今回は、家族が集まる一大イベントのサンクスギビングと、その代表的な料理をご紹介します。
これまでの「アメリカ生活アグリ日誌」
饗宴という言葉がぴったり。サンクスギビングって何?
その歴史的は1620年にさかのぼります。イギリスからアメリカのプリマスに入植したピルグリム・ファーザーズが食料不足の厳しい冬を越した後、先住民にトウモロコシなど穀物の栽培方法を学び、翌年の秋に無事収穫できたことをお祝いしたことが起源です。
当時の記録では、祝宴はお世話になった先住民も招き、3日間続いたとか。今もこれにならい、家族や友人が集まり、数々の定番料理を食べる年中行事となっています。
ディナーは驚きの4,500キロカロリー!これがコース料理の定番
テーブルに大皿料理が並ぶ中、家族の久しぶりの再会に、ついつい食が進んでしまいます。でも食事も楽しみのひとつ!ここからは定番の料理を紹介します。
ターキー(七面鳥)のロースト
おいしさのコツは、肉がパサパサにならないようにすること。ハーブ入りの塩水に漬け込む代わりにバターを塗るレシピもあります。
日本では輸入ターキーが多いなか、北海道滝上町、石川県輪島市、高知県中土佐町大野見地区が主要な産地となっています。一羽ごと入る大きいオーブンが一般家庭にはなかなかないので調理が難しいですが、半身だけでも気分が味わえるかもしれませんね。
スタッフィング
材料はニンジン、タマネギ、セロリなどの野菜のほか、ナッツやリンゴ、ドライフルーツを使い、さいの目に切ったパンと混ぜ合わせます。
ボリュームが欲しい時は、ひき肉やベーコンも加え、オーブンで焼き上げます。詰め物の場合には、「肉の中に肉?」と思いますが、ターキーはあっさりしているので、ベーコンくらいの脂加減があってもしつこくありません。
クランベリーソース
栽培風景がまた美しく、水田のように水を張った畑が収穫時にはクランベリーで一面真っ赤に染まります。Eテレの番組「0655」に出てくる「クランベリーの赤い実」の歌でご存知の方もいるかもしれませんね。
日本では大規模には栽培されていませんが、鉢植えで育てることも可能です。きらりとした光沢のある実は宝石のように美しく、観賞用としてもおすすめです。
芽キャベツのロースト
英語名は”Brussels Sprouts”というように、原産地はベルギーのブリュッセル。日本語の別名で「子持ちカンラン」と呼ばれるように、1つの茎に50〜60個の球が鈴なり状につきます。
日本では、全国の生産量の約9割が静岡県で生産されています。ご家庭でも栽培できますので、AGRI PICKの記事を参考にしてみてくださいね。
インゲンのキャセロール
サンクスギビングにこの料理が登場するようになったのには仕掛け人がいました。1955年に、スープで有名なキャンベル・スープの従業員が自社のクリームマッシュルームスープを使ったレシピを考案したのがきっかけです。
意外と歴史は浅いですが、インゲンという身近な野菜を使って簡単にできる料理だったため、新定番となりました。オリジナルレシピでは、市販のフライドオニオンをトッピングしています。
マッシュポテト・グレービーソース添え
これに添えるのがグレービーソース。意味は「肉汁」で、ターキーを焼いた時に出た肉汁に小麦粉を加え、とろみが出るまで火にかけて作ったソースです。レシピによって、ワインやケチャップ、炒めたタマネギを加えたりします。ダマにならないように、ゆっくりとかき混ぜながら作るのがコツ。
これがあると、マッシュポテトにソースがからみ、なめらかな食感で食べやすくなります。ぱさつきがちなターキーにかけて一緒にいただくこともあります。
サツマイモのキャセロール(マシュマロのせ)
こちらの料理(デザート?)にも仕掛け人がいて、1917年にマシュマロのメーカーがいろいろな食べ方を提唱する料理本を発行した時のレシピに掲載されていたのが最初ということです。
バーベキューでもマシュマロを焼くとおいしいですよね。ほんのり焼き色がついていて、トロトロとしている食感がたまらない味です。
パンプキンパイ
そして、この味をひきたてるのがスパイス。シナモン、ジンジャー、クローブ、ナツメグなどが入り、少しピリっとする味になっています。アメリカでは秋になると、この「パンプキン・スパイス味」なるものがいろいろなところで登場します。クッキーなどのお菓子だけでなく、スタバではパンプキン・ラテが人気です。
パイの種類は、パンプキンのほかにもリンゴやピーカンナッツを使ったものなど、州によってさまざまです。
日本にも通じるものがあるサンクスギビング。スポーツ観戦も欠かせない
お料理のほかにスポーツも欠かせません。日本でもお正月に箱根駅伝があるように、アメリカでは、サンクスギビングにフットボールの試合をTV観戦することが多いです。準備が大変なことからHoliday Stress(ホリデーストレス)という言葉もあるくらいですが、おいしい料理をいただきながら、ゆったりした気分でくつろいで過ごす時間は最高ですよね。
我が家では、昨年は「食べ切れない」と、パックに入ったターキーを温めただけでしたが、今年はフルコースに挑戦してみようかな。アメリカ式に、ターキーとデザートは夫の担当とか、役割分担して作るのもよいかも。そして、アメリカではチャリティーが盛んな国らしく、レストランや教会で、困っている人に無料でサンクスギビングの食事を提供しているのをよく見かけます。すべての人が収穫の喜びを感じられるように、心温まる取り組みだと感じました。
気がつけば、年末の足音も聞こえてきましたね。次回はクリスマスツリーとポインセチアについて、アメリカでの様子も含めながら紹介します。
Miyuki Tateuchi プロフィール
就職情報会社、外資系人事コンサルティング会社を経て、2017年よりアグリコネクト株式会社でリサーチ業務に従事。2019年より夫の転勤に伴い、アメリカのミシガン州在住。成長期真っ只中の2児の母。農業と地域、世界の料理などへの興味を元に、情報発信していきます。