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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
今回はそんなビワの木を鉢植えや地植えで育てる方法や注意点などを紹介します。
ビワについて教えてくれたのは
お話を聞いたのは、住友化学園芸株式会社の牛迫さん。園芸のプロにビワの木の正しい育て方を教えてもらいました。
家庭園芸用薬品・肥料・資材等ならびに花卉・緑化関連資材・家庭用日用品雑貨等の製造と販売を行っている会社。家庭園芸用殺虫剤・殺菌剤・除草剤・肥料のほか、くらしに関連するさまざまな商品を扱っています。
住友化学園芸株式会社:https://www.sc-engei.co.jp/
ビワの基本情報
ビワは温暖な地域での栽培に適しており、寒さに気をつければ家庭の庭でも果実の収穫が期待できる果樹です。自宅に植えるにあたって、まずはビワの寿命や風水上の意味など基本情報を押さえておきましょう。和名/英名
枇杷(ビワ)/Loquat、Japanese medlar花言葉
温和、治癒、密かな告白、愛の記憶品種
田中、茂木、大房、なつたより、長崎早生、希房、瑞穂、陽玉など寿命
樹自体の寿命がどのぐらいかははっきりとはわかりません。栽培用のビワの場合、カミキリムシ幼虫に食い荒らされたり、病気が出たりして段々と実の付きが悪くなるので40~50年ぐらいで新しい苗木に更新します。
ビワの効能とビワの葉の活用方法
ビワの葉は漢方薬としても利用されてきた生薬です。手軽に作れるお茶やエキスに挑戦してみるのもおすすめです風水・言い伝え
「ビワの木が庭に植えられた家は不幸が起こる」「ビワの木は庭に植えるな」「ビワの木は縁起が悪い」という言い伝えを聞いたことがありませんか?これはビワは大きな葉をつける広葉樹のため、大きく育つと庭が薄暗くなることから派生した迷信です。ビワは昔から「大薬王樹」と呼ばれ、栄養価が高く薬用としても重宝されてきました。はやく元気になってもらいたいと病人が住んでいる家に好んで植えられたことで、病をイメージさせるようになってしまったのかもしれませんね。
ビワの栽培カレンダー
以下はビワの栽培時期の目安です。地域やその年の気候・温度によって調整してください。2月下旬〜4月:植え付け
5〜6月:収穫
6〜9月:剪定
5〜6月:育苗
ビワの育て方
ビワは成長とともにかなり高さが出るため、地植えにするなら場所は慎重に選ぶことが大切。寒さには弱く気温が-3度を下回ると実つきが悪くなりますが、鉢植えにして冬場は室内に移動させれば東北や北海道などの寒い地域でも栽培できます。ここからは、ビワの詳しい育て方を紹介します。鉢植え(プランター)と地植えどちらで育てる?寒冷地なら鉢植えで
狭い場所や関東以北の寒冷地でビワを育てたい人は鉢植えがおすすめです。地植えのほうが手入れは楽ですが、かなりの大木に育ちます。庭などでコンパクトに育てたい場合も鉢植えが適しています。ある程度広い庭があり、大きく育てられる場合は地植えにチャレンジしてもいいでしょう。
地植えの育て方
種から育てる(育苗)
苗は食べ終わったビワの種からも育てられます。種は洗って茶色の薄皮を剥いておきましょう。容器に湿らせたキッチンペーパーなどを敷いて種を置き、上からもキッチンペーパーをかぶせ、種が半分浸かるくらいの深さまで水を入れます。発根までキッチンペーパーが乾かないよう注意し、直射日光の当たらない明るい窓辺においておきます。水とキッチンペーパーは時々交換して清潔に保ちましょう。
10日程度で発根、20日程度で発芽するので、種まき用の土を入れたポットに穴を掘って移し替えます。種まきから約1年、高さ40〜60cmまで育ったら地植えにできる頃合いです。
植え付け
関東以西では寒さが緩んだ2〜3月が植えつけの適期です。地植えの場合、深さと幅が50cm四方の植穴を掘り、腐葉土を適量加えてから掘り起こした土と混ぜて埋め戻して、そこに苗木を植えつけます。鉢植えで一般的な用土をブレンドして用いる場合は、赤玉小粒7~8:腐葉土3~2の割合で配合しましょう。市販されているブレンド済みの培養土も効果的です。
ビワの木は日光を好みます。植え付ける場所や鉢植えを置く場所は日当たりの良いところを選びましょう。
肥料
肥料は一年に3度ほど与えましょう。まずは2~3月の寒い時期に元肥を、次に6月ごろに追肥、9月ごろに再度追肥が必要です。鉢植えには化成肥料、地植えには有機物肥料が適しています。鉢植え(プランター)の育て方
植え付け
育苗までの手順は地植えにする場合と同じです。時期は2〜3月、日当たりの良いところに植えましょう。水やり
鉢植えのビワは、表面が乾いて白くなったら底から水が少し出るくらいたっぷり水やりを行いましょう。地植えの場合は基本的に水やりしなくても大丈夫ですが、日照りが続く夏など、状況によっては必要です。
肥料
肥料の与え方は地植えにする場合と同じで一年に3度が目安です。2~3月の寒い時期に元肥、6月ごろに追肥、9月ごろに再度追肥します。鉢植えには即効性のある化成肥料の方が適しています。
植え替え
