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ライター - kiko
出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、コロナ禍をきっかけに観葉植物の魅力にハマる。現在はフローリスト&グリーンコーディネーターとして勤務する傍らWebライターとしても活動中。家の中をジャングルにするのが夢です。…続きを読む

写真提供:Shabomaniac!
白い肌とロゼットが美しいベンケイソウの多肉植物ダドレア。直径60cmにも達する大型種から5cm程度の小型種までいろいろなサイズがあり、葉の形状も薄くて先の尖ったものや丸くて棒状のものなど多種多様です。この記事では、多肉植物の栽培に詳しい園芸家監修のもと、ダドレアの育て方や人気種の特徴、夏越しのコツなどをご紹介します。
ダドレアの特徴

写真提供:Shabomaniac!/プルベルレンタ
ダドレアはアメリカ南西部からカリフォルニア半島、メキシコ西部にかけて分布するベンケイソウ科の多肉植物です。全部で45〜50種が知られ、その中で広く栽培されているのは5〜6種程度です。エケベリアなどと同じくロゼット状に葉を展開し、大きくなると幹が立ち上がります。葉に白いロウ質の粉をまとう大型種が多く、真っ白に見える個体もあります。この白い粉には紫外線から身を守ったり、水分の蒸発を防いだりする働きがありますが、一度剥がれてしまうと戻らないので、できるだけ触れないよう注意しましょう。
ダドレアは葉挿しでの繁殖ができないため、外見的には似ていてもエケベリアと比べるとやや希少です。多肉植物の世界では古くから親しまれており、太く長い幹の先端にロゼットを展開する姿からコーデックス好きにも好まれています。自生地との気候の違いから栽培が難しく、特に夏越しのハードルが高いものの、うまく育てられれば非常に長生きする植物です。野生では100年近く生きる個体も存在します。
ダドレアの自生地

ダドレアの自生地は、寒流の影響で夏もそこまで気温が上がらず非常に乾燥しており、冬は平均気温が15℃程度と暖かく、雨が多く降る地中海性の気候です。海岸近くの岩の多い崖や峡谷に自生し、火山岩を中心とした多孔質な土壌で育ちます。
ダドレアの花

ロゼットから赤い花茎を長く伸ばし、先端に密集して花を咲かせます。開花時期は晩冬から春ごろです。花は1cm程度と小ぶりであまり派手ではなく、色は赤や黄色、オレンジ、白、緑などがあります。
ダドレアの入手方法・価格
多肉植物の専門店やネット通販、ネットオークションで入手できます。海外の種子業者が種子を取り扱っているので、それを個人輸入して実生で育てるのもおすすめです。価格は1,000〜2,000円程度と比較的手ごろです。大型の株は1万円以上することもあります。
ダドレアの基本情報

分類 | ベンケイソウ科ダドレア属 |
原産地 | アメリカ南西部〜メキシコ西部 |
生育型
冬型(秋春型)
耐暑性
弱い
耐寒性
普通
生長速度
早い
種をまいて4〜5年で見ごろサイズになります。
ダドレアの人気種
ダドレアは種の区別が難しく学者によって分類の仕方が違う場合もありますが、ここでは園芸用に普及している人気種をピックアップして紹介します。栽培難易度は星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど栽培難易度が低くなります。
キャンディダ(Dudleya candida)
メキシコのバハ・カリフォルニア州の北西海岸沖にあるコロナド諸島に分布するダドレアです。種小名のcandidaはラテン語で「白い」という意味があり、その名の通り非常に白みが強く個体によっては青白く見えるものもあります。ブリトニーとよく似ており、先の尖った細長い葉をロゼット状に展開する直径10cm程度の小型種です。
ブリトニー(Dudleya brittonii)

写真提供:Shabomaniac!
メキシコ半島西部の海岸砂漠が原産で、仙女杯という日本語名で知られる代表種です。この属の中では一番有名で、成株になると幹が立ち上がり、直径40〜50cmの巨大なロゼットを形成するためとても迫力があります。世界でもっとも白いとされる植物でもあり、均整の取れた真っ白なロゼットは感動的な美しさです。自生地ではほとんど白い粉がつかないタイプと混生しており、タイプ違いの同種とみなす意見もあればビリダス(Dudleya viridis)という別種として区別する見方もあります。花は黄色で花茎の先端に密集して上向きに咲きます。子株がつきにくく、種子繁殖が一般的です。
グリーニー(Dudleya greenei)

出典:PIXTA
アメリカ・カリフォルニア州の沖にあるチャンネル諸島の固有種で、ロゼットの直径が5cm程度の小ぶりなダドレアです。生長するにつれて株立ちして頂端から分岐し、群生する傾向にあります。グリーニーと見た目のそっくりなグノマ(Dudleya gnoma)という種がありますが、この2種は別種とする説とシノニム(同物異名)とする説とがあり、見分けがつかないことから混同されて流通しています。
パキフィツム(Dudleya pachyphytum)
パキフィツムはバハ・カリフォルニア半島の西側に浮かぶセドロス島の特産種です。白粉をまとった緑色の葉は肉厚で人の指のように丸く、ダドレアの中でもはっきりとした外観的特徴があります。株の直径は20cm前後になり、枝を伸ばして株立ちします。野生株は乱獲によってほとんど残っていません。パキフィツムとして流通している個体には、近縁種との交雑と思われるものも多くみられます。花は白で、短い花序の先端に密集して咲きます。
プルベルレンタ(Dudleya pulverulenta)

