これまでの「ハッピーファミリーファーマーズ日記」
台風9号と10号の恐怖と食い意地
いやはや、恐ろしかった…。繰り返し「最大級の警戒を」との呼びかけが村内放送で流れる中、徐々に強まる風と雨。怖がりの夫は早々にビールを飲んで寝てしまい、風が吹こうが雨が降ろうが、子どもたちはいびきをかいていつも通りに夢の中。私は1人、寝つけないまま夜中まで起きていました。
台風が去った後は、暴風の中で不安を和らげるために娘と一緒にせっせと作った料理やスイーツで、食卓は豊かに♪我ながらしぶといというか、食い意地が張っているというか(笑)。
「警戒が大げさ過ぎたのでは?」との報道もありましたが、それは結果的に上陸しなかったからで、朝になり、「心配したほどじゃなくて良かった!」と、笑顔で家族やご近所さんと話すことができたのは何よりでした。
さぁ、稲刈りだ!倒れた稲はすぐに収穫
家や周辺に大きな被害はなくて良かったのですが、すでに穂が垂れていた稲は、強風に耐えられずベッタリと倒れてしまいました。収穫するには去年より1週間ほど早いので、ちゃんと熟しているかどうかが心配でした。ただ、このまま放っておくとワラが腐ったり、地面についたお米から芽や根が出てきたりして収穫できなくなってしまうので、台風10号が去った翌日から稲刈りをスタート!
息子たちは学校に行っているので、稲刈り体験したい女子大生と5歳の娘と私が、今回の稲刈りメンバー。といっても、コンバインが刈りやすいように、田んぼの四隅の稲をカマで切る以外は、田植えほど人手はいりません。
黄金色に輝く稲穂をすさまじい音を立てながら刈り採っていくコンバインと、美しい風景に見とれる時間も。コンバインに乗った夫は、あぜ道から飛ぶ黄色い声援に、気恥ずかしそうな表情を浮かべていました。
Farm to Table
O2farmは、産直農家です。作ったお米は、自分たちで精米・袋詰めもして、お客様のお宅までの発送手配もします。新米ということで、いつもよりたくさんのご注文を頂き、発送作業はてんてこ舞い。でも、2年連続で不作だったことを思うと、無事に平年並みの収量が採れた今年は、忙しくても気持ちは前向きです。それでも台風やイノシシによって倒されたことで収穫できなかった稲穂が、まだたくさん田んぼに落ちているのですが、たわわに実った稲穂って本当に魅力的なんです。届いた新米と共に、稲穂を手に取って収穫の喜びを一緒に味わって欲しいと思い、発送準備のかたわら、女子たちに集めてもらい、お米と一緒に箱に入れました。皆さんからどんな反応が返ってくるか楽しみ!
新米はついついおかわり♪
新米は食べ始めたら止まりません。「これはもう不可抗力&ダイエットとか知らんしっ!」ってぐらい、みずみずしさといい、香りといい、新米って“違う”んです。新米を初めて食卓に出す日、去年収穫したお米と、クズ米と呼ばれる規格外のお米の3種類を炊いて、おにぎりにしました。ブラインドテストをしてみたところ、もちろん家族全員、正解。新米シーズンの到来に備えて、夏に少し体重を落としておくのもまた、正解かもしれませんね。
クズ米も宝
新米ができたタイミングで、友人が試行錯誤の末に商品化にこじつけた「米粉」も到着。我が家のお米を精米する過程で出てくる、クズ米。「たとえ粒が小さかったり欠けたりしていても、これは無農薬でつくった“お宝米”だ!」といって、友人が苦労を重ねて、きめの細かい米粉にしてくれました。
ウチが作ったコシヒカリをそのまま挽いているので、一般的な米粉用の品種より甘みは強いそう。ただ、パンにするにはうまくいかず、本当に多くの試行錯誤をして、シフォンケーキやスコーンにたどり着き、これらも販売を始めています。原材料にこだわっている分、手頃な価格ではありませんが、オンラインショップのお結び88でも販売しているそうなので、ぜひお試しくださいませ!
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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
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