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出会ってしまったと思った地、バスクは美食だけではない?|おしゃれじゃないサステナブル日記No.23


【連載】農業・食コミュニケーターとして活動する 紀平真理子さんの「農業と環境」をテーマにしたコラム「おしゃれじゃないサステナブル日記」。 第23回は「出会ってしまったと思った地、バスクは美食だけではない?」。食の都として注目を浴びるピレネー山脈西部の町バスク。この地に魅せられた筆者の偏愛ぶりが浮き彫りに!?

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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ラコンチャ

写真提供:maru communicate 紀平真理子
前回の「【オランダ回顧録】肉とマイケル(仮名)(No.22)」は、オランダでのボランティア体験記でした。

今回は、ヨーロッパの中でもオランダから少し南西に移動して…スペインのバスク地方のお話です。何を隠そう、私はバスク地方が好きで何回か訪問しています。はじめにその地に降り立ったのは、2009年、一人旅です。「土地に出会ってしまった」という感覚は、この時だけかもしれません。掲載する当時の写真は、フィルム写真をスキャンしたものなので、画質がよくありませんがご容赦ください。

なぜバスク好き?

バスク料理
写真提供:maru communicate 紀平真理子
なぜバスクが好きか?と聞かれたら、「バスク語が世界一難しい」「一部の地域は自治権を得ており、長い間地域内の食材だけで伝統的な食文化を守ってきた」などありますが、やはり「究極の独自性」ではないでしょうか。真似しようと思っても、その土台が違うことを痛感させられます。

ちなみに、大学の卒業論文でスペイン内戦中の1937年に「自由と独立の象徴」だったバスク地方のゲルニカを空から大襲撃(パブロ・ピカソのゲルニカで描かれています)されたこと、その後のフランコ政権下ではバスク語の使用禁止などの政策が取られ、バスク民族抵抗運動が生まれたことなどについて書こうと思っていたのですが、親から「就職できないぞ」と猛反対を受け、泣く泣く「サルバドール・ダリとシュルレアリスム」に変更したことを記憶しています。それもどうなのか、というツッコミは受け付けませんが。それほど、バスク地方には思い入れがあります。今回はバスクへの偏愛を語りつつ、バスクの農業についても少しだけ言及しようと思います。

バスクの都市ビルバオはポスト工業都市

スペインのバル
写真提供:maru communicate 紀平真理子
最近、「おしゃれ」「サステナブル」「美食」「高級レストランがある」などのキーワードでバスクへ旅行や視察に行く方が多いようです。どれも間違っていないのですが、1997年にバスクの中心都市ビルバオにグッゲンハイム美術館ができるまでは、ビルバオには工場が乱立して、労働争議が絶えませんでした。さらに、バスクは地縁・血縁重視の旧来型の価値観を持った地域ですが、そこにこの超現代的な文化施設が、うまい具合にマッチングし、ポスト工業都市として生まれ変わり、バスクのイメージアップ戦略が功を奏し、現在のおしゃれポジションを構築しました。新しいバスク料理は1970年半ばに始まったといわれています。

美食地域だけど、農業は簡単でなさそう

マルミタコ
写真提供:maru communicate 紀平真理子(Noマルミタコ, Noライフ)
農業に関しては、5000年ほど前の新石器時代から行われていますが、主に低地で発展していき、山岳部では羊などの牧畜、その後複合農業へと移行していきます。北部の海沿いの地帯では、主に家畜用のトウモロコシ、カブ、牧草とシードル(バスクのお酒用)のリンゴが栽培され、南部の山岳地帯では小麦とワイン用のブドウが栽培されています。

実際に、ビルバオ、サンセバスチャンだけでなく、小さな街々にも何回か訪問しています。確かにどこで何を食べてもおいしい。でもそこまで多様な作目が栽培できるようには思えないので、少し不思議です。

次回はバスクの彫刻家、「エドゥアルド・チリーダから環境を学ぶ」をテーマにブログをつづります。

おすすめバスク本

最後に、バスクに関して参考文献として使用した書籍を紹介します。バスクの歴史など全体像を理解するには『バスクとバスク人/渡部哲郎(平凡社新書)』がおすすめです。また、洋書ではありますがバスクの料理本『País Vasco. Cocina Tradicional/Jesus Llona Larrauri and Garbine Badiola(everest)』 やバスクの歴史をかわいいイラストを使って描いた『Orhipean. The Country of Basque/Juan Carlos Etxegoien Juanarena (著)、Margaret L. Bullen (翻訳)』も。ご興味あれば、ぜひどうぞ。

バスクとバスク人

著者:渡部哲郎
出版社:平凡社新書
発行年:2004年

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おしゃれじゃないサステナブル日記

紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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