栽培方法もグラデーション!|おしゃれじゃないサステナブル日記No.3

【連載】農業・食コミュニケーターとして活動する 紀平真理子さんの「農業と環境」をテーマにしたコラム「おしゃれじゃないサステナブル日記」。第3回は「栽培方法もグラデーション!」
有機農業と慣行農業は対立関係?そんな構図も少しずつ変わり「ハイブリッド」の時代がやってくるのかも!?


栽培はグラデーション

出典:shutterstock
前回記事「オーガニックは環境にいいと信じていたのに…」でも少し触れましたが、恥ずかしながら「有機栽培は小規模経営で、少量多品目」「慣行栽培は大規模経営で、大量単一作物」だと、なぜか勝手にフレーム化して思考停止をしてしまっていました。今回は、そんな過去を内省します。


有機栽培は小規模で、少量多品目?

オーガニック圃場
写真提供:maru communicate 紀平真理子
オランダ在住時にオーガニックや自家採種をうたう市民農園でボランティアをしていたからでしょうか。「有機栽培は少量多品目」のイメージを勝手に持っていました。いわゆる「ビジネスオーガニック」といわれる農場にも訪問していたのにもかかわらず!

オーガニックファーマー
写真提供:maru communicate 紀平真理子
これは、オランダの有機栽培農家を訪問した時に撮影した写真です。トウモロコシの収穫に使用するハーベスターは、購入すると40万ユーロ(約5,000万円)もするため、「コントラクター(収穫などの作業を請け負う業者)」に機械とオペレーター(作業者)を委託しています。

同農場は、90haで6〜12輪作を採用してジャガイモ、スペルト種小麦、ニンジン、タマネギ、ブロッコリー、キャベツ、甜菜、ハーブ類などを栽培していました。比較的多品目ではありますが、決して小規模で少量ではありません。ちなみに、顧客直送もゼロで100%卸売業者に販売し、EU各国のスーパーマーケットなどで販売されています。

ほかにも何軒か大規模な有機栽培農家を訪問しているにもかかわらず、そんな記憶をもデリートして「有機は小規模」だと思っていました。多くの忘却なくしては人生は暮らしていけないのでね。


慣行栽培は大規模で、大量単一作物?

オランダ農機
写真提供:maru communicate  紀平真理子
慣行農家は大規模で機械化されていて大量生産で単一作物だと考えてしまうのもいささか極端ですが、そう思っていたのです。思い込みは怖い!ちなみにこれが悪いとはいうことは決してなく、産業としての農業を実践しながら、その中で自然環境との調和にもがき苦しんでいる人がたくさんいることも知っています。

有機栽培は、「化学的に合成された肥料や農薬を使用しない」「遺伝子組換え技術を使用しない」「農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する」農法のことです。つまり、定義上は「基本的には化学肥料や化学農薬を使用していたら有機栽培ではない=慣行栽培」ですが、「農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減」を実現する方法は、一つだけではないのではないでしょうか。

例えば、「環境に配慮した農業」を目指すのであれば、必要に応じて化学肥料も使用し、必要に応じて農薬を使用するという選択肢も十分にあり得るのではないでしょうか。有機資材と化学肥料のハイブリッドもありでしょう。また、慣行栽培で少量多品目もありですし、有機資材に加えて化学肥料や農薬を使いながらいわゆる「循環型農業」を実践している人もいらっしゃいます。(循環型農業については、また今度!)
美味しい枝豆
写真提供:maru communicate  紀平真理子
選択肢が一つでないのは流通についてもいえることで、有機栽培でなくても、100%直接顧客へ販売することも。この枝豆はおいしかった!

栽培方法もグラデーションで考えたい

グラデーション
出典:shutterstock
有機vs慣行を白と黒で考えることを、一度やめてみませんか?オランダで訪問した中で、小規模で慣行栽培経営をしている人はいませんでしたが、100ha規模の農業経営でも、土壌分析のうえで作物が必要とする豚ふん堆肥を一部と化学肥料を併用し、畑作をしている慣行農家もいますし、大規模経営の有機栽培農家は日本にもいます。

白と黒ではなく、脆さと強さが混ざりあうグラデーションで考えてNICE CHOICEをしていきたいものです。ちなみにどちらが黒ということはないです。個人的には黒色が好きです。

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紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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