目次
すずみどりの仕組み
すずみどりは神戸大学と株式会社ファイトクロームで共同研究を行い開発された、揮発性バイオスティミュラントと呼ばれる自然の成分を使用した製品です。つるすだけで、植物の高温耐性を引き出して萎れや葉焼けなどの高温障害を予防します。2019年には、開発者である神戸大学大学院農学研究科 准教授 山内 靖雄氏が農芸化学技術賞を受賞しています。青葉の香り「2-ヘキサナール」が植物の高温耐性を誘導する
植物を触ったり、草むしりをした時に、青臭い匂いがすることがあります。その匂いは、青葉アルデヒドという植物自身が出している成分です。昆虫が敵に襲われた時に、周囲に危険を知らせる物質を出すように、植物も自身が傷ついたりストレスを受けると、独自の揮発成分を出します。
それが、青葉の香り成分の一つである2-ヘキサナールです。2-ヘキサナールは、植物にもともと備わっている、高温に耐える力のスイッチを押す成分で、植物の高温耐性能力を引き出します。
自然由来の成分であるため、天敵やハチに影響を与えることはありません。
すずみどりの匂いで気孔を開く
植物は、葉の裏にある気孔という口のような細胞を開いたり、閉じたりして、蒸散量(植物体内の水分量)を調整しています。30〜35℃のような真夏の高温下では、植物は自身を守るために気孔を閉じてしまい、蒸散することができずに、温度が上がり葉焼けや萎れなどの高温障害を起こしてしまいます。
すずみどりの成分、2-ヘキサナールを感知することで、植物は気孔を開き、蒸散を始めるようになります。葉から水分と熱を放出することで、高温障害を回避することができます。
▼高温障害の詳細はこちらをご覧ください。
気孔を開くことで、さらなる効果が!
植物は気孔を開くことで蒸散をすると同時に、空気中から二酸化炭素を取り込みます。すずみどりを設置することで、二酸化炭素の取り込みが活発になり、光合成が盛んになることもわかっています。光合成が盛んに行われることで、樹勢の促進や、花芽をつきやすくするなどの効果も考えられます。
また、蒸散が促されることで、根からの水や肥料の取り込みも促進されます。
▼気孔と光合成について詳細はこちらをご覧ください。
すずみどりの使い方
設置個数
100平方メートル あたり1~2パック(10aあたり10~20パック)が目安です。ハウス内の空気の移動が比較的少ないところでは1パック、天窓や側窓近くなど、空気の移動が激しい場所ではは2パック設置します。
平均気温25℃程度で効果は約1カ月持続します。
つるす場所
すずみどりの揮発性成分は、空気より重たいため下に落ちる傾向があります。そのため地表面ではなく、生長点より上部 (20cm 程度)に設置しましょう。
すずみどりの使用におすすめの時期
ハウス内が 30~35℃を超える時期に
ハウス内が植物の生育適温を大きく上回るような時期は、高温障害の危険性が高まります。そんな時期にすずみどりは最も効果を発揮します。外とハウス内の温度差が生じやすい3~5月にも効果的
春先でも、晴天時のハウス内の気温は高くなります。外気と比較すると10℃以上差がついてしまうことも。天窓から入る外気などとの温度差に耐えられずに、萎れが発生してしまうことがあります。曇天後の快晴時、高温障害が出やすくなる天候が変わりやすい時期にも
曇天が続いた後は、急な温度上昇のため植物が萎れてしまうことがよくあります。春先や梅雨など、天候が変わりやすい時期にもおすすめです。▼ハウス内の気温変化の詳細はこちらをご覧ください。
冬場の使用も効果あり!?
冬は気温が低く、日照も少ないため植物の光合成は抑えられていますが、すずみどりを使用することで、気孔が開き蒸散や二酸化炭素の取り込みが盛んになります。これにより光合成や根からの水と肥料の取り込みが促進されたとの効果も報告されています。
ハウスの花卉栽培では、二酸化炭素発生機とすずみどりの併用で、冬場の出荷で花が大きくなったとのことです。
実証試験で見られたすずみどりの効果
ミニトマト
北海道で行われたミニトマトの実証試験では、7月に設置後1カ月の花落ち率は、非設置区43%に対して、設置区15.9%と大きく減少しました。ピーマン
九州地方の夏秋ピーマンの実証試験では、5月下旬よりつり下げ開始、1カ月目の6月の調査の時点では効果にさほどの違いはありませんが、2カ月目以降の7、8月の収穫量は無施用区と比較するとおよそ140%と大幅な効果上昇がみられました。菊
冬季にすずみどりを使用した愛知県の電照菊農家では、気孔が開く効果から二酸化炭素の取り込みが促進して光合成が盛んになり、例年より大きい花が収穫できました。▼動画もご覧ください。
現場での使い方や効果の実感は?ユーザーにインタビュー
実際の現場ではどのように使用されているのか?熊本県のトマト農家さんにインタビューを行いました。夏秋栽培のミニトマトのアイコで、遮光ネットは使用しておらず、散乱光効果のあるスクリーンを張っています。
すずみどりの使用状況
すずみどりの使用期間
こちらでは、すずみどりを使用し始めて2〜3年になるそうです。すずみどりの設置時期
栽培時期は4月上旬から11月中旬ごろで、ハウス内の気温が高くなる6月末から10月中ごろにすずみどりを設置しています。毎年9月ごろは全国的にトマトの出荷が減り価格が上がるため、その時期の収穫量を安定させるために、開花時である60日前からすずみどりをスポット的に使用する、という点もポイントです。
すずみどりの設置数、場所
ハウス10aあたり、およそ5〜10個使用しています。熱がこもりやすい入口から離れたハウスの中心部付近を中心に設置しています。芽先の高さより少し上にすずみどりを設置
ハウスの上部に熱がこもりやすいため、芽先の高さより少し上に、すずみどりを設置しています。誘引する際に芽先がいつも同じ高さとなるようにしているので、位置を動かすことはありません。
すずみどりを設置して感じた効果
高温の時期のストレスが減ったのか、萎れが減り、芽先がシャキッとしました。
暑くてどうしようもない時期に設置するだけで高温障害対策ができるので助かっています。
蒸散が盛んになる分、灌水量も多くなった気がします。
収穫量は、肥培管理や天候によるところが大きいので、すずみどりの効果かどうかは何とも言えません。
暑くてどうしようもない時期に設置するだけで高温障害対策ができるので助かっています。
蒸散が盛んになる分、灌水量も多くなった気がします。
収穫量は、肥培管理や天候によるところが大きいので、すずみどりの効果かどうかは何とも言えません。