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コロナ禍で打撃を受けたメロン。自社ECサイト、クラウドファンディング、加工製品の商品化などの仕掛けで活路を見出す

新型コロナウイルス感染症の流行で、打撃を受ける作目や売り方があります。メロンを飲食店などに販売しているヒノン農業株式会社の影山雅也さんもその一人です。コロナ禍において、どのような経緯で自社ECサイトの立ち上げ、加工品の商品化、クラウドファンディングへの挑戦をしたのでしょうか。


天使音メロン

写真提供:ヒノン農業株式会社
2020年より世界的に大流行している新型コロナウイルス感染症による生活様式の変化で、大きな影響を受けている作目や生産者も数多くいます。静岡県浜松市でメロンを生産・販売している影山雅也さんも、もともと販売していた飲食店などの外食産業の営業自粛を受け、売上が大きく減少しました。しかし、甚大な影響を受けながらも、新たな取り組みに挑戦し続けています。

話を聞いた人

影山雅也
写真提供:ヒノン農業株式会社

プロフィール:ヒノン農業株式会社(販売)・株式会社まさ屋(生産) 代表取締役社長 影山雅也さん
所在地:静岡県浜松市
栽培品目:天使音(あまね)マスクメロン
経営面積:20a(ガラスハウス14棟+育苗ハウス)
従業員数:2名
資本金:ヒノン農業株式会社840万円、株式会社まさ屋370万円
販売:料亭、レストラン、ホテルなどの飲食店7割、そのほかデパートや個人顧客
ホームページ:ヒノン農業株式会社


天使音マスクメロンとは

天使音メロン
写真提供:ヒノン農業株式会社
影山さんは、天使音マスクメロンの生産・販売をしています。

天使音マスクメロンの母親は、ヒーロー・オブ・ロッキンジという白肉系の「クリームメロン」と呼ばれ、クリーミーな肉質と高い香りをもつおいしいメロンです。もともとはイギリスのメロンですが、2011年にその種がある研究所に保管されていることを知り、この種をさまざまな緑肉系のアールスフェボリットの種と掛け合わせて改良が繰り返されました。こうして誕生したのが、現代のクリームメロン「天使音マスクメロン」です。(参考:天使音メロンオフィシャルサイト

コロナ禍で売上は60%減

ヒノン農業株式会社
写真提供:ヒノン農業株式会社
総務省統計局がまとめた家計調査によると、2020年以降の食料消費支出額は2019年と比べ、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年3月以降は外食への支出額が大きく減少しています。影山さんは、約70%を料亭、レストラン、ホテルなどの飲食店へ、そのほかはデパートや個人消費者へ販売していたため、大きな打撃を受けました。
影山雅也さん
影山雅也さん
コロナが騒がれ出して、すぐに注文が減りました。売上は6割減くらいです。


2020年7月の調査では、農業者の半数が売上高にマイナスの影響があると回答し、2021年1月には、その割合は6割強に上昇しました。売上減少の理由として、単価や相場の下落が最も多く、次いで既往販路・出荷ルートの縮小・停止や直営所等の縮小・休業などが挙げられました。

参考:農林水産省|令和2年度 食料・農業・農村の動向

コロナ禍で新たに取り組んだこと|ジュレの商品化・自社ECサイト

天使音メロンジュレ
写真提供:ヒノン農業株式会社
新型コロナウイルスが流行しはじめた2020年2月時点では、すでにメロンの作付けが終わっており、2020年の4〜6月にはメロンがどんどん収穫できる状態でした。メロンは収穫してから常温で1週間、冷蔵しても1カ月しかもちません。廃棄しなければいけないたくさんのメロンを目の前にして、影山さんは次々に新しい挑戦に臨みます。


ジュレを商品化して作付け済みメロンの廃棄を免れる

収穫後に冷蔵しても最大で1カ月しか保存できないメロンですが、加工原料にすると、缶詰で3年ほど保管できます。そのため、収穫したメロンを原料としたジュレの開発に着手し、2020年4月の時点で製品化することができました。
影山雅也さん
影山雅也さん
以前よりメロンゼリーを商品化して、化粧箱に入れてギフト商材としてデパートなどで販売していただいています。しかし、単価が高いので、コロナ禍では簡単には売れないと思い、ちょっと贅沢だけれど単品でも手にとってもらいやすいジュレを作りました。

