【連載第5回】食とエネルギーの自給率アップでリスクに備える|農業なくして持続可能な社会なし

人出は増えたが食費も増えた…。自家発電、自家栽培と自給率アップのために着々と準備中の大津愛梨さん。熊本の女性農家の日々の農作業や環境、家族の話を中心に、世界で注目を浴びる“SDGs”も絡めた連載は、農家さんだけじゃなく必見です!


菜っ葉を収穫する女の子

提供:O2Farm
九州のほぼど真ん中、熊本県南阿蘇村という場所で米農家をしているO2Farm(オーツーファーム)のEriこと大津えりと申します。「農業者こそ“SDGs(持続可能な開発目標)”を達成するための立役者!」という視点で連載をしています。

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自分や家族を守るために

屋根の上のソーラーパネル
提供:O2Farm
まだまだ先の見えない新型コロナウイルスの世界的な感染拡大。それによって世界同時多発食糧危機が起きるのではないかという予測も聞きますし、経済の行方もさまざまな説があります。
正直いってこの先どうなっていくのかまったく予想がつきませんが、それなりに大変なことになるでしょうし、ワクチンが開発されるまではまだしばらく不安な状況が続くことぐらいは予測できます。そんな中、今回は自分や家族の身を守るために取り組んでいることを紹介したいと思います。

まずは、食糧自給率アップ!

菜園でホウレンソウを育てる
提供:O2Farm
「食糧自給率を向上する」というと大義名分のように聞こえますが、「ステイホーム」が3カ月も続いたので食費がすご過ぎて、これはやっぱり自分で食糧を作るほかない!という境地に至っただけのこと。なにしろ食べ盛りの男子3人+肉体労働者(夫と私)+農業インターン生2人がどこにも行かずに家にいたわけですから、考えただけでも恐ろしく(笑)、考えなければもっと恐ろしい…(苦笑)。
春先からずっと、裏庭に生えているタケノコや山に自生している山菜などもせっせと食べていましたし、そもそも米を買わなくていいというありがたい環境があるにもかかわらず、悲鳴をあげたくなるほど高額な食費です。

早速、しばらく手を抜いていた菜園を復活させるために、畑を耕していろいろ種をまき、ブルーベリーも植えました。鶏の平飼いも再開予定です。食育効果ももちろんありますが、一番の目的の節約効果がすでに出始めています。

自分で育てた野菜や米はおいしいに決まってる!

手作りのおいなりさん
提供:O2Farm
食べること・体を動かすことで1日が過ぎていく男子陣に対し、作ること・食べることで1日が過ぎていく女性陣。
あ、これジェンダー論としてではまったくなく、田舎に住んでいる&農業をしていると、男性の活躍する場面が多いと思っていまして。一時は「男女共同参画」に関わる国の委員も務めていたんですが、男には男の家事(家の仕事)があると思ってるので、これについてはまた別の機会に書きます。

料理を作る笑顔の女性
提供:O2Farm
一概にはいえませんが、性差としてやっぱり女性たちは育てることとか料理することに興味がありますよね。菜園と料理は今のところ、主に女性陣が担当してますが、それによる不平等や不満はあまり出ていません。男性陣が薪用の木を切ったり、重いものを運んでくれたりしていますからね。

次に、エネルギー自給率アップ!

外でソーラーパネルを作る少年たち
提供:O2Farm
食べ物さえあればいいか、というと実はそうでもなく。現代生活に欠かせない電気も自給しておけば、電気代の節約になるだけでなく、いざという時の明かりや充電ができるわけです。
20年近くも「再生可能なエネルギーを増やしていきたい」と活動をしてきているのですが、エネルギーを自給するということは環境に優しいからではなく、「自分や家族の身を守るため」という意味の方が大きいんじゃないかと今は思っています。福島原発事故はもちろんのこと、熊本地震やパンデミックがあったことによって、考え方が変わってきたかもしれません。

10年前から我が家の屋根で太陽光発電をしていて、熊本地震後はその電気を「自立運転」に切り替え、日中は炊飯器やテレビに使っています。さらに、昨年買い替えた電気自動車に充電できるよう、縁あって譲って頂いた新古品の太陽光発電パネルを組み立てて設置しました。近々、夜間は車から家に給電できるようになる予定です。

「食+エネルギー」にとどまらない「食×エネルギー」

食品乾燥機を眺める少女
提供:O2Farm
最低限必要な食べ物とエネルギーを確保するだけじゃなく、せっかくなら新しい価値も生みたい!と思うのは単なる欲張り!?いえいえ、これも保身のためです。

熊本地震の後、私が住んでいる地域でノロウイルスが流行してしまい、避難所での炊き出しが中止。避難所生活をしていた方には、乾物かレトルト食品しか提供できない時期がありました。
それを教訓として、農産物を乾燥させたりレトルト加工しておけば、いざという時は非常食になるはず!さらにそれを再生可能なエネルギーでやりたい、という想いを持ち続けています。そこで、太陽光発電パネルを増設したのを機に、乾燥機も買ってみました。

乾燥機でタカナやハーブを乾燥させる
提供:O2Farm
将来的にはあか牛の経産牛でビーフジャーキーを作りたいんですが、いろいろとハードルが高いので、まずはタカナやハーブを乾燥して、それを粉にしてスイーツづくりから始めています。
乾燥タカナやハーブを入れたクッキー
提供:O2Farm

ステイホームから見えてきた「いざという時こそ我が家」

テントとソーラーパネルと米袋など
提供:O2Farm
今一番怖いのは、避難所暮らしです。新型コロナウイルスの感染リスクが高まりますから。だから、何が起きてもできる限り家にいられる状況を作っておきたい。仕事や勉強は家でもできる可能性がみえてきたし、新型コロナウイルスが終息しても「家にこもれる状況」をキープしておけば、台風などの自然災害や暴動やストライキなどがあっても心強いですよね。

我が家の場合は、たとえ家が倒れてもビニールハウスやテントがあるし、保存がきく米はあるし、野菜は菜園にあります。もし畑が使えなかったらプランターで野菜を育ててもいい。電気は家でも納屋でも自家発電できるし、持ち運びができる太陽光発電とバッテリーもあるので、大抵のことでは避難所に行かなくても済むはず。熊本地震の時にもらったソーラーランタンも、かわいいうえに実用的でしたよ。できることからの「家にこもれる準備」を、ぜひともおすすめします!

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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
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大津 愛梨
大津 愛梨

慶応大学環境情報学部卒業後、夫と共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里の南阿蘇で農業後継者として就農、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培している。女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長、里山エナジー(株)の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。農業、農村の価値や魅力について発信を続ける4児の母。

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