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これまでの「ハッピーファミリーファーマー日記」
「さぁいよいよだ!」と思える瞬間をみんなで共有
無農薬米と微農薬米の栽培がメインの我が家にとって、田植え前後の約1カ月間が1年で最も忙しい季節。新型コロナウイルスというまったく予測していなかった理由で、家族総出でこのシーズンを乗り越える結果となり、「ハッピーファミリーファーマー日記」という連載のタイトル通りの日々を過ごしています。来年は高校と中学に進学する予定の息子たちと、こんな風に全員一緒に農作業をするのは、今年で最後になるかもしれません。
苗箱(なえばこ)という単語さえ知らない、元都会っ子でしたが何か?
農家の跡取り(=夫)と恋に落ち、めでたく結婚したものの、就農する前に海外生活なんぞをしてから、南阿蘇村で初めて米づくりをしたのは18年前のこと。栽培面積が今の5分の1程度だった当時でさえ、苗箱へのタネまきはやはり家族総出の一大イベントでした。就農して数年間は「苗づくりの名人」といわれていた義理の祖父に教わりながら、手作業でタネまきをしていたものです。その後、栽培面積が増えたので、まずはご近所さんと共同で、さらにその数年後には「播種機(はしゅき)」と呼ばれる機械を購入し、我が家だけでタネまきをするようになりました。
1年に1回しか使わない機械ですが、手作業のころと比べたら「もう後には戻れないな」と思います。
子どもたちに一番人気の作業はタネまきらしい
2週間水に浸けて、その後カラカラに乾燥させ、芽を出せる状態にしたタネをいよいよ苗箱にまきます。播種機があれば、事前に土を薄く敷いておいた苗箱を順番に入れると、タネと水と覆土(ふくど)がのせられて出てきます。といっても、タネや土や苗箱をどんどん投入していくので暇なわけではありませんが、息子たちによれば「楽しくやれる農作業ランキング」の上位に入る作業とのこと。ほかには、牧草を混ぜたり運んだりする作業も楽しいんだそう。なるほど、なるほど。
そして苗箱を軽トラックの上に乗せて、ビニールハウスまで運びます。
軽トラックから苗箱を降ろし、ビニールハウスに隙間なく並べていきます。
完成!芽が出るまでは保湿・保温のために銀色のシートを苗箱の上にかぶせ、文字通り「温室育ち」をする苗。どうか、どうか、無事に芽が出て、おいしい米に育ってくれますように!!
オマケ|田んぼの準備をしていたら、息子たちが参戦!
タネをまいて苗の準備をする一方、代掻き(しろかき)といって、田んぼに水を入れ、土と混ぜる作業を進めるわけなのですが、植える前の今しかできない「田んぼバレー」を息子たちが決行。実は、ビーチバレーボールを通じて出会った私たち夫婦は、就農した翌年ぐらいから、南阿蘇でできた仲間たちと一緒に田んぼバレー大会を始め、毎年ゴールデンウイークの恒例行事として開催していたんです。これは子どもの遊びではない結構ガチなもので、そのときばかりは大人が泥んこになって本気でバレーするのを、子どもたちが半ばあきれて見ているというものでした。
ここ数年は、大人の体力の低下が主な原因で開催していませんでしたが、「俺らも一回やりたかった!」と息子たち。道具は揃ってるし、バレー部に入っているお隣さんの高校生も休校中だし、っていうんで、突如思い立って田んぼバレーを楽しんでいました。代掻きの目的である「土と水をしっかり混ぜる」結果になったことは間違いありません(笑)。
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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」