- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
そこで今回は、ベテランガーデナーのおふたりに、ベランダ菜園と畑(露地栽培)の台風対策について伺いました。
家庭菜園の台風被害について
まずは、台風によって家庭菜園にどのような被害が起こり得るのか、チェックしておきましょう。台風の豪雨被害
露地栽培では、台風の豪雨で菜園の畝全体が水に浸かると排水が遅れ、病気が発生してしまいます。また、収穫間際の果実や作物が雨に当たり、実が割れてしまう被害も。まだ育ち切れていない苗や蒔いたばかりの種は、雨水によって流されてしまうこともあります。ベランダ栽培では、プランターから流れ出た用土で排水口が詰まり、ベランダに水があふれるという被害が聞かれます。
台風の暴風被害
露地栽培で使用するマルチや不織布は、風で飛ばされると電線に引っかかるなどして非常に危険です。ベランダ栽培でも、グリーンカーテンや遮光ネット、小型のプランターなどは暴風で簡単に吹き飛ばされてしまいます。また、台風の暴風は栽培中の野菜にも被害を与えます。7~8月の台風では、トマトやトウモロコシ、ナスといった背丈が高い夏野菜の茎が折れ、倒れるという被害があります。9月初旬の台風になると、ちょうど芽が出たタイミングのダイコンやキャベツ、ブロッコリーなどの夏まき野菜が風で飛ばされたり、夏まきで育苗・定植したハクサイの苗の茎が折れてしまったりという被害も。さらに、畑のハウスが台風の強風で倒壊するという被害例もあります。
ベランダ菜園の台風対策|プランターの片付けなど
ここでは、マンションなどのベランダで家庭菜園を楽しんでいる人に向け、事前の台風対策について紹介します。ベランダ菜園で事前に行うべき台風対策を、菜園作りに熟知したベテランガーデナー・sanaさんに伺いました。sanaさん
農業研究センターで6年間、大豆と稲の研究作物の栽培及び実験助手業務に従事。その後、屋上ガーデン・屋上菜園などの管理業務を経て、植物ライターに。植物・園芸サイトやフリーペーパーなどで活動。AGRI PICKでは新規就農者のための野菜の栽培方法や農業経営者の取材を執筆されています。
ベランダ菜園の事前準備|物品編
小さな鉢植えやプランターを移動する
風で飛ばされやすい小さな鉢植えやプランターは、強風で飛ばされ、近隣に思わぬ被害を与えてしまう危険性があります。比較的雨の当たらない軒下にまとめるか、室内に一時的に避難させましょう。プランタースタンドやジョウロ、スリッパなど細々した物も忘れずに!大きなプランターを固定する
室内に移動できないような大きなプランターは、強風で倒れるのを防ぐため、プランターの四隅をレンガや土嚢袋などで囲って固定します。支柱など背の高い資材は倒しておく
支柱やスコップなど、風で倒れやすい資材はあらかじめ倒しておきます。大きなゴミ箱に重石をする
ゴミ箱の底にあらかじめレンガを入れ、風でひっくり返ったり飛ばされたりしないように重石をしておきます。寒冷紗・防虫ネットを固定する
寒冷紗や防虫ネットは、ひもや洗濯ばさみで鉢に固定したり、レンガで押さえたりするなど、風で吹き飛ばされないようにしておきましょう。グリーンカーテンを外す
育成中のグリーンカーテンは支柱から外し、植物が傷まないようにそっとたたんでおきましょう。どうしても外せないという場合は、ひもなどで支柱にしっかりと固定してください。また、グリーンカーテンの裾はレンガなどにくくり、風にあおられないようにすると良いでしょう。グリーンカーテンの正しい設置方法はこちら!
ベランダの排水溝・排水口をチェック
排水溝や排水口に枯葉や土などが詰まっていると雨水が排出されず、ベランダに水があふれてしまいます。事前に詰まりがないかチェックし、掃除しておきましょう。ベランダの排水溝・排水口の掃除方法はこちらの記事で!
