これまでの「ハッピーファミリーファーマーズ日記」
銀座の料理人さんがウチに来た
「仕事愛」といっていいのかわかりませんが、仕事を失くした人の、それでも仕事を愛してやまないことを感じたできごとがありました。ウチのお米を使ってくださっていた「喰い切りひら山」という銀座のお店が、コロナ禍の影響で閉店してしまいました。こんなご時世ですから仕方がないとはいえ、すてきなお店がなくなってしまったのは本当に残念です。
そのお店のオーナーシェフだった料理人の平山恵介さんが、「お店をやっていたときは東京を離れられなかったので」といって突然、お米の発送作業を手伝いに来てくださったのです。
原点回帰?とお手伝い
お米は日本人の主食。生きる原点です。お米が育つ田んぼは、それを見て育っていなくても日本人の多くが持つ原風景といえそうだし、現に私にとってはそうでした。言い過ぎですかねぇ。
とはいえ、平山さんは数ある食材の中でもお米に特にこだわり、お店を閉めた直後にそのお米が育つ田んぼにやって来られたわけですから、あながち言い過ぎでもないのかも知れません。
気配りに感動
発送作業中は、段ボールをテープで留めたり、発送用の伝票を貼るのに手間取っているようでしたが、それでも楽しそうに作業をされていました。適所でこちらが指示する前に、「これをやっておきましょうか」と、さりげなく聞いてくださる平山さん。我が家の発送作業は、これまでに数えきれないぐらいの方が手伝ってくれましたが、平山さんのような気遣いをされる方は初めてかもしれません。銀座という特殊な場所でお店をされていたからこその、気配りや目配りなのでしょう。素晴らしいなぁと感動!
ここからが本当の仕事愛
発送作業のお手伝いだけではありません。「自分は料理しかできませんから」といって、私たち家族のためだけに、平山さんが料理をしてくださることに!お米はもちろん我が家のお米。食材は、畑や道の駅でそろえた地元産のもの。完成したのは、前菜3品を含む全8品!!それはそれは、恐るべき手際とさすがの味付けでした。なんという贅沢!なんという愛!!
料理という仕事を本当に愛し、私たち生産者にも愛を向けてくださる料理人さんの姿に、感動しっぱなしでした。
平山さんは、一緒に食事をした女子大生たちや、私の息子と娘に将来の夢を聞いたり、彼だからこそできるアドバイスをくださったり。子どもたちにとっても、本当に大きな刺激となったことでしょう。なんというか、「人を笑顔にしたい」という想いで料理をされていることが、ヒシヒシと伝わってきました。
「喰い切りひら山」の平山恵介さん、感動をありがとうございました!いつかまたお店が再開したら、ぜひ伺いたいと思います。
愛されている人が、愛せる人
家族だけじゃなく、地域の人からも、お米のお客さんからも、友人たちからも愛されている末娘は、ウシやアイガモやニワトリが大好き。自分が受けた愛情を「家畜」と呼ばれる動物たちに注いでいるんだろうなぁと思います。コロナ禍で人との距離が離れがちですが、やっぱり最後は愛ですよね!
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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」