次の作戦を練る中で自社でのインターネット販売が検討に上がる

2020年7〜9月は作付け面積を減らし、次の作戦を練る機会にしました。12月はギフトシーズンで、平年はメロンの需要期です。
影山雅也さん
影山雅也さん
コロナ禍であっても12月には注文が入ることを見越して、12月に収穫が間に合う作付けをしました。このとき、2021年1月以降の販売を見越して、インターネット販売の検討をはじめました。


全国でも、2020年3月以降、インターネットによる通信販売での食料支出額が増えています。同年5月には前年同月比で8割増加し、その後も前年同月比で5〜7割程度増加しています。
参考:農林水産省|令和2年度 食料・農業・農村の動向

自社ECサイトの構築へ

天使音マスクメロン
写真提供:ヒノン農業株式会社
それまでも、インターネットで販売している業者3、4社を通じて天使音マスクメロンは販売されていました。
影山雅也さん
影山雅也さん
自社でインターネット販売をすると人件費のコストがかかります。売上と損益のバランスが取れるところが難しく、必ず売れる保証もないので、今まで手を出していませんでした。でも、不透明な状況が続く中、今までと違う方向性で試さないといけないと思い、インターネットでの販売も開始することにしました。


自社サイトの構築にいたるまで、既存プラットフォームへの出店・出品も含めてインターネット販売のさまざまな可能性を検討し、いろいろな人と話をしたと言います。最終的には「自分たちの思いとマッチした売り方をしたい」と自社でECサイトを立ち上げることにしました。
影山雅也さん
影山雅也さん
検討の段階で「自社サイトだけでなく、インターネットサイトなどいろいろなところに出店・出品した方が、多くの人の目に止まるよ」ともアドバイスをもらいましたが、以前からお付き合いのある飲食店さんとのやりとりや、注文の対応など煩雑な販売管理業務にプラスして自社サイトを運用しはじめると、ほかのサイトに出店して運用するなど手広くやることはなかなか難しいです。

クラウドファンディングの支援額は1,000万円以上

農産物クラウドファンディング
写真提供:ヒノン農業株式会社
12月の需要を見越して、ほ場の90%で作付けをしましたが、需要期を過ぎて2021年に入ると再び注文数が落ち込みました。そこで、影山さんは自社ECサイトの構築と同時に、新たな仕掛けに挑みました。それが、クラウドファンディングです。1カ月間に廃棄を待つメロンが1,000玉程度出てしまう状況において、返礼品として支援者に天使音マスクメロンを食べてもらい、栽培を維持していくことを目的としていました。最終的な支援総額は1,070万円、支援者は743名と大成功に至りました。

クラウドファンディングに取り組んだ理由

コロナ禍で困っている生産者も多いためクラウドファンディングに取り組んだからといって、必ずしも支援されるわけではないと躊躇(ちゅうちょ)したそうですが、実際に危機的な状況だったことも後押しして、思い切って挑戦しました。
影山雅也さん
影山雅也さん
とにかく少しでも多くの人に天使音マスクメロンのおいしさを知ってもらいたいという思いで、クラウドファンディングに挑戦しました。

農産物に適したクラウドファンディングサイトは?

