認定農業者になって、よりよい農業経営をめざそう|制度内容・要件・新規就農者にとってのメリットなど解説

認定農業者になるには、認定要件を満たし農業経営改善計画をきちんと作成すれば、却下されることはほぼありません。認定農業者になると、補助金などの支援策を受けられるメリットもあります。認定農業者の基準、申請方法、法人化した場合の手続き、認定新規就農者との違いなど幅広く解説します。


認定農業者

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新規就農を視野に入れると、「認定農業者」や「認定新規就農者」という言葉を見聞きするようになるでしょう。「手続きの方法もよくわからない」「認定農業者にならなくても就農できるなら必要ない」と考えて二の足を踏む方もいるかもしれません。しかし、新規就農者が認定就農者になることで、資金面でのメリットが享受できるだけではなく、ネットワークの構築や勉強会などにも参加でき、視野が広がる可能性があります。

認定農業者とは

認定農業者
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認定農業者とは

農業者が自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画である「農業経営改善計画(5年後の経営目標)」を市町村などに提出し、市町村から認定を受けた農業者が「認定農業者」です。ただ、認定を受けるだけではなく、認定農業者は5年後の農業経営を見据えて、どのように改善し発展させていくのか、またどのような方法でそれを実現していくのという点を考え続ける必要があります。認定農業者は、計画達成に向けたさまざまな支援を重点的に受けることができます。

認定農業者の数

平成31年3月末時点で、23万9,043経営体が認定農業者を取得しています。

認定農業者になる目的は?

認定農業者になると、特に資金面においてさまざまな支援を受けることができます。しかし、支援を受けること自体を目的とするのではなく、あくまでも「よりよい農業経営」を実現することが目的であることを念頭に置きましょう。

認定の対象者は?

農業者は誰でも認定農業者の対象になります。具体的には、以下の通りです。

年齢・性別

年齢や性別の制限はありません。

専業・兼業

兼業農家であっても、経営改善を図ろうと考えている場合には認定の対象です。

経営規模

経営規模にも制限はありません。現状の経営規模が小さい場合でも、市町村基本構想で示す目標所得などを目指して、経営改善を図ろうと考えている場合は、対象になります。

営農類型

営農類型にも制限はありません。農地を所有しない場合であっても、認定の対象です。

組織形態

個人、法人(農業法人以外の法人、農外からの企業参入含む)も認定の対象です。また、非農家であっても、新規就農を目指す方であれば対象になります。

認定基準は?

認定農業者の農業経営改善計画の認定を受ける条件は以下の通りです。

(1)計画が市町村の構想に照らして適切なものであること
(2)計画が農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであること
(3)計画が達成される見込みが確実であること

認定農業者になるには

認定農業者になるための手続き方法は、農業経営改善計画を作成し、市町村に提出します。具体的には、次ページの通りです。


農業経営改善計画の作成

まずは、農業経営改善計画書を作成してください。記載する内容は以下の通りです。

・経営規模の拡大に関する目標(作付面積、飼養頭数、作業受託面積など)
・生産方式の合理化の目標(機械や施設の導入、圃場の連担化、新技術の導入など)
・経営管理の合理化の目標(複式簿記での記帳など)
・農業従事の様態などに関する改善目標(休日制の導入など)

農業経営改善計画のフォーマットは、農林水産省のホームページよりダウンロードできます。
認定農業者制度について|農林水産省

農業経営改善計画を市町村などに提出

市町村などに提出すると、認定基準に従って審査が行われます。ちなみに、個人の認定農業者が法人化した場合は、改めて法人名義で経営改善計画の認定を受ける必要があるため注意が必要です。

市町村から認定後、認定書が発行される

審査の上、認定基準を満たしていると判断されると、認定農業者として市町村から認定書が発行されます。この後、さまざまな支援策を受けることができるようになります。

認定新規就農者とは何が違うの?

認定新規就農者は、就農後5年以内であれば、認定を受けることができます。ただし、すでに「認定農業者」の場合は、「認定新規就農者」になることはできません。認定新規就農者に申請ができる人は以下の通りです。また、認定新規就農者になると、新規就農者であっても無利子で融資を受けられる青年等就農資金などの支援策を受けられます。

1.原則18歳以上45歳未満
2.効率的かつ安定的な農業ができる知識や技能を身につけている場合は65歳未満
3.

