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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
1. 自分で苗を育てるメリットは?
トマト、ナス、ピーマン、きゅうりなど、実を付ける夏野菜の多くは、初夏に苗を畑やプランターに植え付けて栽培をスタートします。植え付け時期が近付くと、園芸店やホームセンターの店頭には多くの野菜苗が並び、インターネット通販などでも購入することができます。しかし、苗の形で出回る品種は限られていて、海外の品種や珍しい品種などは、種しか入手できないケースが少なくありません。逆に言えば、種を買って自分で苗を作ることで、ほかの人が育てていないめずらしい品種も栽培できるということ。食べたことのない野菜や新しい品種にチャレンジするのも、家庭菜園の大きな楽しみですから、ぜひ自分で育苗する方法を知っておきましょう。ポットやセルトレイなどに種をまき、植え付けられる大きさの苗に育てることを「育苗」といいます。野菜は種を土に直接まいて育てることもできますが、成長に時間がかかるものや、寒い時期に種をまく必要があるものは、温度管理のしやすい場所でまとめて育苗した方が失敗のリスクが減り、菜園のスペースの節約にもなります。
2. 育苗を成功させる5つのポイント
育苗に掛かる日数や、発芽に必要な温度、成長に必要な温度などの条件は野菜によって異なり、良い苗を育てるには、それぞれに合わせた管理が大切です。主な夏野菜の発芽・生育に適した温度や、育苗に掛かる日数などを表にまとめましたので、こちらを参考に、次の5つのポイントをしっかり押さえておきましょう。丈夫な良い苗は植え付け後も元気に成長し、収穫量もアップします。
植え付け時期に間に合うように種をまく
夏野菜の多くは、気温の上がる4月下旬から5月にかけてが植え付けの最適期。苗は大きく育ち過ぎても小さ過ぎても、うまく育たないことがあるので、植え付け時期から育苗に掛かる日数を逆算して、適期に間に合うタイミングで種をまくことが大切です。例えばトマトを4月下旬に植えるとすると、育苗には55~65日掛かるので、種まきは2月下旬ごろに行うのがベストです。発芽温度をキープする
発芽や成長に必要な温度は野菜によって異なり、例えばトマトやナスを発芽させるには、25℃以上の温度が必要です。この場合の温度は気温ではなく、種をまいた土の地温を指し、専用の地温計をさすと正確に測ることができます。家の中で育苗する場合でも、人のいない時間帯や夜間は温度が下がるため、地温25℃以上をキープするのはなかなか難しいもの。順調に発芽・成長させるには、加温できる育苗器やヒーターマットなどがあると便利です。これらのアイテムについても後半でご紹介します。
ミニミニサーモ発芽用地温計
発芽したら、たっぷり日に当てる
丈夫で良い苗を育てるためには、光も重要です。種が発芽したら、日中は窓辺などの日当たりの良い場所にポットを置いて、たっぷりと日に当てながら育てましょう。光が足りないと「徒長(とちょう)」と言って、ひょろっとした弱々しい苗になってしまい、植え付けてもうまく育たない可能性があります。理想は茎が太くがっしりしていて、葉の色が濃く、葉と葉の間隔が詰まった苗に育てることです。水の与えすぎに気を付ける
水を与え過ぎるのも、苗が徒長する原因になります。水やりのコツは、土の状態を確認して、乾いていたらたっぷりと与えること。乾燥が心配でついやり過ぎてしまうことがありますが、土が常にびしょびしょに湿っているのはNGで、根が水分を吸収して土が乾く→水やりする、というサイクルを守ることが大切です。特に、育苗器やサーモヒーターでで加温して育てる場合、夜間も温度が高めになり、この状態で水分がたくさん残っていると、より徒長しやすくなるといわれます。環境や成長段階に合わせた温度管理
寒さの厳しい2月ごろから春に掛けて行う夏野菜の苗作り。種まき直後は気温が低く、また発芽には高い温度が必要なので、外気に当たらないようにふたをかぶせる、加温するなどの寒さ対策が重要です。しかし、発芽後の生育に適した温度は、多くの夏野菜で20~30℃と、発芽前に比べてやや低くなります。同じように加温していると、暑くなり過ぎてしまうので気を付けてください。特に3月半ばごろになると、日差しが強くなり、窓辺などの日当たりの良い場所では蒸れてしまう心配があります。日中はふたを外す、ヒーターを使っている場合は切るなど、地温をチェックしながら適した温度になるように管理しましょう。植え付け時期が近付いてきたら、屋外に出して外の気温に慣らしておくと、植えた後に枯らしてしまうリスクが減らせます。
