これまでの「ハッピーファミリーファーマー日記」
稲の生長・草の生長・生き物の成長と草取り
米の無農薬栽培と減農薬栽培をしている我が家。無農薬栽培の田んぼにはアイガモやコイを放し、減農薬栽培の田んぼには田植え直後に一度だけ除草剤を使う、という話( No.12:アイガモちゃんの田んぼデビュー )は紹介しましたが、そのどちらの田んぼにも、やっぱり雑草は生えます。そうなると人間の出番です。人間の手で草取りをするしかない理由
1. イネ科のヒエや繁殖力の強いイグサ系の草は、アイガモが好まない2. コイは水深が浅いところには行ってくれないので、そこは一面お花畑のようになる
3. 除草剤は初期除草にしかならないので、後発組が出始める
というわけで、梅雨明けに「中干し(なかぼし)」といって一旦田んぼの水を抜くまでは、雨の日も風の日も草取り三昧の日々です。
草取りは癒しの時間?
暑い日などは特に、体力的にはきついですが、YouTubeやポッドキャストで聞きたかったセミナーや音楽を流しながら黙々と草取りをするのは、ちょっとした瞑想とかヒーリングタイムのようで、嫌いじゃないかもしれません。オタマジャクシがカエルに成長するまでの、あらゆるステージを観られるのもおもしろいし、しなる稲を登ろうとする果敢なカエルを見つけたときは、思わずゴム手袋を外してまで写真を撮ってしまいました。
草取りを誰とするか
草取りはほぼ毎日続く作業なので、その時々でメンバーも会話も変わり、過ごす時間の中身が変わります。1人で草取りをするときは会話はしないので瞑想時間。夫とするときは普段話せないことを話せる貴重な夫婦の時間。春先から長期滞在している女子大生たちとするときはカウンセリングの時間。南阿蘇村に引っ越してきて「地域おこし協力隊」に就任したばかりの青年とは、親睦を深める時間に。
なかなか多様性や示唆に富んだ時間が持てるのが、草取りだったりするわけです。
カエルじゃなくて草を取りなさ~い(笑)
娘が通っている「森のようちえん」は、週4日が活動日。週に1日は平日も家にいる末娘は、農作業をわりと一緒にしてくれていた3人の息子たちとは反対に、普段から泥んこになるのを好まず、1人だとなかなか田畑に入ろうとしません。でもお友達がいれば、話は別。1人より2人、2人より3人、ということで、森のようちえんのお友達に声をかけて、3人で草取りをすることに。ついに、未来の担い手(?)の園児たちも参戦です!
が、予想通り、彼らにとっては草取りよりカエル捕りの方がはるかに魅力的。不運なカエルたちは、3人の園児たちに追い回されていましたが、カエルが子守りをしてくれている、と考えればそれもまた農村ならでは。ときどき思い出したように草を取ってくれただけでも、子どもたちに感謝です。
ハートがいっぱい!? やっぱり最後は愛だよね
田んぼから帰宅すると、家の周りも草だらけ。ふと目に留まったのは、お茶の木に絡みつくハートの葉。いやん、取りづらいじゃない♪新型コロナウイルスや自然災害、国際紛争で大変な状況ですが、「やっぱり最後は愛が大事だよね」なんてことを思い、ついつい残してしまいました。後で後悔するんだろうな…(笑)。月間連載のコラムも掲載中!
【毎月更新!】月間連載アーカイブ「農業なくして持続可能な社会なし」【週間連載】家族経営農家の日常を配信「ハッピーファミリーファーマー日記
大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」