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ボランティアを労働力としてカウントした農業経営が成り立つ条件は?|おしゃれじゃないサステナブル日記No.33


【連載】農業・食コミュニケーターとして活動する 紀平真理子さんの「農業と環境」をテーマにしたコラム「おしゃれじゃないサステナブル日記」。 第33回は「ボランティアを労働力としてカウントした農業経営が成り立つ条件は?」オランダ在住経験のある筆者が、現地の農業ボランティア事情を振り返ります。

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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オランダのボランティア

出典:Shutterstock
私がはじめてボランティアをしたのは、オランダ在住時です。夫の駐在に同行したのですが、保有していたビザは就労可能だったものの、妻は仕事をしてはいけないという社内ルールがあったため、賃金を得る仕事はできませんでした。

この状況に憤慨し、アムステルダムにあるボランティアエージェンシーに相談に行き、「私のキャリアに適したボランティア」を紹介してもらいました。そこではじめたのが、マイケル(仮)のビジネススクールでのボランティアです。そのほか、アクアポニクスのベンチャーNPOや、市民農園を運営する組織などボランティアのホッピングをしていました。

オランダでのボランティアについて


オランダのボランティア事情

オランダのボランティア
写真提供:maru communicate 紀平真理子
オランダのボランティア事情についてふれます。2013〜2018年の調査では15歳以上のオランダ人のほぼ半数が、少なくても1年に一度はボランティアをしています。

ボランティアに従事する人は、平均して週に4、5時間で、主な特徴は、「35〜45歳」「より高い教育と宗教的な教育を受けている人」「都市部在住者」です。さらに、オランダにバックグラウンドを持たない人ほど割合が低くなります。組織の種類としては、スポーツ関連や学校が最も多く、次いで育児や看護ケアなどで、直接的な農業への従事は含まれていませんでした。

参考:Vrijwilligerswerk en welzijn|Hans Schmeets and Judit Arends

調査では見えないボランティアの本音

ボランティア
写真提供:maru communicate 紀平真理子(ボランティアがタイルを敷く)
調査ではボランティアとして組織に貢献する主な理由は「好きだから」となっていますが、実際に友人たちと話すと「ボランティア経験を履歴書に書ける」ことから、ボランティアをおすすめされました。ボランティアって何?という感じですが(笑)。

企業や組織側の中にも、ボランティアを一労働力として考えているようなところも正直にいうと…ありました。

農業でボランティアに手伝ってもらう場合は何に気をつける?

アクアポニクス
写真提供:maru communicate 紀平真理子(なぜかすぐにクビになったアクアポニクスのボランティア)
オランダの農業分野でも、福祉的な意味をもつケアファームやCSA(コミュニティ・地域支援型農業)の要素を持つ小規模の有機農園などの場合は、ボランティアに支えられているケースが多々ありますし、ボランティアの数が従業員の倍以上いる場合もあります。しかも、同じボランティアの人が週に何度も働きにきています。ご興味ある方は、以前書いた「オランダ農場 ボランティア事情」もどうぞ。

オランダの農業分野におけるボランティア事情から、ボランティアに継続的に手伝ってもらい、成り立つための条件についてまとめました。日本でも参考にできるところがあるかもしれません。

都市型農業

農作業にボランティア(無給)でも携わりたいと考える人はアムステルダムやロッテルダムなどの都市部には多い気がします。一方で、畑が近くにあり農業の仕事があったり、一軒家が多く庭で家庭菜園ができたりするような地域では、ボランティアは成り立ちにくいです。また、大学など学校の近隣でも人が集まりやすいと、当時はいわれていました。

ケア要素がある

農福連携と関連していますが、オランダの場合は精神的にまいってしまった人をボランティアとして受け入れ、農作業にケアの要素を組み合わせているケースが見受けられます。しかし、この場合は、受け入れ側もメンタルについてなど勉強する必要があります。また、ボランティアが突然来なくなってしまっても仕方がないと割り切れる気持ちも必要そうですね。

履歴書に書けるスキルとワクワク

特に若い世代は、この点にグッときている気がします。ボランティアの定義とはかけ離れる気がしますが、手伝ってくれる代わりに定期的に栽培勉強会に参加できたり、イベントのコーディネートを任せてみたりなどボランティアが楽しんで参加でき、かつスキルを知識を得られる機会を作ることが大切です。これは、CSAのコンセプトともリンクします。

まとめておいて何ですが、パート従業員を雇用した方がいい気もしてきました。生産者側がボランティアとの関わりを楽しめるかどうかが一番かもしれません。

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おしゃれじゃないサステナブル日記

紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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