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庭師
野添 匠青森県八戸市出身。2017年から2年半、カナダのトロントで造園を学び、2020年に株式会社みちのく庭園入社。生け花を通じて植栽のインスピレーションをもらうことも。趣味はサーフィン。 「庭職人としてのルーツは“洋”ですが、自分の中にある“和”とうまく融合させて、日本人の心ある庭を作庭するのが夢。また、街の緑を増やし、地球と人に優しい環境をつくっていきたいと思っています。」 ■みちのく庭園HP:https://michinoku-teien.com/ ■Instagram:https://www.instagram.com/nzetkm/…続きを読む
ロウバイの特徴&鑑賞や剪定などの手入れの時期
ロウバイの基本情報
英語名 | Winter sweet、Japanese allspice |
別名 | ワロウバイ(和蝋梅)、カラウメ(唐梅) |
科名 | ロウバイ科 |
属名 | ロウバイ(キモナンサス)属 |
特性・形態 | 落葉性低木 |
樹高 | 2〜4m |
原産地 | 日本、中国 |
USDA zone | 6b〜9a |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | あり |
USDA zone とは
United States Department of Agriculture Plant Hardiness Zone(米国農務省 植物の耐寒性地帯)の略。米国農務省が開発した、寒さの段階を13のレベルに分け、植物の耐寒性レベルを数値とマップで明瞭化した指標です。造園やガーデニングをするうえで、植物がどの地域で、どれくらいの寒さまで耐えられるのかを確認するために使います。日本では気象庁の観測データを元に、都道府県市町村ごとにレベル分けされています。※指標は、植物を屋外で育てたときの目安。
参考:Japan Plant Hardiness Zone
ロウバイの鑑賞や剪定などの手入れの時期
- 鑑賞期:10〜11月(紅葉)、12月中旬〜2月(花)
- 結実期:9月
- 植え付け、植え替え:2月中旬〜3月、11〜12月
- 肥料:鉢植え/4〜7月、庭植え/4〜5月、9月上旬、12月(寒肥)
- 剪定:3月、7月下旬〜8月
ロウバイの葉・花・実の鑑賞時期
ロウバイは10〜11月にかけて葉が黄色く紅葉し、落葉した後、12月中旬〜2月にかけて黄色い花を咲かせます。翌年の9月には、赤みがかった黄色い実を付けます。ロウバイの剪定・施肥など、手入れの時期
ロウバイは年に2度、開花が終わった3月と新芽が展開しきった8月下旬ごろに剪定(せんてい)をする必要があります。とくに園芸品種は地面からたくさんの幹が生えやすいので、樹形が崩れないように切り落としましょう。また、花が咲きやすくなるように、4〜5月、9月上旬、12月に肥料を与えます。ロウバイの生長スピード・寿命・価格
ポットから地面へ移植したロウバイは、5年を過ぎたころから生長スピードが早まります。きちんと手入れされた健全な株であれば、ロウバイの寿命は何十年もあるといわれています。栃木県のロウバイの名所「上永野 蝋梅の里」には、樹齢120年の株もあるそうですよ。価格は苗の大きさによって違いますが、3.5号(10.5cm)ポットサイズで1,500円程度から販売されていることが多いようです。
おすすめのロウバイの苗木
梅のような甘い香りが楽しめるロウバイの花と花言葉
ロウバイは葉が落ちる12月中旬ごろから、梅の木のように枝の節ごとに花を咲かせます。代表的なワロウバイという品種は、外側の花びらが黄色、内側は赤紫色ですが、その特徴を持たないソシンロウバイという種類などもあります。ロウバイの花は梅の花に似た甘い香りで、四大香木(よんだいこうぼく)の1つです。香水の原料に使われることも。四大香木とは
香りが良く、古くから日本で親しまれているジンチョウゲ(沈丁花)、クチナシ(梔子)、キンモクセイ(金木犀)の3つ花木を「三大香木」と呼びます。そこにロウバイを加えた総称が「四大香木」です。
ロウバイの花言葉
梅のような甘い香りをつけるロウバイの花言葉は、「慈愛」「ゆかしさ(心引かれるさま)」「先導」「先見」です。紅葉から落葉するロウバイの葉と9月に付く実の特徴
ロウバイの実|強い毒があり食用にはならない!
