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アイガモちゃんの田んぼデビュー|ハッピーファミリーファーマー日記 No.12


田植えは苗を田んぼに植えて終わりではありません!除草のための強力な助っ人とは? 大津愛梨さんの熊本での家族経営農家の日常を、生き生きした写真とともに知れる貴重な連載。「家族農業」を通じて、子育てや環境、教育などの新たな考え方が発見できるかも。

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大津 愛梨

慶応大学環境情報学部卒業後、夫と共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里の南阿蘇で農業後継者として就農、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培している。女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長、里山エナジー(株)の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。農業、農村の価値や魅力について発信を続ける4児の母。…続きを読む

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田んぼの中で泳ぐアイガモ

提供:O2Farm
熊本の米農家の母ちゃんが、日々の農作業や生活だけでなく、農業を通じてできる持続可能な環境作りや子育て、家族のことなどを週一で発信します。
これまでの「ハッピーファミリーファーマー日記」

田植えが終わってからも待ったなし

カラス除けのネットを張る女の子
提供:O2Farm
我が家は、1回も農薬を使わない無農薬栽培と、初期に一度だけ除草剤を使う微農薬栽培の2種類をしています。そのため、農薬を使わない田んぼでは、農薬の代わりにアイガモやコイを入れて雑草の生長を抑えるのですが、それぞれに準備が必要です。

アイガモを入れる農薬を使わない田んぼ:カラス除けのネットやテグスを張り巡らせる
コイを入れる田んぼ:サギ除けのネットをかける
初期に除草剤を使う田んぼ:天気予報とにらめっこしながら雨で流れない日を選んで薬を使う

いずれにせよ、初期除草が肝。どの作業も結構しんどく、これを終えないと一段落がつかないので、田植えが終わってホッと一息ではなく、田植えが終わった後もピリピリムードは続きます。

コイの“恋”とアイガモの“愛”で、恋愛農法!

米の発送準備をする親子
提供:O2Farm
我が家が所属している「南阿蘇村おあしす米生産組合」は、30年近くも前から無農薬・減農薬のお米を産直してきた歴史ある団体。
農薬を使わない田んぼには、アイガモかコイを入れるのが組合の規定で、その名もアイガモの“愛”とコイ“恋”をかけて「恋愛農法」。当時の若手農業者たちが知恵を絞って取り組んだ無農薬栽培の方法で、30年経った今でもキャッチーなネーミングだと思います。
20軒の農家がガイドラインに沿って栽培したお米を、それぞれの農家が収穫・袋詰めまでして、直接自分のお客様にお届けしています(共同販売ではありません)。

アイガモとコイの使い分けについて

アイガモは草も虫も食べる万能選手ですが、集団行動をするため、たまり場となる部分の苗を倒してしまいます。面積が大きい田んぼだったらちょっとぐらい構わないのですが、小さな田んぼにアイガモを入れると収穫量がぐっと減ってしまうので、我が家の狭い田んぼにはアイガモではなくコイを放します。

一方、コイは草を食べないのですが、田んぼの中を泳ぐことで常に水が濁り、水面下の草が伸びるのを妨げる、という理屈。お米以外の作物を作っていて田んぼ以外にやることが多い農家の中には、アイガモと違って毎日エサをあげる必要がないコイだけを使うメンバーもいます。

アイガモの田んぼデビューは「キョトン」から

田んぼに入る前のアイガモたち
提供:O2Farm
アイガモは、生まれたその日に(体内に栄養分が残っているため)箱に入って送られてきます。あまりに小さくて外敵に対して無力なので、2週間ほど自宅の庭にあるビニールハウス内で育ててから田んぼに放します。その間に、田んぼの周りにネットを張ったり、夜の間に外敵にやられないよう入れておく小屋を準備をしたり。

田んぼデビューの当日、アイガモたちを田んぼに連れていくと「キョトン」として動きが止まります。どうしていいのか、わからないのでしょう。タジタジして水を怖がっているようにさえ見えます。水鳥なのに(笑)。

まだまだ作業は続く…

一旦田んぼに入ってしまえば、夢中になってオタマジャクシやアメンボを追いかけて容赦なく食べていきます。実はアイガモは、草よりも動物性たんぱく質が大好き。夢中になり過ぎて、アイガモのチビたちを狙っているカラスに気が付かなくてやられてしまうことも。
田植え前に切ったのにまた伸びてきている畔草(あぜ道の草)は、カラスの見回りをするときにじゃまなのと、田んぼに日かげを作ってしまうので、アイガモデビュー後の1~2日は、田んぼの周辺で畔草を切る作業をします。

カラスを見張る女の子
提供:O2Farm
今年は、兄貴たちのエアガンを4歳の娘が持ってきて、凄腕スナイパーのように見守ってくれていました。

次はコイ!アイガモより地味だけどがんばってね

田んぼの中で泳ぐコイ
提供:O2Farm
一方、コイは10〜15cm程度の稚魚が隣の鹿児島県から到着。着いたらすぐに田んぼに放し、それ以降は姿を見ることすら稀です。猫やサギ(鷺)が狙いに来ますが、ここ数年は水面から1mぐらいのところにネットを被せているので、あまりやられずに済んでいます。

アイガモもコイも、「中干し」といわれるガス抜き前までが就労期間。役目を終えた後どうするかが、特に熊本地震以降の課題なんですが、その話はまたいずれ。まずはしっかり働いてもらおうと思います。頑張ってね~。

月間連載のコラムも掲載中!

【毎月更新!】月間連載アーカイブ「農業なくして持続可能な社会なし」
【週間連載】家族経営農家の日常を配信「ハッピーファミリーファーマー日記」

大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」

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