法人の場合は、(1)または(2)が役員の半数を占めていること


認定農業者が受けられる支援策は?

認定農業者
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新規就農者が認定農業者になることで、経営上のメリットとなるさまざまな支援策が受けられます。

スーパーL資金が受けられる

スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)は、認定農業者が利用対象です。就農時に必要な設備投資が対象事業として幅広くカバーされています。また、農業事業だけでなく、農地に太陽光パネルを設置する「ソーラーシェアリング」の設備投資などにも活用できるため、ユニークな農業経営を視野に入れている方にも。さらに、実質無利子の「人・農地プラン」や、無担保・無保証人制度も設けられています。


強い農業・担い手づくり総合支援交付金の対象

強い農業・担い手づくり総合支援交付金は、産地の収益力の強化と、担い手の経営発展のために農業経営に必要な農業用機械・施設の導入に活用できる補助金制度です。
その中でも、営農や就農に必要な機械投資や農地の造成など幅広く活用できる「融資主体型補助事業」の助成対象者のうち、新規就農者については認定新規就農者または認定農業者に限ります

農業経営基盤強化準備金で節税

農業経営基盤強化準備金制度の適用条件は、青色申告で確定申告を行なっている認定農業者と認定新規就農者です。これは、認定農業者の場合は農業経営改善計画に、認定新規就農者の場合は青年等就農計画に、この特例を活用して取得しようとする農業用固定資産が記載されていることが要件です。

この準備金制度を用いて積み立てをした場合、個人の場合は必要経費、法人の場合は損金にできます。また、対象交付金をそのまま用いて資産を取得した場合などは圧縮記帳が可能です。いずれも節税のメリットがあります。

農業者年金の保険料の補助を受けられる

農業者年金とは、農業者を対象にして国民年金に上乗せできる年金です。認定農業者もしくは認定就農者で青色申告で確定申告を行なっている場合は、支払い保険料のうち、国庫の補助を受けられます。35歳未満の場合は100%の補助、35歳以上の場合は月額の被保険者負担額14,000円に対して、6,000円の補助制度があります。また、認定農業者・認定新規就農者と家族経営協定を締結し、経営に参画している配偶者も同様の補助を受けられます。




地域や全国の認定農業者との情報交換も

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資金調達や節税などのメリットに加えて、認定農業者になると、地域の農業の担い手としての意識を持ち、安定的な農業経営の確立に努めている農業経営者たちとのネットワークを築くことができます。また、全国の認定農業者とも情報交換できる機会にも参加できます。

全国認定農業者協議会とは

全国認定農業者協議会とは、農業の担い手としての意思を集結させた自主、自発的な全国組織です。地域を越えた認定農業者たちで、情報の交換・共有を行い、経営改善に取り組む機会が設けられたり、農業政策に対する意見の公表や相互研鑽に取り組んでいます。

さまざまな認定農業者とのつながりを持つことで、特に新規就農者にとっては視野が広がるよい機会になるでしょう。

全国農業担い手サミット

全国農業担い手サミットは、1998年より毎年各県が持ち回りで開催しています。サミットを通じて、全国の認定農業者同士の交流や自主的な活動が促進されています。2019年には、静岡県で全国農業担い手サミットが開催され、担い手からのメッセージや若い担い手の事例発表、視察を通じて全国の認定農業者が交流を深めました。

認定農業者は、資金面と人的ネットワーク構築にメリットあり

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新規就農時に認定農業者もしくは認定新規就農者になる手続きは、きちんと農業経営の計画を立てていれば、そこまで煩雑ではありません。また、認定農業者にしか受けられない補助金や制度などの支援策もあります。さらに、資金面でのメリットだけではなく、地域や都道府県を超えた認定農業者と情報交換する場にも参加することができるので、農業経営者たちとのネットワークを構築することもできます。

認定農業者になることをきっかけに、将来を見据え「持続可能な農業経営とは何なのか」、またそれを実現する方法について思案することが大切で、これこそが認定農業者になる本質的な目標です。

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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