これまでの「ハッピーファミリーファーマー日記」
普段と変わらない我が家の暮らし
新型肺炎の感染が世界的に広がる中、野外で過ごす時間が長く、人口密度も極端に低い環境にある我が家は、特に普段と変わることのない日々を過ごしています。むしろリトルファーマーズたちが家にいるので、普段より充実しているといっても過言ではありません。そんな暮らしの方が良いとか悪いとかそんなことではなく、「そんな暮らしもあるのか」とか「家族で農業も悪くないな」とか思ってくれる人が1人でも増えたらうれしいと思い、あえて普段と変わらない我が家の暮らしを発信します。
阿蘇地域の春の風物詩「タカナ折り」
阿蘇地域の春の風物詩といえば、「野焼き」と「タカナ折り」。野焼きというのは草原に火を入れて草を焼く作業で、これをすることであの広大な草原が維持されます。私が住んでいる地区の野焼きはこれからなので、また別の週に報告します。もう1つの風物詩であるタカナ折りとは、辛みのある野沢菜のような菜っ葉の収穫作業のことで、ポキッと折って収穫することから「タカナ折り」と呼ばれます。タカナのベストな採りごろは1週間ぐらいで、それを逃すと茎が固くなってしまいます。今年は暖冬の影響か、例年より2週間ほど早く収穫期が訪れました。
18年前に私が南阿蘇に移り住んだころはまだ義理の祖父母が健在で、普段は菜園仕事には手出しをしない義祖父や市内に嫁いでいる伯母も手伝いに来て、「一家総出」で採りごろの短いタカナを収穫していたものでした。
今年は助っ人が!感動すら覚えたタカナの収穫作業
子どもたちが小さいうちは一緒になって収穫をしていましたが、祖父母が他界して子どもたちも学校やクラブで忙しくなったここ数年は、私が1人でせっせと採っていました。でも、1人で収穫すると採っても採ってもなくなりません。ところが今年はひょんなことからフリーの作業員が3人もいるではないですか!
アウトドア用のスピーカーを持ってきて、今風の曲をガンガン流しながらのタカナ折り。これまでとは全く違う様相ではありましたが、はかどるのなんの。たった数時間でみるみる畑のタカナがなくなっていき、感動さえ覚えました。
タカナを採った後に塩漬けする作業も全員で。来年からも「タカナ休暇」や「田植え休暇」があればいいのに、と半ば本気で思う不謹慎な母なのでした。
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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
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