クラウドファンディングを提供するサイトは多々あります。影山さんが農産物ならではの特徴をふまえて、READY FORを選択した理由は以下だそうです。

READY FORを選んだ理由
・既存商品でも可(サイトによっては、新商品のみ可)
・目標金額を達成したら、いつでも返礼品の発送可(サイトによっては、募集期間の終了後にしか発送できない)

影山雅也さん
影山雅也さん
メロンは既存商品ですし、収穫したものから順次返礼品としてご支援いただいた人にお送りしたかったので、READY FORにしました。

成功のために工夫したこと

クラウドファンディングにあたり、影山さんが意識したことは、「いかに自分たちの知り合いに協力してもらえるか」だと言います。
影山雅也さん
影山雅也さん
クラウドファンディング開始前に、お手紙やメールで友人や知り合いにお願いしました。皆さんのご協力のおかげで目標達成も早い段階ででき、一時期サイトのトップ画面に掲載してもらいました。そうすることで、知り合いからはじまった支援が、天使音マスクメロンを知らない人へも広がっていきました。見つかることは大切です。


こうして、作付けした分は廃棄することなく支援者に発送でき、数カ月分の売上になったと話します。
影山雅也さん
影山雅也さん
ホッとして、息ができたと感じました。

クラウドファンディングから自社ECサイトへの誘導

クラウドファンディング終了とほぼ同じタイミングで、自社ECサイトの天使音メロン/amane melon 公式ショッピングモールの運用がはじまりました。これは、クラウドファンディングの支援者へ、自社ECサイトを紹介して顧客を固定化する狙いもあったそうです。
影山雅也さん
影山雅也さん
不思議なことに、価格が高い商品がよく売れるんです。少しずつですが、確実にファンは増えています。

2021年の仕掛けは冷凍メロンの商品化

冷凍メロン
写真提供:ヒノン農業株式会社
クラウドファンディングでは、大成功をおさめましたが、そのあとも仕掛け続けなければいけないと影山さんは話します。今なお続く、新型コロナウイルスによる影響が大きいメロンの販売において、影山さんの次の取り組みは「冷凍メロン」です。


盛り上がったあと落ちきらないうちに次の仕掛けを

クラウドファンディングが終了すると、販売数も再び元に戻りました。それでも影山さんは前を向いて次の仕掛けに乗り出します。
影山雅也さん
影山雅也さん
今の状況が続くうちは、クラウドファンディングで盛り返した後に何もしないと、再び落ち続けてしまいます。ですので、落としきらないように次の仕掛けを作っていきながら、少しずつ上にのぼっていかないといけません。

原点回帰の冷凍メロン

2021年には、冷凍メロンを商品化することで、廃棄せずに活用できるよう工夫しているそうです。影山さんが、困難な状況でありながらも淡々と、しかし熱意を持って挑戦し続けられる理由は、何でしょうか。

それは、影山さんが天使音マスクメロンの販売をはじめた経緯にも関係ありそうです。10年ほど前までは、メロンを栽培して静岡県温室農業協同組合へ出荷していました。しかし、やりたいことが異なるという理由で、2012年に販路を一つも持っていない状況で組合を脱退し、天使音マスクメロンの栽培・直販に乗り出しました。
影山雅也さん
影山雅也さん
天使音マスクメロンを立ち上げたときは、販路ゼロで今よりも大変な状況でした。当時も冷凍メロンを作って販売していたので、それを思い出して、今回も冷凍メロンにしました。半解凍で食べるとおいしいですよ!

続く困難な状況の中で仕掛けをして活路を見出す

ヒノン農業株式会社
写真提供:ヒノン農業株式会社
長く続く困難な状況の中、影山さんはさまざまな工夫を重ねてきました。

現在も、数は減少してはいますが、飲食店からの注文も継続的に入ると言います。そのため、作付け面積を減らし、予約制で収穫できた時点で確保しながら、ロスなく販売していくことも検討しています。

また、並行して、加工原料や冷凍メロンとして保管するためには、加工費や冷凍倉庫代などのがかかってしまうことに留意しながらも、おいしい天使音マスクメロンをより多くの人にさまざまなシーンで食べてもらいたいと「ジュレ」や「冷凍メロン」などの商品開発をしました。
影山雅也さん
影山雅也さん
どれも、とても自信を持っているおいしい商品です。今仕掛けていることが、どのように動き出すかですね。


困難な状況であっても、お客さんのこと、自分たちの思い、経営状況を考えながら、新たな仕掛けを重ねて活路を見出す姿勢に感銘を受ける人も多いのではないでしょうか。

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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