3. 家庭用育苗器の種類
プロの栽培農家が大規模に苗作りをする場合、ビニールハウスや温室の中で、暖房で温度を保ちながら育苗します。家庭菜園でいろいろな野菜を少しずつ育てたい場合は、家庭用のコンパクトな育苗器があると便利です。ヒーターと温度を調節できるサーモスタットが付いたものなら、ちょっと面倒な温度管理が楽にできて、苗作りが成功する確率もアップ。あるいは育苗トレイとヒーターマットを組み合わせることもできるので、育てたい株数やスペースに合わせて選びましょう。温度を正しく管理するためには、地温系も用意しておくと安心です。
ヒーター内臓型の育苗器
愛菜花 PG-10
菜時期 PG-21Z サーモセット
育苗トレイ
種まきハウス 9穴トレー
発芽・育苗セット「苗とこ」25鉢2セット
ヒーターマット
園芸発芽マット
Wholehot 園芸発芽マット
縦254mm×横527mmのヒーターマットで、カバー付きの育苗トレイと組み合わせれば20度前後の温度をキープできます。使わないときは丸めてコンパクトに収納できて、場所を取りません。
・サイズ:縦254×横527mm
・消費電力:18W
・サイズ:縦254×横527mm
・消費電力:18W
ベースヒーター BHS-210(サーモスタット付き)
地温計
地温計ミニ 3個入り
4. 家庭用育苗器を使った苗作りの方法
上で紹介した「愛菜果」を使った、種まきと苗作りの方法を紹介します。付属のトレイに直接土を入れて種をまくこともできますが、ポリポットやプラグトレイにまいた方が、植え付けまでの管理が楽にできておすすめです。Step1. 用意するもの
野菜の種、家庭用育苗器、ポリポットまたはプラグトレイ、種まき用培養土、砂、霧吹き。たねまき培養土
Step2. 育苗器の準備
ヒーターの熱が直接伝わると野菜の根を傷めやすいので、育苗器本体の底に2cmほど砂を敷き詰めます。育苗トレイとヒーターマットを組み合わせて使用する場合も、ヒーターの上に直接置かないようにしましょう。Step3. 種まき
ポットまたはプラグトレイに土を入れ、霧吹きで水を掛けてよく湿らせます。約1cmの深さに種をまき、土を寄せて表面をならします。同じポットに2粒以上まく場合は、2cm程度間隔を空けましょう。種をまき終えたら、付属のトレイの上に置いて、保温用のカバーをかぶせます。Step4. 発芽までの管理
発芽に必要な温度は野菜によって違うので、上で紹介した表を参考に、ヒーターを発芽適温に設定し、発芽を待ちます。日当たりや室温によって土の温度も変化するので、地温計を土に挿して、適温になっているかをときどきチェックしましょう。また、発芽までは土を乾かさないように霧吹きで水やりをします。Step5. 発芽後の管理
野菜にもよりますが、寒い時期は発芽までに7~10日ほど掛かります。双葉が出たら日当たりの良い場所に置き、それぞれの野菜の生育適温になるようにヒーターを設定します。土が乾いたら霧吹きでたっぷりと水やりしましょう。1つのポットに数粒種をまいている場合は、隣り合った葉が重なり合わないように数回に分けて間引きをし、最も元気な株を1本残します。Step6. 春先の管理
3月ごろになると日差しが春らしくなり、育苗器の内部も温度が上がってきます。日中はヒーターを切る、保温用のカバーを外すなど、温度の上がり過ぎに注意します。1日の気温が15℃を超えたら、加温する必要はありません。育苗期間が長い野菜は、培養土の肥料効果が途中で切れてしまうことがあるので、葉の色が薄くなってきたら、緩効性の化成肥料などを追肥しましょう。Step7. 苗の完成
それぞれの野菜の植え付けサイズまで育ち、気温が十分に上がったら菜園やプランターに植え付けます。植え付けが近付いたら、日中は日当たりの良い屋外に出すなど、少しずつ外の気温に慣らしていきましょう。6. 種から育てる野菜作りは、楽しい!
自分の手で小さな種をまき、じっくりと成長を見守り、大きくおいしく育った野菜を収穫する…そんな喜びが味わえるのが、自分で苗を育てる一番の魅力かもしれません。温度管理や水やりなど、少し手間は掛かりますが、寒い時期も着実に育っていく野菜たちの姿は頼もしく、冬の間の楽しみにもなります。好みの品種を見つけて、ぜひチャレンジしてみてくださいね。





