鉢植えの場合、ずっと同じ大きさの鉢に植えていると根詰まりを起こすことがあります。2~3年に1度、ひとまわり大きい鉢に植え替えましょう。植え替えの適期は2~3月中旬ごろです。通気性を高め、根詰まりを防ぐ役割があります。
ビワの剪定時期と剪定方法【図解】
剪定は実つきを良くするために欠かせない作業です。一気に剪定すると実がつかないことがあるため、毎年少しずつ剪定するのがポイント。ここでは剪定の時期や具体的な方法を紹介します。ビワの剪定時期
剪定は適した時期に行うことが重要です。時期を間違えると最悪実や芽をつけなくなる危険もあるので気を付けましょう。実をつけたことのあるビワの木の剪定は8月下旬~9月ごろ、まだ実をつけたことがないビワの木の剪定は2月ごろに行います。2月はビワの花が咲くころ。この時期に剪定をすれば、間違えてその後実のなる花を誤って切ってしまうことを防げます。
高く育てるなら「透かし剪定」
ビワの木は発育が良く、地植えのものは高さ8~10mほどにもなります。高さに余裕がある場合は「透かし剪定」という方法で剪定を行いましょう。透かし剪定とは、現在の樹形を維持したまま一部の枝を完全に切り落とす剪定方法のこと。枝の重なりや偏りを解消することで風通しや日当たりがよくなります。切り取るのは不要な枝なので、花芽がついていても問題ありません。透かし剪定の手順
1.幹に日光が当たるよう全体のバランスを見て剪定する枝を決める
(内側や下に向かって伸びている枝、上下に重なり合った枝、極端に細い枝、枯れた枝など)
2.枝葉を側枝の根元から切り落とす
3.枝の切断面に癒合材を塗る
※癒合材を塗ることで切り口を保護して雑菌の侵入を防げます。
低く育てるなら「切り戻し剪定」
樹高を抑えてコンパクトに育てたい場合は「切り戻し剪定」を行いましょう。透かし剪定との違いは、枝を根元ではなく途中で切り落とすところ。枝の途中で切ると分枝が促され、枝ぶりが充実して花数や果実を増やす効果もあります。切り戻し剪定
1.花芽を落としすぎないように注意して切る枝を決める(長すぎる枝や樹形を乱している枝など)
2.幹に対して外向きに生えている葉や芽のすぐ上で枝を切る
3.枝の切断面に癒合材を塗る
※外向きの葉や芽の上で剪定することで立枝の発生を防げます。また枝に対して垂直にハサミやノコギリを入れると切り口の表面積を小さくでき、樹へのダメージが少なくなります。
ビワに発生する病害虫
ビワは比較的に病害虫に強いとされる果樹ですが、被害や症状が出た時に適切な対処ができるよう発生しやすい病害虫についても知っておきましょう。病気
ビワの葉に斑点が出るごま色斑点病、灰斑病などは症状としてはよく見かけますが、収穫量に影響するほどの被害はありません。やっかいなのはがん腫病で、実に黒いカサブタ状の症状が現れます。これは雨水などで広がる細菌性の病害で、一度発生してしまうと対処は困難です。
害虫
害虫で問題となるのはカメムシやカミキリムシの幼虫です。カメムシはビワの実の汁を吸って、吸った箇所がスポンジ状になってしまいます。カミキリムシの幼虫は木の幹を食い荒らします。病害虫におすすめの薬剤
GFベンレート水和剤
病害虫対策におすすめなのが、水で薄めて噴霧器で散布するタイプの殺菌剤です。GFベンレート水和剤は、散布するとビワの木全体に有効成分が行き届き、病原菌の侵入を防ぐ予防効果と、侵入した病原菌を退治する治療効果を発揮します。ベニカ水溶剤
ベニカ水溶剤は有効成分が葉や茎から吸収されて植物体内にいきわたり、殺虫効果が持続する(アブラムシで約1カ月)すぐれた浸透移行性殺虫剤です。有効成分は葉の表から裏に移行するので、葉裏に隠れている害虫や直接殺虫剤がかかりにくいところにいる害虫も効果的に退治できます。
ビワの木の増やし方|挿し木や接ぎ木で
ビワの木は接ぎ木や挿し木で簡単に数を増やすことができます。枯れてしまった時に備えて予備の苗を作っておきたい、一部が枯れたり病気になってしまった時に元気な部分を切り取って復活させたい、といった場合にやり方を知っておくと便利です。適期は生育期に入る直前の2~3月。ほかの果樹に比べて比較的に簡単なので、ぜひチャンレンジしてみましょう。挿し木
挿し木は、植物の枝や芽を土に差し、苗を増やす方法です。その際、植物の定着を良くするため発根促進剤を使うとより効果的です。挿し木の方法
1.ビワの枝が密集した部分から枝を採取し、挿し穂を作ります。今年伸びた若い枝を選ぶとより効果的です。
2. 挿し穂を15~20cmの長さに切ります。土に挿す下の部分を斜めにカットします。
3. 土に挿す前に2日程度水に挿し、充分に水分を吸収させます。
4. 鉢に植え、半日陰に置いておきます。
5. 翌年の春、しっかり根が張ったら地面に移植します。
おすすめの発根促進剤
接ぎ木
接ぎ木とは、植物の枝や芽などを切り取り、ほかの植物の台木に接着させてひとつの個体にする増やし方です。台木を通してしっかりと養分を吸収できるため、生育が促進されるというメリットがあります。接ぎ木の方法
1. ビワの木から10cmほどの枝を切り落とし接ぎ穂とします。
2. 切り口を斜めにカットし1~2時間水に浸します。
3. 台木を高さ10~15cmで水平に切ります。
4. 台木に接木ナイフで縦に切り込みを入れます。
5. 台木の切り込みに接ぎ穂を差し込み、接ぎ木テープで固定します。