ロウバイは、アズキ色の種が10個ほど入ったカリンに似た実を9月に付けます。実には強い毒があるため、絶対に口にしないようにしましょう。ほかの庭木と比べると種の発芽率が高く、日陰がちで水はけの良い土に3月ごろに種まきをすると約1カ月半で発芽することも!ロウバイの葉|春に新緑、秋に紅葉、冬に落葉
4月になるとロウバイの新緑が枝節の両側から対になって出て、5〜20cm程度の大きさの葉に生長します。秋になると紅葉し、冬になると葉は一斉に落ちます。庭木やシンボルツリーにおすすめ!ロウバイの3つの魅力
ロウバイがなぜ庭木やシンボルツリーにおすすめなのか、魅力を3つのポイントとしてまとめました!1. 冬でも明るい雰囲気の庭に
冬は花を咲かせる植物が少なく、暗い庭になりがちですが、ロウバイは冬に黄色くかわいい花をたくさん咲かせるので、明るい雰囲気の庭に!冬の間、甘くて上品な香りも楽しめますよ。2. 冬の美しいシンボルツリーに
ロウバイは背の高くなる木なので、シンボルツリーとしてもおすすめです。花が満開を迎える冬は、特に印象的!地面から伸びる幹の数を剪定で整えるとたたずまいが良くなり、趣きのある美しいシンボルツリーになります。3. 暑さや寒さに強くて管理が楽!
ほかの庭木と比べると暑さや寒さに強いロウバイは、夏の日除け対策や、冬の防寒対策などする必要がありません。病害虫の被害も少ない強い木です。花の色や形も違う!香りの強い品種などおすすめのロウバイの種類
ロウバイには、花の色や形が違う魅力的な園芸品種がたくさんあります。ロウバイの親戚のような品種のクロバナロウバイも紹介します!花の香りが強い!ロウバイ科ロウバイ属
ソシンロウバイ
ソシンロウバイの花は赤紫色の花びらがなく、透き通った黄色一色が特徴。香りが原種のロウバイよりもさらに強いため、人気の園芸品種です。マンゲツロウバイ
マンゲツロウバイは花が全体的に丸みを帯びることから、満月という名前がついたようです。原種のロウバイのように内側の花びらは濃い赤紫色になります。トウロウバイ
トウロウバイは、中国から渡ってきた品種。原種のロウバイと比べると花が大きく、内側の花びらの赤紫色が薄いのが特徴で、バラの花のような見た目をしています。花の色や形が個性的!ロウバイ科クロバナロウバイ属
クロバナロウバイ
北米を原産とするクロバナロウバイ。黒みがかった赤い花は、シックでスタイリッシュな姿です。樹高は大きくなっても1mほどと小ぶりで、香りはやや弱めです。ナツロウバイ
ナツロウバイは中国が原産で、ツバキのような見た目と大きく広がった花びらが特徴。冬ではなく、5〜6月ごろに花が開花することからナツロウバイと名付けられたようです。ハートリッジワイン
ハートリッジワインはクロバナロウバイの園芸品種。クロバナロウバイの花よりもさらに大きく、濃いピンク色の大輪の花を咲かせます。香りは弱いですが見た目のインパクトが大きく、庭を華やかにしてくれますよ!ホワイトドレス
ホワイトドレスはクロバナロウバイの一種で、緑色の葉とのコントラストがとても美しい白い花を咲かせます。印象のある洋風の庭づくりに向いていますよ。きれいな花を観賞するために!ロウバイの育て方のコツ
基本的には難しい管理がないロウバイですが、根が腐りやすいので、水はけの良い土で育てるようにしましょう。Point1. 日当たりが良い場所か半日陰に
ロウバイは、日当たりが良いか半日陰の場所で育てると元気に生長します。日陰過ぎると秋に紅葉しない、冬に花が咲かない場合も。春から夏の間にしっかり陽の光が当たるような暖かい場所に植え付けましょう!Point2. 水がたまりやすい場所は避ける!
ロウバイは、水はけが悪い土に植え付けると根腐れを起こし枯れてしまいます。庭は、建物から敷地の外に向かって雨水が流れるように傾斜がついていることが多いので、建物の近くに植えると水もたまりにくいですよ。Point3. 開花前に寒風に当てない!
