに問い合わせを
真庭市の移住支援の取り組みについて紹介しました。多くの団体がさまざまな取り組みをしていますが、真庭市への移住は、まずは交流定住センターに聞いてみましょう。センター長の池田恭子さんによると、交流定住センターのスタッフは全員が移住経験者(Iターン5名、Uターン2名)で、元真庭市地域おこし協力隊員も3名。新しく20代のスタッフも2名入り、ニーズに応じた柔軟な移住相談ができるといいます。多様性のまち岡山県真庭市は、移住支援の取り組みも多様でした。
次回は、それぞれの取り組みをより詳しく紹介できればと思います。