- Miyuki Tateuchi
アメリカのミシガン州に居住中。海外の農業情報や普段の生活を通して感じた食農トピックを紹介します。祖父が農家だった影響もあり、四季折々の「旬」を大切にしたいと思っています。…続きを読む
今回より、アメリカで暮らす筆者が日々の生活で感じた農事情、身近な農体験を不定期でレポートします!
アメリカのファームで感じたこと
私が住んでいるのは、アメリカのミシガン州。カナダにも近く、冬はマイナス20℃になることもある寒さが厳しいところです。北海道と緯度がほぼ同じで、郊外に向かうと農場が広がる雰囲気もどことなく似ています。もともと、農業(というか食べ物?花も好き)に興味があり、日本でも牧場に行ったり、花を見に行ったり、果物狩りにもよく行っていましたが、ここでは車を20分走らせると行ける近隣の農場(ファーム)が複数あるので、暇さえあれば出かけています。
ここに来て驚いたのが、ファームと地域の関係の深さ。地元の農場では、1年を通してさまざまなイベントが開かれ、地域住民が頻繁に足を運んでいます。ファームには動物もいて小さい子どもがエサやりをしたり、小学生が学校の授業で訪れ、作物の生育を観察したりする「教育の場」ともなっています。そして、ファーマーズ・マーケット。近隣の街でも、ミシガンのリゾート地でも、春から秋まで毎週開かれているので、新鮮な野菜や果物を農家の方から直接手に入れることができます。
アメリカの中でも都市か郊外かの地域差はもちろんあると思いますが、生活の中にファームがあり、季節の移ろいを感じられるのは大きな財産だと感じます。
収穫の秋、コーンメーズが登場
9月初めのレイバーデー(労働者の日)という祝日が終わった後から9月半ばにかけてオープンするのが、コーンメーズ(Corn Maze)と呼ばれるトウモロコシの巨大迷路です。1990年代初めに最初の迷路が作られ、今や全米で800以上の迷路が作られるともいわれています。迷路のデザインや企画を請け負う専門会社もあり、動物や風景のほか、歴史上の人物、宇宙をテーマにしたものなど、カスタマイズでオリジナルの作品が制作されています。日本にも田んぼアートがありますが、航空写真で見るコーンアートは圧巻です。
制作会社によると、迷路の広さは大体8-12エーカーの間に収まるそうです(1エーカーはフットボールコート約一つ分の広さ。日本人には想像が難しいサイズ感ですが)。ちなみに、ギネス認定の世界最大のトウモロコシ迷路は、2014年にカルフォルニア州で作られた60エーカー(24.28 ヘクタール)のものとなっています。
トウモロコシに囲まれる!実っているコーンもある!!
話には聞いていたものの、1年前に渡米して昨シーズンは体験していなかったので、どんなものか確かめに行ってみました。今年は新型コロナウィルスの影響で開催を見送ったところもありますが、オープンエアのため人数制限をしながら開催するファームも多数ありました。イベント全般が制限されている現在、「地域の人が楽しみにしている秋のイベントを中止したくない」という思いもあるのでしょう。実際に迷路をまわっての感想は、「方向感覚が試される。地図が読めないと難しい」です。入り口で地図を渡され、いくつかあるチェックポイントを頼りに、ひたすら歩いていきます。トウモロコシは背が高く全長2mをゆうに超えるので、周りはまったく見えません。
アメリカのドラマで子どもがコーンメーズの中で迷子になるというシーンを見たことがありますが、あながち嘘ではありません。うちの小学生子ども2人も、興奮のあまり一気に駆け出し、姿が見えなくなったため、名前を呼ぶということが何度かありました。入場ルールの中にも「11歳以下は保護者の同伴が必要」と書いてありました(やっぱり)。
また、通路が意外と整備されていません!雑草が生い茂っていたところもあり、草を踏み分けながら進みました。人が通ってなさそうなところは、「順路じゃない」と疑った方がよいでしょう。少しヒンヤリとするくらいの気候の中、あっちに進むか、こっちに進むかのワクワク感の中、気持ちの良い汗をかきました。
実っているコーンもありますが、これは人間が食べるスイートコーンではなく、動物のエサになったり、地面にそのまま埋められたりするそうです。
ファミリー向けでは、謎解きゲームと組み合わせている迷路もあります。謎を解くという目的意識があると、ゲーム性が加わって俄然楽しみが増えます。我が家でも誰が地図を持って先に進むか、ミステリーの犯人は誰なのかで盛り上がりました。
なお、今回は体験しませんでしたが、夜の部を設けている迷路もありました。懐中電灯を持っての迷路は、林間学校の肝試しをトウモロコシ畑でやるイメージでしょうか。時期的にも、これからのハロウィンのアトラクションにぴったりです。
思い出と共にあるファーム
子ども向けと思いきや、難易度が高い迷路もあり、誰もが楽しめると感じたトウモロコシ迷路でした。実際、子連れの家族以外にもデート風のカップル、ひまわり畑の撮影ついでに来たと思われる女友達同士のグループも見かけました。年によってテーマが異なるので、子どものころから「家族のトラディション(伝統)」として毎年出かける人もいるでしょう。子ども時代の楽しい記憶は、大人になってからも思い起こされ、世代を超えて引き継がれていく―。近隣のファームが地域の人々に笑顔を与え、大切な思い出の場所となることを強く実感した、今回の体験でした。
これからの秋の季節、アメリカではいろいろなイベントが続きます。次回は、ハロウィンならではのカボチャに焦点を当てます!
Miyuki Tateuchi プロフィール
就職情報会社、外資系人事コンサルティング会社を経て、2017年よりアグリコネクト株式会社でリサーチ業務に従事。2019年より夫の転勤に伴い、アメリカのミシガン州在住。成長期真っ只中の2児の母。農業と地域、世界の料理などへの興味を元に、情報発信していきます。
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