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目標額500%超を達成!自社ブランド枝豆のクラウドファンディングと販売戦略

クラウドファンディングはインターネットを介して不特定多数の人々から資金を調達することが目的で利用されます。農産物においては自社商品の認知度を高めブランド化にもつながる販売戦略として活用できることが、株式会社アースグリーンファームの取り組みからわかりました。


杉原 誠二さん撮影:横山ナヲト
ネット通販が当たり前の昨今、農産物販売の多チャネル化がますます進行する中で、クラウドファンディングに着目する農業経営者が増えています。果たして農産物のような少額商品でもクラウドファンディングに親和性はあるのでしょうか?

自社ブランドの枝豆でクラウドファンディングに挑戦したアースグリーンファーム

静岡県焼津市で露地野菜を中心に生産している株式会社アースグリーンファームでは、この7月、クラウドファンディングで自社ブランドの枝豆「THE AROMA GREEN(ジ・アロマ・グリーン)」の先行販売を実施しました(クラウドファンディングサイト「Makuake」)。コンセプトは「ビールに合う枝豆」。今回のプロジェクトでの応援購入総額は、10万円の目標を大きく上回る50万円を超えました。同社代表の杉原誠二さんに、クラウドファンディング活用の狙いと今後の販売戦略についてお話しいただきました。

【株式会社アースグリーンファーム 会社概要】
・所在地:静岡県焼津市
・従業員:10名(正社員3名、アルバイト6名)
・経営面積:水稲10ha、レタス2.5ha、サニーレタス1.5ha、キャベツ2ha、枝豆4ha

株式会社アースグリーンファームのクラウドファンディングの取り組みはこちら


クラウドファンディングは新たな販売チャネルの足がかり

圃場から作業場に運ばれた枝豆
撮影:横山ナヲト
アースグリーンファームの主な販売先は静岡県内の大手バイヤーで、都内の高級スーパーや百貨店を取引先に多く抱えています。今回のクラウドファンディングは、こうした従来の販路とは異なる新たな販売チャネルの足がかりとしてのチャレンジでした。
昨今のコロナ禍で世間ではネット注文が増えてきています。我々がネット販売を選ばない理由がありません。クラウドファンディングもその一環で、先行販売のテストケースとしてチャレンジしました。枝豆の担当者は新しい取り組みに対して、サイトデザインや美しい箱詰めなど新たに発生する課題にも主体的に取り組んでくれました。


通常のネット販売とクラウドファンディングの違いは、多くの人から「支援」という形で認知してもらえるところ。枝豆のクラウドファンディングも杉原さんがLINEで知人に告知しただけで情報が拡散しました。ただし、農産物ならではの難しさもありました。
生産者としては一番良い状態の枝豆をお届けしたい。でも、クラウドファンディング期間が終わらなければ出荷できない。発送予定の7月後半は本来なら一番おいしい時季なのに、今年はこの暑さに加えてずっと雨がなかったため枝豆の生長が進み過ぎて色が変わりそうな状態です。このように青果物ならではの難しさがあるなということは実感しました。

数ある青果物の中でも枝豆はとくに季節感の強い品目です。クラウドファンディングを利用する際にはお届けする時期にも注意する必要がありそうですね。THE AROMA GREENでは、5月下旬から8月上旬にかけて収穫する「クリアー」、8月下旬から10月中旬にかけて収穫する「アンバー」という2つのラインが用意されています。

農産物とクラウドファンディングの親和性は高い

枝豆の調製作業
撮影:横山ナヲト
アースグリーンファームの枝豆の特徴はカツオの肥料で栽培されている点です。焼津はカツオの水揚げ日本一で市内にはかつお節の工場が多く、かつお節製造の工程で出る残さを畑にまいています。そのようにしてつくった枝豆を成分分析にかけたところ、アミノ酸の数値が上がり味も香りも良くなりました。
焼津の環境で育てた枝豆がおいしい理由を消費者は知りません。これをもっと全国に広めていこうと思っています。山形のだだちゃ豆とか新潟の黒埼茶豆とか兵庫の丹波黒といった名高い地域銘柄にはブランド力でかなわないので、ぜんぜん違う切り口で行くしかない。それが「ビールに合う枝豆」です。

杉原さんのお話を伺っていると、農産物とクラウドファンディングの親和性はとても高いように感じます。農作物のような少額商品でもしっかりと情報発信ができて多くの支援者を集められる点は生産者にとって大きなメリットとなりそうです。
例えばうちのブロッコリーは茎のところがとくにおいしいんです。産地から穫れたてのものを届られれば、おいしい状態のまま食べてもらえます。ところが多くの消費者は本当においしいブロッコリーを知らないし、食べたことがない。スーパーにしろネットにしろ既存の流通は、消費者が本当に必要としているものの情報を伝え切れていないからです。クラウドファンディングだったらそういうことを伝えることができる。ブランド化も可能になります。

クラウドファンディング資金でWebショップを開設してTHE AROMA GREENの認知度を向上

アースグリーンファーム社員の皆さん
撮影:横山ナヲト
新商品をブランディングするときに、ただ「買ってください」というやり方よりも、購入者が認知しやすいという点でクラウドファンディングは効果的かもしれません。また、支援者の中からリピーターにつなげられる期待もあります。農業とクラファンの相性は良く、さまざまな形で展開できそうです。
クラウドファンディングのサイトにメッセージを入れてくれたのは、いっしょに勉強してきた仲間など私の知人が多いですね。そういう人たちにLINEでお知らせするときは、「買って」とはいわずに「クラウドファンディングやってるのでよかったら支援して」の方が言いやすいと思います。

今回のクラウドファンディングで集まった資金の使い途は、「THE AROMA GREEN」公式Webショップの開設資金と地産地消推進プロジェクト「ジモベジ」の活動資金となります。アースグリーンファームでは同社のコーポレートサイトを手がけたデザイン会社とコラボしてWebショップの準備を進めています。
今回のクラウドファンディングでは支援者から「ビールも一緒じゃないの?」という声がけっこうあったので、Web展開の一案としてクラフトビールの工房あるいはホップの生産者とコラボして「ビールには枝豆」というコンセプトを前面に打ち出します。とくにTHE AROMA GREENはエールビールなどのクラフトビールとの相性が良いところを強調して認知度を高めていきたいですね。

枝豆のような季節限定の青果物において、情報の拡散力が強いクラウドファンディングを活用する効果は大きいように思われました。今回の「ビールに合う枝豆」のように支援者から共感が得られやすい設定が成功のカギとなりそうです。

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n.yokoyama

農業生産現場を活動フィールドとするライター兼フォトグラファー。25年の活動で取材実績は延べ約400件。撮影時は田んぼや畑の中を一眼レフ2台持ちで移動しながら最適なアングルを求めるのが私のスタイルです。

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