果樹園三代目の農家ライター森田優子さんによる連載スタート!
20年勤務した小売業界で販売士・バイヤー・マネージャー・スーパーバイザーの経験と食農連携コーディネイターとしての活動から、『ながさき食べる通信』の取材を通して感じた農家や農業の「生の声」を鋭い視点で切り取りお届けします。
デザインは商品選びの決め手に!
6次産業化の基礎知識はこちらで。
パッケージに泣かされる農家たち
オリジナルパッケージを作ったものの、いざ使うときになって「失敗した」という経験をした農家も少なくないはず。今回は実際あった話から、失敗しないパッケージ作りを学びます。ぽろりん!?たまごに嘆く養鶏農家
このときだけでなく、ほかにも同様の事態が頻発したとのこと。ケースを作成する際、配送試験はしていなかったそうです。作り直したいところですが、倉庫にはコストダウンのため一括発注した在庫がまだまだあります。その後も注文の度に、手作業でケースの底にウレタンをカットして敷き、お客さまへの取扱説明書も同封しているそうです。この作業ロスといったら…。
定番には定番の理由があります。一般的な卵のパッケージ形状が長年使用されていることも納得できますね。
6mm違うだけ!?2つのびわケース
それらの資材の仕様とデザインはビワ農家の意見を聴きながら農協が行っています。あるとき、出荷用の箱を追加注文し、受取って作業小屋に持ち帰ったところ、別のサイズのビワを入れる箱とデザインが同じだったため、慌てて資材担当にたずねると、今年から同じデザインになり、箱の幅が6mm違うとのこと。よく問合せがあるとため息交じりに答えました。
農家ではこの箱にビワの出荷サイズのハンコを押すのですが、同じデザインになってしまったためサイズを間違えないように慎重に行わなければなりません。しかもデザインが変わったことを知らない作業者が担当すると、サイズを間違えた箱が山積みに。間違えた箇所にシールシートをカットして貼るという手間が発生してしまいます。多くの農家からのクレームにより、翌年には箱のデザインが変更されたのは言うまでもありません。
やってしまった!切ないラベルたち
中身がわからない瓶
「新しいラベルができたんです!」と見せてくれた加工品。「かわいらしくていいですね」と答えたものの、お菓子のパッケージデザインのようなラベルを見た時に、何の商品かわかる人はどれだけいるのだろう? という疑問がよぎりました。ポイントはわかりやすさ。「商品購入にはタイムラグを発生させてはいけない」といわれています。
流れだすインク
商品の持ち味を活かしたラベルが貼られた食品加工品。デザインは何ら問題もないように思えました。しかし、保存のために冷蔵庫に入れ、数日後、取り出したときに残念な気持ちに。ラベルのインクが湿気で流れていました。撥水紙(はっすいし)でない以前に水性インクが使われていたことに驚きました。ポイントは素材の吟味。できれば、瓶のリサイクル・リユースを考えるとラベルには再剥離シートを使用した方がいいですね。
なじみ過ぎたラベル
「知り合いにデザインしてもらったんですよ」と差し出された透明パウチパックに入った加工品。ラベルは、その作物の持つ素朴な温かさが表現されていました。ただ、もったいないことに、ラベルも中身も同色のため、ラベルが目立たずインパクトがありません。ポイントはラベルと商品の配色。プロのデザイナーであれば配色バランスを考えたデザインにしたでしょう。
見た目よし!機能よし!のデザインでお客さまの心をわしづかみに!!
パッケージの機能まで理解しているデザイナーは多くありません。どのようなデザインにしたいのか?明確なイメージと、農産物や加工品の特性・栽培方法・ストーリーを具体的に伝えましょう。商品・機能性・消費者ニーズを把握したコーディネーターへ依頼することも一つの手段ですね。
皆さんの丹精込めて作られたものが、パッケージデザインを介して、より多くのお客さまの手に取っていただけますように!
自然災害の相次ぐ昨今。自然とともに生きることをテーマにした次の記事はこちら。