クリスマスの植物をめぐるストーリー。ツリーとポインセチア|アメリカ生活アグリ日誌Vol.4

【連載】アメリカ在住日本人家族が体験した農業イベントや、現地の「食・農」に関する情報をレポートするコラム「アメリカ生活アグリ日誌」。 第4回のテーマは「クリスマスの植物をめぐるストーリー。ツリーとポインセチア」。 ニューヨーク・ロックフェラーセンターの巨大クリスマスツリーやこの季節に欠かせないポインセチアの物語をご紹介します!


ポインセチア
出典:Pixabay
アメリカ在住の筆者が現地の農場や食、ガーデン事情を不定期でレポートします。違った視点から見ると、何か新しい発見があるかも!?
前回は11月末のサンクスギビング・デーならではのお祝い料理を取り上げました。
今回は世界中の大イベント「クリスマス」に欠かせない2つの植物について、アメリカでの様子も交えてお伝えします。

生木のクリスマスツリーが人気!アメリカのツリー事情

Christmas tree farm
撮影:Miyuki Tateuchi
皆さんのお家では、クリスマスに毎年ツリーを飾っていますか?
ツリーの由来は、常緑樹が冬に枯れないため「永遠の命」の象徴とされていたところから始まります。キリスト教ではそこから「神の永遠の愛」を意味するものに。なかでも「もみの木」は三角の形から「三位一体(神である父、精霊、子であるイエス・キリスト)」の考えに結びついて定番となりました。

アメリカでは家の天井が高いからか、お店に行くと6〜7.5フィート(約180〜230cm)くらいの大きなものを見かけます。各地では11月半ばくらいから「クリスマスツリーファーム」なるものが登場。天然素材にこだわりがある人は、生木のツリーを農場まで出向いて購入します。

クリスマスのスタートはここから。自分のツリーを発掘する

tree farm
出典:Pixabay
私が行ったところではあらかじめ切ってある木の中から選ぶ形でしたが、まだ土の中に植えられているツリーをその場で切り倒してもらえるファームもあります。

木の種類は、モミの木のほか、トウヒやオウシュウアカマツも。木の高さや色(濃い緑かやや青みがかっているか)、香りなどの一般的な評価軸に加え、針葉の長さ、葉が木から落ちにくいか、オーナメントの重さに耐えられるか、形は左右対称でスラリとした方がいいのか、全体的にボテッとした方がいいかなど、お客さんのいろいろな好みに対応できる品揃えになっています。

気になるお値段は木の大きさや種類によりまちまちますが、私が見た限りでは70ドル(約7,000円)くらいからが相場(参考:2020年12月現在、1ドル約104円)。
ワンシーズンしか使えない季節ものと考えるとちょっと高い気もしますが、天然ならではの香りやその年ごとに木の変化を楽しみたい人は多く、人気があります。

クリスマスシーズン前の風物詩?!

tree car
出典:Flicker(Photo by Kaija)
そして、ちょっとした風物詩がこれ。車の屋根に載せられているツリーです。
ツリーファーム帰りの車はこんな感じで自家用車で木を持ち帰ります。簡単にひもでくくってあるだけで、初めて見かけた時は「落ちないか」と思わず二度見してしまいました。

生木である分、持ち帰った後のケアは必須です。暖房の吹出口付近を避け、水をたっぷりあげると1カ月くらいは楽しめます。

寒空の下を歩きたくなる!イルミネーションの風景

rockefeller tree
出典:Flicker(Photo by Ennoti)
ツリーにまつわるストーリー、もう一つの楽しみがツリーのイルミネーション。暖かそうな家の窓辺で明るい光を灯している様子は今も私のちょっとした憧れです(マッチ売りの少女か!?)。

こちらの由来は、16世紀に宗教改革で有名なドイツのルターが木々の間から見える星に感動し、子どもたちに見せようと、もみの木をろうそくで飾ったのが始まりだったとか。肖像画の印象からルターには厳格なイメージを勝手に持っていましたが、実は子煩悩な一面もあったのですね。

大都市では、街の中心地に立てられるツリーとイルミネーションが季節を代表する風景となっています。点灯式で有名なニューヨークのロックフェラーセンターの場合、使われる電球はなんと5万個。寒くても、明るい電気を見ると心が温まり、光からパワーをもらえる気がします。

そして、使われるのは本物の木です。今年のものは、樹齢75年超、高さ75フィート(約23メートル)、重さ11トンの大木だとか。移送後に木の中からフクロウが保護されるという驚きのニュースもありました。

クリスマスが終わった後のツリーの行方は?

飾り終わった後の木は、環境保全の高まりから無駄にはされていません。Habitat for Humanity(ハビタット・フォー・ヒューマニティ)という住宅支援を行う国際的なNGOに寄贈され、困っている人のための家を建てるための木材として有効活用されています。

クリスマスツリーがドリームハウスになるとは、なんともすてきなクリスマスストーリーですよね。
一般家庭で使われたツリーも多くの自治体が回収を行っており、コンポスト(堆肥)として再利用されています。

ポインセチアにも面白いストーリーが。クリスマスフラワーの立役者は誰?

