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就農の夜明け・自力でマイハウス【わたしの農業漂流記#4】


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はる農園

はる農園 千葉県印西市で無農薬の野菜を作る農家。その他、狩猟、養蜂、木こり、大工仕事など、風土づくりをテーマに活動中。 facebook : https://www.facebook.com/inba.vege.farm/ instagram : harunoen84…続きを読む

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強風の中でビニールハウスを建てる

イラスト:久万ふくろう
連載更新!千葉県印西市で「風土づくり」をテーマに活動する無農薬野菜農家、はる農園の園主がつづるコラムをお届けします。
このシリーズは、サラリーマン家庭出身!独身!女性!である「はるさん」が、農業法人勤務後、独立就農を果たし、自分なりの農園を築いてきた農業漂流記。
第4回は、借りた農地に一人でビニールハウスを建て、生産のベースを築くまでのお話。

ここまでのお話はこちらから。

夢のマイハウス

電気、井戸をどうにか設置することができた、私の農園。一般的な農機もある程度整ってきましたが、ただ一つ手に入れていない農家の神器がありました。
ビニールハウスです。

農園のある千葉県は冬でも露地栽培が可能な恵まれた地域ではありますが、やはり1~3月はハウス栽培の野菜が品質が良く、安定しています。夏はトマトなど露地での栽培が難しい野菜も作ることができます。それだけでなく、夜も作業できる作業場用のハウス、井戸を最大に活かせる育苗ハウス、倉庫代わりの遮光ハウスなど、農家にとってビニールハウスは生産から出荷までを担う重要施設なのです。

ハウスを建てるといくらかかるの?

私が就農した地域は離農する人が増えていたこともあり、使われていないビニールハウスを見かけることがありました。こっそり観察してもシンプルな構造のものがほとんど。まったくの素人の私にとっては、どう見ても「30mハウスを業者に依頼して新しく建てると1棟120~150万かかるのが一般的」ということが信じられず、とりあえず、自分できるところまで作ってみることにしました。

ハウスを探して三千里

ハウス建てに使う材料も新品ではなく、まずは中古を探しました。農地探し同様、知り合いや農家の先輩に「いらないハウスを解体しているところがあれば、資材を全部引き取りたい」と話したり、市内を車で走るときは必ず使われていないハウスや解体現場がないかを気にしながら、血眼で運転したりしていました。新築ハウスの金額を知っていただけに、あのときは必死だったと思います。

捨てる神との遭遇

ハウスの骨組みをもらう
イラスト:久万ふくろう
ハウス探しを始めて数カ月、農道を走っていると、ちょうどハウスを解体しているおばあさんを見かけました。40mほどのハウスですが、資材の傷みも少なくまだ使えそうな状態でした。初対面ではありましたが、図々しくも話を聞くと「ここまで解体したけど、これを捨てるために業者に持ってってもらわないといけない、持っていかないかい?」という一声が!まさに、捨てる神との遭遇でした。
その場で、資材を全部引き取らせてもらう約束をして、実質ただで40mハウスの資材を手に入れることができたのです。

冬の2カ月をかけてハウス建て

ハウス用の資材は用意できましたが、実際に建てた経験がまったくない私。とりあえず、自分で調べて、やってみて、できなかったら他の農家さんに手伝ってもらおうと、気軽に考えていました。インターネットで調べた情報や実際に立っているハウスの観察を頼りに、冬場の2カ月間、野菜の栽培や出荷の片手間に少しずつハウス建てを進めていきました。


骨組み完成とともに身体崩壊、ついにあの病に

病院で倒れる
イラスト:久万ふくろう
初めのうちは「妻面」「ピッチ」「直交ジョイント」などわからない単語だらけで、自分だけでハウスの骨組みを組むのは難しいかと思っていたものの、やはり構造がシンプルだったので骨格は全て一人で完成させることができました。

そんな骨組み完成直後のある朝、私の体に異変が生じます。内臓をえぐられるような痛みで身動きが取れなくなり、嘔吐も止まりません。どうにか這い上がり病院へたどり着いたものの「総合案内」のカウンター前で力尽き、そのまま倒れこみました。どうにか車いすに乗せてもらい診察を受けて、お医者さんから衝撃の病名宣告。

「ぎっくり腰ですね」

軽過ぎる病名のカウンターパンチに動揺していると、「どうして来たんですか!!寝てなきゃだめですよ!」と立て続けにジャブをもらいました。その後もお医者さんは「あ、でも、もしかしたら…」と一気に曇った表情を見せ期待させたかと思うと「嘔吐は妊娠かもしれません!いっそ産婦人科も受診してきます?」という軽快なフェイントからのボディーブローで、完全に私をノックアウト。
「ハウスさんとはお付き合いしていますが、骨組み以上、完成未満の関係です」と嘆きながら、とぼとぼ帰宅し、その後10日ほど自宅休養しました。


    最後のビニール張りは風向きを読んで

    無事、腰も折れた心も回復し、作業を再開した私は、一人では難しいといわれている最後のビニール張りに挑みました。30mほどの大きなビニールを高さ3mほどの高さのハウスに被せて留めていくのですが、風が強いとビニールが飛んだり、ずれたりしてうまく張れないのです。そのため、朝の風が弱い時間帯を狙って、風向を読み、バタつかない方向を考えながら張っていきました。気温が上がっていくと風が強くなるので時間との闘いでしたが、無事に張り切ることができました。

    結局一人でできてしまった…

    何も無理をして一人でやるつもりはなかったのですが、多少の紆余曲折はあったものの、気が付いてみれば30mハウスを一人で完成させることができていました。5年経った今でも、このハウスは雪や風にも負けず健在です。この経験が自信となり、作業場ハウス、育苗ハウス、倉庫用の遮光ハウスも自分で建てました。自分の農園だけでなく、最近では周りの農家さんのビニール張りやハウス建てで呼ばれるようになっています。

    何事もまず自分でやってみるという精神

    一人でハウスを建てる人はなかなかいないということは、建てた後に知りましたが、農業では往々にして「何事も悩む前にまずやってみる」という精神が大事なのかもしれません。実力や自信はその後からついてくるのでしょう。周りの農家さんを見ていても、人の話は半分くらいで、自分なりのやり方を磨いているというタイプが多いように思います。

    私の農園でも研修や体験は可能ですし、ほかの団体でも同じように募集があります。農業をやってみたいと思う方はぜひ今踏める一歩は今踏んでおくという軽い気持ちで研修や体験に参加してみるといいかもしれません。

     

    はるさんのコラムはこちらでも!
    となりのヤサイさん
    つれづれ・のら日誌

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