しかし、すべての例で成功しているわけではありません。中には、投資をしたものの失敗してしまった事例もあります。農業の6次産業化をするうえで、知っておきたい課題や問題点、リスクについて洗い出してみましょう。
6次産業化の課題とリスク
しかし、同時に次のような課題やリスクも抱えています。
6次産業化の課題|1. 利益が生まれるまでに時間がかかる
6次産業化への取り組みをはじめて利益が生まれるまでには、思っていたよりも長い時間がかかることもあります。例えば、果樹園から収穫した規格外品の果物をジャムにする場合、商品の開発、パッケージデザイン、販売ルートの開拓、加工場の確保(場合によっては建設)など、商品を販売するまでにさまざまな準備が必要です。
場合によっては、準備期間に数年を要することもあるでしょう。販売して商品が売れるようになっても、投資した資金を回収するまでに長い時間がかかるかもしれません。
6次産業化の課題|2. 消費者視点の難しさ
しかし6次産業化を考えるのであれば、「ニーズ調査」「消費者視点での商品づくり」「販売ルートの開拓」「消費者に響くマーケティング」など、これまで生産者として必要とされていなかった分野への取り組みが必要になります。
6次産業化の課題|3. 長期的な計画に基づく組織的な経営が必要
自分が持つビジョンを可視化して、各部門で共有しながら目標を管理する、企業的な動きも求められます。生産部門、加工部門、販売部門でビジョンと目標を共有して、長期的な目標が達成できるように部門間で協力する、経営資源に見合った範囲でビジネスを展開するなど、会社経営の基礎力も必要になるでしょう。よくある失敗例から見える6次産業化の問題点
成功のヒントは失敗の中から見つかるものです。よくある6次産業化の失敗例を見ていきましょう。
生産計画の甘さでビジネスチャンスを逃す
想像以上の反響で売れすぎてしまい生産が追い付かなくなってしまった、農産物が思ったように収穫できず、契約分の商品を用意できなかったなど、生産計画の甘さからビジネスチャンスを逃す例もあるようです。商品の販売開始後すぐに大口の契約をして、安定供給ができずに契約が打ち切られてしまうこともあります。確実に生産できる量を把握して、販売量が生産量に見合うように計画を立てる必要があります。
ニーズを見誤った商品開発で失敗
今のトレンドは何なのか、ターゲットに合った商品のサイズは?など、ニーズ調査を踏まえたうえで商品を開発しましょう。
商品PRをおろそかにして顧客減
意外とコストがかかる商品PR。経費と手間の削減のために顧客へのダイレクトメールの送信をやめたところ、とたんに顧客が減ってしまった例もあります。ダイレクトメールに限らず、「自社と自社の製品」のPRは大切です。ホームページのこまめな更新、SNSアカウントの運用など、顧客接点を多く持ち顧客離れを防ぎましょう。
施策なしのインターネット販売で失敗
近年流行のECサイトも、施策なしでは売れません。「ネット販売なら売れる」とインターネット販売に乗り出したものの、掛けたコスト分も回収できず撤退してしまう例もあります。インターネット販売を始めただけでは、顧客は獲得できません。検索最適化、SNSや実生活を通してのPRなど適切な施策を行わず、サイトに掲載しているだけでは人気商品を生み出すことはむずかしいでしょう。
6次産業化は計画、生産、販売、PRが成功のカギ
農業の6次産業化は、投資して商品を開発してリリースするだけでは成功しません。農業以外の専門分野に対する知識も、積極的に取り入れることが大切です。専門家の意見を取り入れながら長期的な計画を立て、生産から販売までのトータルプロデュースを心がけ、事業を成功に導きましょう。