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第3回目はじゃがいもさん。全世界で親しまれる野菜ですが、私たちが食べているのは実ではありません。種子もほとんど取れません。その意味で「子どもを産まなくても、生産性が高い」という生き方を体現している、頼もしい新時代のお母さん、じゃがいもさんをご紹介します。
これまでに紹介したヤサイさんたち
じゃがいもなあの人
6月になると、そんな彼女に似た生き方をしている野菜が収穫期を迎えます。定番野菜じゃがいもさんです。
種イモから育てるじゃがいも
じゃがいもさんの生き方はそのまま育て方によく表れています。早春になるとじゃがいもの植え付けのシーズンです。植え付けに使う「種いも」は、スーパーでも売られているじゃがいもを腐らないように保存したもので、じゃがいもそのものなのです。その種いもを半分に切って、土に埋めるとじゃがいもができます。通常野菜の種は種子と呼ばれる小さな粒ですが、じゃがいもには種はできないのでしょうか?私たちが食べているのは実?根?茎?
じゃがいもさんのイモの部分は実でも根でもありません。ではいったい私たちはじゃがいもの何を食べているのでしょうか?じゃがいもは根菜に分類こそされますが、食べる部分は地下茎という茎が膨らんだ「塊茎(カイケイ)」にあたります。つまり正しくは、私たちはじゃがいもの茎を食べていると言えるのです。じゃがいもの実のありかは…
じゃがいもさんも他の植物同様、春に花を咲かせます。この頃の畑は大根の花や菜花も満開、その花にモンシロチョウやミツバチが群れを成して飛び回ります。まるで小さな雲のように見えることも。しかし、じゃがいもさんの花にはまったく虫たちが寄り付きません。
かっこ良過ぎる…。媚びないじゃがいもさんの花
これはじゃがいもさんが受粉や種子に頼らない生き方をしているからです。茎塊の細胞分裂と肥大によって自分と同じクローンをたくさん作ることができるので、花を咲かせ、受粉して、種子を作らなくても問題がないのです。
チョウチョの飛ばないじゃがいもさんの花畑を見ていると、「わざわざ甘い花を咲かすのは古い時代の名残りよ」と何とも潔いささやきが聞こえてくるような気がします。
じゃがいもさんの実は、あの野菜にそっくり
そんな花同様、花が咲いた後にできる実もほとんどなりません。はる農園調べでは、種イモ50個植えて実が数個とれたという状況です。じゃがいもを栽培したことがある人でも、じゃがいもさんの子どもである実を見たことがある人は少ないようです。じゃがいもさんとうまく付き合う
新しい生き方を選んだじゃがいもさんとうまく付き合うには、その生き方を尊重してあげるのが一番。つまり、花は咲く前に取ってしまいます。これはナスやトマトなどの一般野菜では考えられない作業です。しかし、じゃがいもさんにとって花を咲かせるためにエネルギーを浪費するより、実に栄養を蓄えた方がずっと効率が良く、収量もUPします。人を温かく見守り、育ててきた母性の塊
肉じゃが、カレー、コロッケ…じゃがいもさんがいる一皿はどこか温かく優しい味がします。ボーダーのない愛で世界を支えてきたじゃがいもさんが持つ、真の母性がそう感じさせるのかもしれません。
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