夏越しのならい【つれづれ・のら日誌】


夏を乗り切る農家の工夫や、自家製ぬか床レシピも!森にぐるりと囲まれたはる農園の農園主、はるさんが感じる季節の移ろいや生き物たちの姿、”ただそこにあるもの”と暮らしを重ねていく楽しみなどをつづる徒然日誌、第2回。6月の入梅から7月末の大暑に向かうころの、雨や暑さの中の農家の暮らしをご紹介します。

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はる農園

はる農園 千葉県印西市で無農薬の野菜を作る農家。その他、狩猟、養蜂、木こり、大工仕事など、風土づくりをテーマに活動中。 facebook : https://www.facebook.com/inba.vege.farm/ instagram : harunoen84…続きを読む

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青紅葉

出典:写真AC
森にぐるりと囲まれたはる農園の農園主、私(はるさん)が感じる季節の移ろいや生き物たちの姿、”ただそこにあるもの”と暮らしを重ねていく楽しみなどをつづる徒然日誌。
第2回は6月の入梅から、7月末の大暑に向かうころのお話。雨や暑さの中の農家の暮らしをご紹介します。

はるさんの就農体験記や野菜の個性に迫ったコラムはこちら。

夏草空に伸びる

草
出典:写真AC
5月末の立夏に植えた苗を潤すように、6月には梅雨がやってきます。一雨ごとにナスやキュウリが葉を広げ、側枝を伸ばし、ハウスの中のトマトも花が咲き始めます。この時期は一年でも最も忙しい農繁期。雨の時はトマトの芽かき、にんにく干し、晴れの日はナスの芽かき、キュウリの誘引、ネギの土寄せ、じゃがいもの収穫…。

そして一番の大仕事は、野菜ではなく、草。週3回は草刈りと草取りに追われます。1円にもならない仕事ですが、きれいになった畑は清々しいもので、底知れない達成感があります。

雨とたわむれる

雨の日に収穫や草刈りをしていると、雨の音はぽつぽつから、さーさーへと変わり、たまにザーザーへと変わっていきます。気分屋の雨の声は、外で聞いているととてもおしゃべりです。頭や手も雨のシャワーを浴びてさわやか。水たまりを踏むとパッシャン、パッシャンと足元で水が遊んでいます。

子どものころ、水たまりで遊んでいたときのように、雨の日の野良仕事は童心を優しく呼び起こしてくれます。梅雨時期の優しい雨の中の作業も時に楽しいものです。

雨が似合う花

タチアオイ
出典:写真AC
長雨が続く空を見ていると少し憂鬱になるのを知ってか知らずか、野には清々しい花が咲きます。立派な茎をすっくと空に伸ばし、真っ赤な花をラッパのように広げたタチアオイは梅雨の到来を知らせます。

花菖蒲
出典:写真AC
同じ時期に上品な白と紫が特徴の花菖蒲も見頃を迎え、神社や自然公園で菖蒲祭りが開かれます。

あじさい
出典:写真AC
6月の中頃には、さわやかな白や青のアジサイが咲き始めます。

曇天続きで、せわしない農繁期。道沿いに咲く花に目を止めて、しばし清々しさを味わうようにしています。ふと心が落ち着き、自然と体も緩んでいきます。

夏の初めの厄払い

夏の祓い
出典:写真AC
農作業もひと段落する6月末は神社で茅の輪をくぐり。茅の輪くぐりとは、茅で編んだ輪をくぐり、心身を清めて厄災を払い、無病息災を祈願する夏越の祓を象徴する行事です。こうすることで自然と春作に追われてきた気持ちに一端区切りがつきます。秋作の種まきの準備が始まる7月には、心が次に向かっていく気がします。

夏にも負けず

毎年猛暑や酷暑が続きますが、日中も畑に出ていることが多い私。それでもこれまで熱中症になったことはありません。クーラーも本当に暑い夜に数時間お世話になるくらい。農業をして8年、ずいぶんとバテない体になったものです。

一汁一菜と温ビール

粗食
出典:写真AC
夏を越えるための私の夏のならいがあります。

一つ目は飲み物は決まって常温かホット。氷やアイスを食べると、次の日の作業で体が重くて動かないので基本的には食べません。最近ではビールも常温またはレンジで温めて飲んでいるほど…。二つ目は、塩分はみそ汁と漬物でとること。夏の食事は一汁一菜。分づき米、みそ汁、ぬか漬けというシンプルなものですが、一番力が出ます。

私の場合、この2つをやっていればしっかりと汗をかけて、体の中から涼しく夏を過ごすことができています。

【農家の一皿】昔ながらのぬか漬け

ぬか漬け
出典:写真AC

ズボラ農家でもできるシンプルぬか漬け

夏野菜は毎朝収穫しますが、2割ほどは大き過ぎたり傷があるものが出てきます。畑つくから戻ると、その大き過ぎるナスやキュウリを、これまた大き過ぎるくらいのぬか床にそのままズボズボと突っ込んでいきます。お昼ごろにはさっぱりした浅漬けに、夜には香りと味がしっかりとしたぬか漬けになります。

ぬか床づくりは土づくり。決め手は常温!

ぬか漬け
出典:はる農園
ぬか床は乳酸菌という生き物の住処、土と同じで、そこに住む生き物にとって住みやすい環境にしてやることが大事です。ぬかにつく乳酸菌は25℃くらいがお好み。冷蔵庫に入れると活動が弱くなるうえ、低温が好きな別の乳酸菌も出てきます。それが酸味や水っぽさの原因になることもあるようです。

農園では素焼きの壺にぬか床を作ったら、暑いときは30℃を越える畑のコンテナキッチンに置きっぱなしに。食べるとき、大げさに野菜をかき混ぜてやれば、特別な管理はいりません。

<材料>
・煎りぬか 1kg
・水 1kg
・海水天日塩 150g
・捨て漬け用 野菜(キャベツ、大き目のキュウリなど水分が多いもの)
・お好みで 昆布、唐辛子

<ぬか床の作り方>
1. ぬか床用のつぼに煎りぬか、水、塩を入れてよく混ぜ合わせる。ぬかを強く握って、水分が指の間から少し出てくるくらいがちょうどいい水分です。
ポイント:常温でぬか床を作るときは、素焼きの壺がおすすめです。壺内部の温度や湿度が一定に保たれるので菌が安定して増えやすいからです。
2. 捨て漬け用野菜を入れて、表面を手で整えて空気を抜き、ふたをする。
3. 1日1回混ぜて、捨て漬けを始めて1週間ほどしたら、お好みのの野菜入れてぬか漬けにします。

春から初夏にかけてののら日誌はこちら。農家のレシピは自家製ちりめん山椒!

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