- Miyuki Tateuchi
アメリカのミシガン州に居住中。海外の農業情報や普段の生活を通して感じた食農トピックを紹介します。祖父が農家だった影響もあり、四季折々の「旬」を大切にしたいと思っています。…続きを読む
前回は、夏場のレジャーとしても楽しいファーマーズ・マーケットの様子をお伝えしました。
今回のテーマは、10月のハロウィンにちなんでのカボチャ。アメリカでは1年を通して、日本では見かけないタイプのカボチャがあります。ふだんは棚の野菜にがっかりすることが多いスーパーでも、カボチャの品ぞろえは豊富です。いろいろな品種を紹介しつつ、おすすめ料理もとりあげます。
600kg超えも!重さを競うジャイアントカボチャ
アメリカでは夏休みの時期に各地に移動遊園地がまわってくるのですが、その中での一幕がこれ。遊園地のメリーゴーランドや観覧車、コースター類とはかなりのギャップながら、園内の一角で農作物や畜産の品評会が同時に開催されています。今年度、地元で出品された中で一番重かったカボチャは、なんと1,500ポンド(約680kg)。比較対象でわかりやすかったのが、同じ会場でみかけた12歳馬で、ほぼ同じ重さでした。
アメリカのカボチャのイメージに近い、オレンジ色の巨大カボチャもあります。こちらは5位のカボチャで950ポンド(約430kg)でした。
ミシガンが農業の盛んな地域だからかもしれませんが、日本で首都圏に住んでいた時に比べ、一般市民の生活と「農や畜産」との距離が近い気がします。人が多く集まるイベントでお披露目の場が与えられたカボチャ。「重さ」というわかりやすい指標を目指して競争が行われ、表彰の場があるというのは、農の「苦労・大変さ」を超えたところにある「楽しさ・挑戦」の側面から、農業を伝えたいからなのかもしれません。
カボチャの世界チャンピオンは?
日本でも香川県の小豆島で、日本一大きなカボチャを選ぶ「日本一どでカボチャ大会」が秋に開催されています。今年2021年に35回目を迎えた歴史ある大会です。カボチャの大きさを競う大会は世界各国で開催されていて、現在ギネス記録となっているのは、2016年にベルギーで栽培された約1,190kgのものです。カボチャにまつわるギネス記録、ほかにも「よくこんなことに挑戦しようと思ったな」と感じるおもしろい記録もあるので、興味があったらホームページをのぞいて見てください。
参考:ギネス世界記録
種類豊富なカボチャ。繊維質で「何か」の代わりにぴったりなものも!
アメリカでは年間を通して、Squash(スクワッシュ)と呼ばれるカボチャ類が店頭に並んでいます。ハロウィンのジャック・オーランタンも、元々は「カブ」を使っていたのが、アメリカに来て「カボチャ」になったくらいなので、「カボチャ」はアメリカではとてもなじみが深い野菜といえます。アメリカのハロウィンとカボチャの関係についてはこちら
横道にそれますが、ズッキーニも見た目は違うものの、”Zucchini Squash”と呼ばれるカボチャの仲間です。売り場には日本で見かけるようなKabochaという名前のカボチャもありますが、ここからは、日本ではあまり見かけないタイプのカボチャに焦点を当てて紹介します。
あっと驚くスパゲッティ・スクワッシュ
日本では、「金糸瓜(きんしうり)」または「そうめんカボチャ」と呼ばれている、俵型のカボチャです。アメリカでは、同じ麺類でも、「そうめん」ならぬ「スパゲッティ」。その名前の由来は、果肉が糸状になっていて、1本1本が麺のようになっているから。繊維質で、わたと種を取ってからゆでた後、スプーンで表面をこそげると、面白いように果肉が取れていきます。日本では石川県能登の伝統野菜となっていますが、ほかの地域や家庭菜園で育てる人も増えています。
スパゲッティ・スクワッシュの食べ方|おすすめはパスタ使いで
