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- n.yokoyama
農業生産現場を活動フィールドとするライター兼フォトグラファー。25年の活動で取材実績は延べ約400件。撮影時は田んぼや畑の中を一眼レフ2台持ちで移動しながら最適なアングルを求めるのが私のスタイルです。…続きを読む
撮影:横山ナヲト
ネット通販が当たり前の昨今、農産物販売の多チャネル化がますます進行する中で、クラウドファンディングに着目する農業経営者が増えています。果たして農産物のような少額商品でもクラウドファンディングに親和性はあるのでしょうか?
自社ブランドの枝豆でクラウドファンディングに挑戦したアースグリーンファーム
静岡県焼津市で露地野菜を中心に生産している株式会社アースグリーンファームでは、この7月、クラウドファンディングで自社ブランドの枝豆「THE AROMA GREEN(ジ・アロマ・グリーン)」の先行販売を実施しました(クラウドファンディングサイト「Makuake」)。コンセプトは「ビールに合う枝豆」。今回のプロジェクトでの応援購入総額は、10万円の目標を大きく上回る50万円を超えました。同社代表の杉原誠二さんに、クラウドファンディング活用の狙いと今後の販売戦略についてお話しいただきました。【株式会社アースグリーンファーム 会社概要】
・所在地:静岡県焼津市
・従業員:10名(正社員3名、アルバイト6名)
・経営面積:水稲10ha、レタス2.5ha、サニーレタス1.5ha、キャベツ2ha、枝豆4ha
株式会社アースグリーンファームのクラウドファンディングの取り組みはこちら
クラウドファンディングは新たな販売チャネルの足がかり
アースグリーンファームの主な販売先は静岡県内の大手バイヤーで、都内の高級スーパーや百貨店を取引先に多く抱えています。今回のクラウドファンディングは、こうした従来の販路とは異なる新たな販売チャネルの足がかりとしてのチャレンジでした。通常のネット販売とクラウドファンディングの違いは、多くの人から「支援」という形で認知してもらえるところ。枝豆のクラウドファンディングも杉原さんがLINEで知人に告知しただけで情報が拡散しました。ただし、農産物ならではの難しさもありました。
数ある青果物の中でも枝豆はとくに季節感の強い品目です。クラウドファンディングを利用する際にはお届けする時期にも注意する必要がありそうですね。THE AROMA GREENでは、5月下旬から8月上旬にかけて収穫する「クリアー」、8月下旬から10月中旬にかけて収穫する「アンバー」という2つのラインが用意されています。
農産物とクラウドファンディングの親和性は高い
アースグリーンファームの枝豆の特徴はカツオの肥料で栽培されている点です。焼津はカツオの水揚げ日本一で市内にはかつお節の工場が多く、かつお節製造の工程で出る残さを畑にまいています。そのようにしてつくった枝豆を成分分析にかけたところ、アミノ酸の数値が上がり味も香りも良くなりました。杉原さんのお話を伺っていると、農産物とクラウドファンディングの親和性はとても高いように感じます。農作物のような少額商品でもしっかりと情報発信ができて多くの支援者を集められる点は生産者にとって大きなメリットとなりそうです。
クラウドファンディング資金でWebショップを開設してTHE AROMA GREENの認知度を向上
新商品をブランディングするときに、ただ「買ってください」というやり方よりも、購入者が認知しやすいという点でクラウドファンディングは効果的かもしれません。また、支援者の中からリピーターにつなげられる期待もあります。農業とクラファンの相性は良く、さまざまな形で展開できそうです。今回のクラウドファンディングで集まった資金の使い途は、「THE AROMA GREEN」公式Webショップの開設資金と地産地消推進プロジェクト「ジモベジ」の活動資金となります。アースグリーンファームでは同社のコーポレートサイトを手がけたデザイン会社とコラボしてWebショップの準備を進めています。
枝豆のような季節限定の青果物において、情報の拡散力が強いクラウドファンディングを活用する効果は大きいように思われました。今回の「ビールに合う枝豆」のように支援者から共感が得られやすい設定が成功のカギとなりそうです。