女性の活躍についてもう少し突っ込んだ話は、今後、月間連載「農業なくして持続可能な社会なし」で本腰を入れて書くとして、今回は「女性農家」がらみのできごとをご紹介しますね。
【週間連載】家族経営農家の日常を配信!これまでの「ハッピーファミリーファーマーズ日記」はこちら
熊本県の女性農家が集合!
先日、「熊本県農業女子プロジェクトメンバーと九州農政局の意見交換会」に参加してきました。農林水産省が7年前に始めた「農業女子プロジェクト」には、企画段階から参加させていただいていますが、いつのまにか全国に700人も会員がいる大きなネットワークに成長しています。さすが行政。すごいなぁ。
これまで熊本県のメンバーで集まったことがなかったので、九州農政局が今年の夏前から企画していたのですが、新型コロナウイルス感染拡大で3回も延期して、今回ようやく開催されました。
リアル農業女子のお出まし
意見交換会、開催当日の朝。娘が珍しく「今日は幼稚園に行きたくない」とごね始めました。大人だって「今日は気分がのらないなぁ」っていう日があるので、我が家では体調の良し悪しは関係なく、誰でも「リフレッシュ休暇」が取れることになっています。ただし、自分でやることや過ごし方を決める・連日は不可・1日リフレッシュして、翌日は仕事なり学校なりに戻ること、という条件付きですが。
そんなわけで、「休みたい」と言ってきた娘に「今日は農業女子会に行くけど、それに一緒に行くのでいい?」と聞いたら、ニッコリ笑って、そそくさと準備を始めたではありませんか。母より先に化粧も着替えもばっちり終えて、退屈しないためのオモチャや小道具もしっかり準備。というわけで、急遽、母娘での参加が決定しました。
集まったのは、20〜50代までの幅広い年齢層の6人。もとい、10代以下もいましたね(笑)。
娘は「農業女子」というにはおこがましい年齢なので参加をちゅうちょしていたのですが、図らずも「リアル農業女子の引率者」として参加することになったわけです。しっかり話の輪に加わって、何やら忙しそうにメモをとっている5歳女子。
女性農家が集まれば
農政局さんにとって参考になる話があったかどうかはさておき、女性農家が6人も集まれば、話が盛り上がらないはずはありません。まぁ一番盛り上がったのは、嫁や姑の話だったりもするわけですが、50代の女性農家が経験した苦労は、40代以下にはあまり当てはまらず。つまり、後継者不足で嫁が大事にされるようになってきているようで、時代と共に社会が変化していることが垣間みえました。
事業継承の話では、私は義父からではなく叔父からの継承だったり、第三者継承を見越して技術を覚えているという20代の女性農家もいました。
いずれにせよ、この会で女性農家たちの自由な発想や行動力は存分に発揮できたと思っています。「女性活躍」というお膳立てをせずとも、女性農家を好きにさせてくれるだけで多方面に力を発揮できるのになぁ、と改めて思いました。
農業シーンでのお助けアイテムも体験
会場には、イセキ農機の女性社員さんたちが、ドローンやアシストスーツを展示していました。試しにアシストスーツを使ってみると、思ったほどの「軽っ」という感動こそなかったものの、背中や太ももが守られている感じで、長時間重い荷物を持つ作業をする場合は役に立ちそうです。私は自他共に認める力持ち。重たいものがあると、夫が「持って」と言ってくるほどです(笑)。でもまぁ、歳は取ってきているわけで、来年には息子3人が家を出てしまうので、30キロの米袋を抱えるときにはこんなお助けアイテムが欲しくなる日も遠くはないでしょう。
女性農家の役割や可能性を発信していきます
私は女子高出身で、女性農家たちによるNPO法人の代表や農業女子プロジェクトの初期メンバーだったりと女性と多く関わっているようですが、どちらかというと男友達といるほうがずっと楽だと思っています(笑)。しかし農業の世界の中では、「女性農家」の役割が大きいと思っていて、例えば、旦那さんが農業を続けるか続けないか、子どもが農業をしたいと思うかどうかなど、農家の女性たちが重要なカギを握っているのではないでしょうか。
そんな発信が刺さったのか、現役の女子大生から卒論を書くための電話インタビュー依頼がきました。卒論のテーマは「日本の農業における女性の可能性」。クロスカントリースキーの選手を続けながら、農村を回って農業の現場を見てみたい、というチャーミングな学生さんでした。
女子力は低い私ですが、「女性農家」の仲間や次世代を増やすために、こんな風に今後も「ハッピーファミリーファーマー」の暮らしを発信し続けたいと思います!
【毎月更新!】月間連載アーカイブ「農業なくして持続可能な社会なし」
【週間連載】家族経営農家の日常「ハッピーファミリーファーマーズ日記」
大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」