名前の通り、スパゲッティ・ミートソースの麺として使ってみると、短めの麺であるものの、あまり違和感がありません。色も普通の麺よりは少し黄色い気もしますが、主張が強い味ではないので、ミートソースの味を邪魔することもありません。実際、アメリカではパスタの代わりとして、糖質やカロリーを気にしたり、グルテンフリーの素材を求めている人のために、ズッキーニをらせん状にカットしたZucchini Spirals(ズッキーニ・スパイラル)という商品が売られています。日本だと、ズッキーニ+ヌードルで「ズードル」という呼び方の方が定着しているかもしれません。
ズードルはズッキーニならではの緑色がきれいですが、麺らしさを追求するなら「スパゲッティ・スクワッシュ」、もしくは黄色いズッキーニの「イエロースクワッシュ」がおすすめです。盛り付け方により、パーティーにもぴったりのおしゃれな一品にもなります。
ひょうたん型のバターナッツ・スクワッシュ
見た目のインパクト大なのが、まるで巨大ピーナッツのような「バターナッツ・スクワッシュ」です。日本では、「ピーナッツ・カボチャ」と呼ばれることもあるようですね。長野県、愛媛県、千葉県など全国で栽培されています。どのように調理すればよいものか迷うところですが、硬い皮をピーラーでむいた後、小さく切って煮込んだり、オーブンで焼いてみたり、意外と使い勝手のよいカボチャです。
バターナッツ・スクワッシュの食べ方|おすすめはスープ
オレンジ色が濃く鮮やかで、味もねっとりと濃厚なので、シンプルにスープにするのがおすすめです。参考レシピを見ると、玉ねぎ、隠し味にコンソメ、生クリームを使っており、腹持ちがよく胃にも優しいスープに仕上がっています。知り合いのアメリカ人も、「このスープが大好物」とそのおいしさには太鼓判を押していました。
ボートのような形を上手に利用して、映える一品にも。調理のインスピレーションが広がりそうな素材です。チーズをたっぷりのせたオーブン焼きもおいしいです。
どんぐり型のエーコン・スクワッシュ
こちらも個性豊かでユニークな形。Acornは英語で「どんぐり」の意味で、見た目そのまま、先がとがっていてコマのようです。果肉はバターナッツに比べると薄めの黄色。サイズは小ぶりで、皮も包丁が楽に入るほどやわらかく、手ごろで扱いやすいカボチャです。ただ、水分が多くあまり煮物には向いていない印象。私もどう食べたらおいしいか、試行錯誤しています。
エーコン・スクワッシュの食べ方|おすすめはグリル
花形のきれいな形を生かしたのが、このデザート。中にはリンゴの角切りを詰め、秋の味覚豊かな一品になっています。小ぶりサイズであれば、カボチャを器に見立てて盛り付け、そのまま全部食べられるところも便利ですね。サラダにのせたすてきな一品。お料理には視覚も大事で、マンネリ化から脱出できそうな新感覚のサラダになります。
まだまだ続く、カボチャの世界
ここで原稿を閉じようと思っていたところ、売り場で初めて見かけるカボチャに出会いました。その名は、Buttercup Squash(バターカップ・スクワッシュ)。ホームページを探ってみると「味は日本で食べるカボチャに近い」と感じる人が多いようですが、マッシュルームのような見た目と色のコントラストが好奇心を呼び起こすカボチャです。また未知なる世界が増えました。カボチャの世界は奥が深いです。
ふだん手に入りにくいカボチャを育ててみるのも、家庭菜園の醍醐味(だいごみ)ですね。下記のリンクでは、さまざまな品種を紹介。そうめんカボチャやバターナッツカボチャの種の情報もあります。
次は、いよいよこのコラムの最終回。商品から垣間見えるアメリカフードのトレンドを探ってみます。
バックナンバーはこちら
「アメリカ生活アグリ日誌」Miyuki Tateuchi プロフィール
就職情報会社、外資系人事コンサルティング会社を経て、2017年よりアグリコネクト株式会社でリサーチ業務に従事。2019年より夫の転勤に伴い、アメリカのミシガン州在住。成長期真っ只中の2児の母。農業と地域、世界の料理などへの興味を元に、情報発信していきます。