寒さに強いロウバイですが、開花前に強い寒風に当たってしまうと花が咲きにくくなることがあります。直接寒風に当たらないよう、建物の近くに植えたり、ブルーシートを被せたりして防風しましょう。Point4. 植え付けの1カ月前には肥料を施す
ロウバイは、根が地中にしっかりと張るまで時間がかかる樹木。植え付けてから花が咲くまでは、5年以上かかることもあります。できるだけ花が早く咲くように、植え付けの1カ月前には、掘り起こした土に腐葉土、完熟堆肥、緩効性化成肥料を混ぜ込んでおきましょう。Point5. 植え付けてから3年未満の苗木には水やりを
植え付けのときはもちろんですが、ロウバイを植え付けてから根がしっかりと張るまでの2〜3年の間は、土の表面が乾いたらしっかり水を与えます。植え付けてから3年を過ぎたロウバイは、暑さで土が極端に乾いているときにだけ水やりをすれば大丈夫です。ロウバイの剪定は年に2回のペースで
ロウバイは株立ち樹形で生長スピードが早いため、年に2回のペースか、背丈が高くなり過ぎたときや、枝葉やひこばえ(地面から生える幹)が混み合ったりしたときに剪定します。土から出てくる幹の数を3本、または5本などの奇数にすると、たたずまいがより美しいですよ!ロウバイの剪定に最適な時期|3月と7月下旬〜8月
ロウバイの剪定は、花が咲き終わって新芽が出るころの3月と、新芽の葉が開いて硬くなるころの7月下旬から8月にしましょう。時期を間違えると花芽を切り落としてしまい、花が咲かなくなります。ロウバイの剪定の手順
Step1. 根本から伸びる幹を間引く
地面からたくさんの幹が伸びていると、すっきりした樹形にならず、花も咲きにくくなります。残す幹を3〜5本に絞って、それ以外は株元から切り落としましょう!Step2. 古い枝や余分な枝を透かし剪定できれいに
ロウバイの花は春に伸びた新しい枝にしか花芽をつけないので、古い枝や枯れた枝を切り落とします。新芽や出てきた葉を避け、全体をすっきり透かすように剪定しながら、切るべき枝を決めていくのが大切です。Step3. 徒長した枝を切り戻し剪定で間引く
節と節の間が長く伸びた枝はロウバイの花が咲きにくいので、枝分かれした箇所の数ミリ上で切り戻し剪定をします。できるだけ幹に近い箇所で切ると傷口の治りも早くなり、病気にかかりにくいですよ!ただし、すべての古い枝を切り詰めてしまうと、樹形が乱れてしまうこともあるので注意しましょう。剪定の種類や剪定ばさみの関連記事はこちらをチェック!
鉢植えでロウバイを育てるときの注意点
ロウバイの木が小さいうちは、盆栽のようにコンパクトに鉢植えで育てることができます。鉢植えは季節や日当たりにあわせて移動可能なので、より良い環境で育てられるのも利点!ロウバイの花の香りを、より身近で感じられますよ。ロウバイは、マチの広い植木鉢に植え付ける
ロウバイは、たくさんの太い根を地中に浅く張ります。鉢植えにする場合は、樹高が1m程度なら直径30〜40cm、深さ20〜25cm程度のマチの広い鉢に植え付けましょう。鉢が小さいと根詰まりを起こして、生長不良や枯れる原因にもなります。いずれはロウバイを庭に植えられるように準備を
ロウバイは、大きくなると樹高が4mほどまで生長する樹木。たくさんの根もそれぞれが太くなってきます。樹高が2mを超えたら、庭や屋外に2×2m程度のスペースを確保し、用土の準備をして植え替えをしましょう。挿し木でロウバイを増やそう!
ロウバイは、枝の一部を切り取って根を出させる「挿し木」で増やせます。初心者でも簡単にできる方法なので、増やしたい場合は、ぜひ挑戦してみてくださいね。ロウバイの挿し木づくりは若葉が芽吹いた後がベスト
ロウバイの挿し木づくりは、若葉が芽吹いた6月ごろがおすすめです。挿し木は、ロウバイの枝を切ってつくるので、寒い時期や花芽が出るタイミングなどを避けたほうが、株にストレスを与えません。挿し木のつくり方
- 3月下旬から5月に出た、枝先のやわらかい若芽を上から3〜4節目(10cm程度の長さ)でカット。これを「挿し穂」といいます。
- 挿し穂上部の数枚の葉だけを残し、下部の葉は全て摘み取ります。
- 切り口に癒合剤(ゆごうざい)を塗り、挿し穂が腐らないようにします。
- コップや花瓶に入れた水か、水はけの良い土が入ったビニールポットなどに挿して、涼しい日陰で管理しましょう。2〜3カ月で根が出ます。
癒合剤とは?
枝を切った後の切り口に塗る薬で、枝の中の水分や養分が出ていくのを防ぎ、病原菌が侵入しないように予防します。また、傷を早く癒す成分も含まれています。