ポインセチア 栽培
出典:Pixabay
この時期のもう一つの代表的な植物がポインセチアです。
クリスマスカラーの赤も緑も持っているポインセチア。鉢植えを1つ置くだけで部屋が華やぎ、いってみればクリスマスのためにあるような植物なのかもしれません。

原産地はメキシコ。この時期に出回る植物のため寒さに強いイメージがありますが、実は温暖な気候を好む植物です
日本でも宮崎県日南海岸堀切峠付近に約5万本のポインセチアが植えられており、毎年、観光客の目を楽しませています。

この植物、ストーリーには事欠きません。ポインセチアにまつわるお話をいくつか紹介します。


メキシコでの名前は「ノーチェ・ブエナ(聖夜)」

本場メキシコでは、ポインセチアのお話として、こんな伝説が伝わっています。

クリスマス・イブの日、貧しいファニータという女の子が教会に捧げる贈り物がないと困っていました。
それを見て、いとこは「心からの贈り物であれば何でもいいんだよ」と励まします。
そこで、ファニータには周りの緑の草を集めて小さなブーケを作り、神に捧げました。ブーケは突然真っ赤な花に変わり、人々はその奇跡を讃えました。

クリスマスにぴったりのすてきなお話ですね。今はなかなか手に入りにくいようですが、「ポインセチアはまほうの花」という絵本も出版されています(細かい設定は上で紹介したお話と若干変わっています)。

ITEM
ポインセチアはまほうの花―メキシコのクリスマスのおはなし
著 者:ジョアンヌ・オッペンハイム
絵  :ファビアン・ネグリン
翻 訳:宇野和美
出版社:光村教育図書
発行年:2010年

宗教色が多少強いお話ですが、そこはメキシコの風習ととらえて、物語の中に流れる人々の思いやりが伝わるお話です。作者あとがきや、奥付のポインセチアについての説明まですべて子どもと一緒に共有すると良いのではないかと思いました。


名前の由来はアメリカ人のメキシコ公使から

poinsettia
出典:Flicker(Photo by mauro halpern)
ポインセチアの名前は、1825年にアメリカの初代メキシコ公使に任命されたジョエル・ロバーツ・ポインセット(Joel Roberts Poinsett)にちなんでつけられています。
メキシコでこの植物を初めて見たポインセットは魅了され、いくつかの株をアメリカに持ち帰りました。アマチュアの植物学者でもあった彼は、自分の温室にこの植物を植え、周りの人々にも紹介しました。
ちなみに、アメリカでは12月12日が彼の命日であることから”National Poinsettia Day(全米ポインセチアの日)”となっています。

世界シェア90%達成!ポインセチアをビジネスにしたある一家

ecke poinsettia
出典:Flicker(Photo by cultivar413)
「全米ポインセチアの日」は、ポインセチアを広めるのに貢献したアメリカ人ポール・エッケ・ジュニア(Paul Ecke Jr.)の栄誉を称えるために制定されました。
この一家が経営していた農場は、最盛期にはポインセチアの世界シェア90%という驚異的な数字を持っていました。

スタートは1920年代初め。先代のエッケSr.がカリフォルニアで周りの農場との販売競争が激しくなってきたのをきっかけに「人と違うことをやろう」と、冬にポインセチアの切り花を売り始めます。

1960年代には、息子のJr.が雑誌社やテレビ局に自社のポインセチアを無料で配布。メディアでの露出を増やすマーケティング戦略が成功し、「クリスマスといえばポインセチア」の図式を作り上げました。

優れた技術とビジネス競争の波

ecke poinsettia
出典:Flicker(Photo by cultivar413)
エッケ家のポインセチアは、絶え間ない研究により多くの生産面での工夫がなされました。

元々大きく育つ植木をコンパクトな鉢植えにしたこと。雑誌の撮影のタイミングに合わせて、夏に花を咲かせることも可能にしたこと。接ぎ木により他社より見栄えが良く、輸送にも耐えられる丈夫な品種を育てることにも成功しました。

ところが、1992年に三代目のPaul Ecke IIIがビジネスに加わったタイミングで、今まで企業秘密だった技術をある大学院生が特定、論文で発表します。技術的な優位性は失われ、その後ヨーロッパとの価格競争もあり、世界シェアは50%にまで落ち込みました(それでも圧倒的な存在感ですが)。

エッケ家は生産拠点をグアテマラに移すなどの企業努力もしましたが、2012年に三代目がオランダのアグリバイオ社にビジネスを売却する決断をしました。
その後、アグリバイオ社はドイツ企業と経営統合、ブランド名を「Dümmen Orange」に統一し、今に至っています。

ファミリービジネスの領域では収まらずに、世界的なビジネスにまで成長したポインセチア。
一家の手からは離れてしまいましたが、今もポインセチアはクリスマスにはなくてはならない花となっています。

品種も増え、今ではさまざまな色のものがあります。定番の赤に飽きてしまった人はほかの色を試してみるのもいいですね。
クリスマスが終わった後の管理方法についてはこちらの記事を参考にしてください。色づく部分は花ではなく、「葉(苞葉)」とは知りませんでした!


クリスマスは、元はといえば「太陽の復活をお祝いするヨーロッパの冬至のお祭り」が起源ともいわれていますが、この気持ち、北国のミシガンにいるとよくわかります。12月に入ると曇天が続き、太陽が出ないと一日中夕方モードのような毎日なのです。私も太陽の明るい姿を心待ちにしています。
それでは、皆さん良いクリスマスを!

次回は、新年ならではの「毎日の食べ物を見直してみる」企画を予定しています。パッケージから垣間見えるアメリカの食や最近のトレンドについても触れたいと思っています。

バックナンバーはこちら

「アメリカ生活アグリ日誌」

 

Miyuki Tateuchi プロフィール
就職情報会社、外資系人事コンサルティング会社を経て、2017年よりアグリコネクト株式会社でリサーチ業務に従事。2019年より夫の転勤に伴い、アメリカのミシガン州在住。成長期真っ只中の2児の母。農業と地域、世界の料理などへの興味を元に、情報発信していきます。

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Miyuki Tateuchi

現在、アメリカのミシガン州に居住中。海外の農業情報や普段の生活を通して感じた食農トピックを紹介します。祖父が農家だった影響もあり、四季折々の「旬」を大切にしたいと思っています。

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