写真提供:Shabomaniac!
よく似た大型のダドレアです。ほぼ枝分かれせず単頭で育ち、長く育てると幹立ちして直径60cmにまで達します。メキシコのバハ・カリフォルニアからアメリカのカリフォルニア州まで広範囲に分布しているため変異の幅も広く、タイプによってはブリトニーと区別がつきにくいものもあります。識別するとすれば、ブリトニーよりもやや葉幅が広くて薄く、地の色が濃いため青白っぽく見える点がポイントです。また、ブリトニーの花は黄色ですが、プルベルレンタの花は赤く、下向きもしくは横向きに咲くのも特徴です。
ヴィレンス(Dudleya virens)
幹が分岐して頂部に細長い棒状の葉を密集させ、直径の5〜10cmロゼットを形成するダドレアです。葉の色は先端が赤みがかり、全体は緑から灰色です。ロゼットの中心から太い花茎が立ち上がり、白や赤の花を咲かせます。
クサンチ(Dudleya xantii)
ブリトニーを小型にしたような姿で、幅が狭く先の尖った長い葉が特徴です。クサンチはヌビゲナ(Dudleya nibigena)のシノニムで、今はこの学名は存在しません。
ダドレアの育て方
冬生育型のダドレアは9〜5月ごろが生育期にあたり、梅雨の時期から8月に休眠します。高温多湿の夏を苦手とするため、いかに夏を涼しく乗り切るかがポイントです。ここからは、ダドレアの基本的な栽培方法を解説していきます。
水やり
秋から春にかけてはたっぷり水を与えます。本来は最低温度10℃くらいの暖かな冬を好み、そうであれば冬中生長を続けますが、暖房のないハウスなどでは1〜2月の厳冬期は生長が鈍るので水やりは控えめにしましょう。根が凍るとダメージを受けます。
夏は休眠するので梅雨ごろから水を切ります。水を切ると下葉からどんどん枯れていきますが、もともと乾燥地帯に生えている植物なので問題はありません。心配になって水をやりたくなるかもしれませんが、水を与えても根が給水できず腐ってしまうので注意しましょう。
日当たり・置き場所
生育期は日当たりを全開にしてたっぷりの日光に当て、昼間は外に出して風に当てます。冬は最低でも5℃を保ち、霜に当てないようにします。夏場は休眠するとはいえ完全な日陰ではなく、日の当たる場所で40〜50%程度遮光し、なるべく30℃を超えない涼しい場所で管理するのが理想的です。
用土・肥料
ダドレアは多孔質の土壌に生育しているため、水はけのよい多肉植物用の用土を使用します。肥料はほとんど必要としませんが、生長期には液肥や緩効性の固形肥料を与えてもよいです。
ダドレアの植え付け・植え替え

出典:PIXTA
植えつけ・植え替えは生長期に入る9月ごろに行います。代謝がよく生長も早いので、植え替えはできれば毎年するのがベストです。夏になると根はほぼ枯れてしまうので、少なくとも2年に1度は植え替えて枯れた古い根を取り除いてあげる必要があります。
ダドレアの剪定・切り戻し
グリーニーなど旺盛に枝を伸ばす種は適宜剪定が必要です。ブリトニーやパキフィツムなどは剪定は不要ですが、茎が伸びて背丈が高くなるにつれて自重で倒れることがあるので、根元に近いところで切り戻し、挿し木にして形を整え直ましょう。また、枯れた下葉を残していると害虫がつきやすくなるので、まめに取り除いて風通しをよく管理するのがおすすめです。咲き終わった花茎もすぐに切り取りましょう。
ダドレアの殖やし方

出典:PIXTA
ダドレアは基本的に葉挿しができません。胴切りしても根元から発芽しないので、種子繁殖が普通です。自家受粉するので種は採りやすく、播種から4〜5年で鑑賞サイズになります。
ダドレアの病気・害虫

日当たりや風通しの悪い場所で管理しているとカイガラムシがつくことがあります。害虫を発見したらすぐに駆除し、用土に薬剤を混ぜて予防しましょう。
ダドレアに関するQ&A

写真提供:Shabomaniac!/ブリトニーの夏越し後
下葉が枯れる
温度管理に注意していても夏は半分以上の葉が枯れてみすぼらしい姿になってしまいます。もともと日本の蒸し暑い夏が苦手な植物なので、下葉が枯れるのは仕方がありません。秋からはワッと新葉を出して復活するので、厳寒期を除き春まではたっぷり水やりして元気に育ててあげてください。
白い粉が取れてしまう
葉についている白い粉は触ったり水をかけたりすると簡単に取れてしまいます。水やりの時は根元の方にかけるか、腰水で下から給水させてあげるとよいでしょう。ロゼットの中に水が溜まると腐りやすくなるので、腐り防止のためにも腰水はおすすめです。ただし水に浸しっぱなしにするのではなく、給水が済んだらすぐに水から鉢を引き上げましょう。
栽培での注意点は?
見た目が似ているエケベリアとの生育期の違いに注意しましょう。エケベリアの大半が春秋型なのに対し、ダドレアは冬生育型です。ダドレアは日本の高温多湿の夏に弱いので、温度管理は特に丁寧に行ってあげてください。また、生長が早いので植え替えもできるだけ毎年行いましょう。夏にダメにやりやすいので、種を採って殖やしておくと安心です。
ダドレアを育ててみよう

出典:PIXTA
ダドレアは高温多湿を苦手とするため、日本での夏越しは少し難しめです。ほとんどの葉が枯れてしまっても根が生きていれば秋に復活してくるので、じっくり見守りながら育ててあげてくださいね。パウダーは簡単に取れてしまうので、水やりの際は葉に直接かけないよう注意して、真っ白な美しい葉姿を楽しみましょう。