ベランダ菜園の事前準備|植物編
支柱をしっかり固定する
支柱がしっかりと固定されているか確認しておきます。支柱がゆるい場合は風で倒れてしまうため、用土に深く挿し直してください。また、茎を誘引した麻ひもなどがあまりにも緩すぎると、風で茎が振り回されて折れてしまうことがあります。ゆるみのないように縛り直しておきましょう。
不要な葉を摘葉しておく
風によって葉がすれて、果実を傷つけてしまうことがあります。病気にかかっていたり、黄色くなったりした不要な葉は、あらかじめ取り除いておきましょう。摘葉することで風通しの良い環境になり、蒸れを防ぐこともできます。果実は可能な限り収穫する
収穫適期前後の果実や作物は、台風が来る前に可能な範囲で収穫しておきます。幼苗を保護する
生育中の幼苗には寒冷紗を掛け、できるだけ風雨から守りましょう。その際、寒冷紗が風で飛ばされないように注意してください。洗濯ばさみなどでプランターに固定しておくと安心です。畑(露地栽培)の台風対策|支柱の補強やシートの固定など
ここからは、支柱の補強方法や防風ネットの張り方など、畑での台風対策を紹介していきます。市民農園スタッフとして、野菜の栽培方法をレクチャーされている熟練ガーデナー・まつたかずきさんにアドバイスをいただきました。
まつたかずきさん
市民農園のスタッフを務めながら、ライターとしても活動。野菜づくりを誰もが気軽にできる趣味にすることを目標に、初心者でも興味を持てるような記事を執筆されています。YouTubeでも農業に関する動画を配信。
まつたかずきの週末農業チャンネル
畑の事前準備|物品・圃場編
ガーデニング用品の撤収
畑に出しっぱなしにしているジョウロやバケツなどのガーデニング用品も、風で飛ばされると危険です。早めに屋内にしまっておきましょう。マルチシートや不織布を固定する
畝に張っている不織布やマルチシートは、風で飛ばされないように固定しておきましょう。不織布は、裾の部分に留め具を挿したり、重石を置いたりすることで飛ばされないように固定すると良いでしょう。
マルチシートは、留め具がしっかり土の中に入っているか確認し、シートの端には再度土をかぶせておきます。マルチシートを留め具で黒丸Uピンを使っている場合は、30cm以上の長いものに変えておくと、さらに安心です。
防虫ネットを補強する
防虫ネットを止めているトンネルパッカー(固定具)が外れかけていないかチェックし、裾部分に2点留めにしているのを3点留めにして補強します。ネットの裾にはしっかり土を被せ、飛ばされないようにしましょう。日よけ用タープを固定する
畑に日よけ用のタープを設置している場合は、風で飛ばされないようにロープでしっかりと固定しておきます。ウォータータンクなどの重りを利用するのもおすすめです。畑の排水対策を行う
豪雨により畝が浸水する可能性を想定し、台風が来る前に畝を高く立てる、溝切りを行うといった排水対策をしておきます。また、排水が悪い畑の場合は、明渠(あんきょ)を掘って水の逃げ場を作っておくと安心です。台風前の施肥は避ける
8月中旬~9月初旬は、キャベツやダイコン、ブロッコリー、ハクサイなどの冬野菜の苗の植え付けや種まきのシーズンです。通常であれば、この時期に肥料を土壌に投入して畝作りをしますが、台風が来るとせっかくの肥料が通路部分に流れてしまいます。台風の予報がある場合は、施肥は一旦ストップしましょう。畑の事前準備|植物編
苗を保護する
まだ育ち切っていない夏まきの苗は、強風で吹き飛ばされてしまう可能性があります。苗の株元には土寄せをしておきましょう。さらに、防虫ネットで暴風対策をしておくと安心です。ネットが風であおられて苗を傷めてしまうので、裾に土をかぶせて固定しておきましょう。背の高い野菜は支柱で支える
トマト、ナス、トウモロコシといった背の高い夏野菜は、主軸が風で折れる事があります。株の周りに支柱を何本か挿し、誘引しておくと倒伏しにくくなります。果実は事前に収穫しておく
収穫期のトマトは、豪雨に当たると実が割れてしまいます。台風が来る前に早めに収穫しましょう。キュウリやスイカ、メロンなど、園芸ネットを使って空中栽培しているものも、収穫できる果実は採っておきます。まだ収穫前の場合は、風で外れてしまわないようネットを補強しておきましょう。
台風に負けない!支柱の補強方法
野菜の支柱は、抜けたりしないようにしっかりと補強しておくことが肝心。ここではタイプ別に、補強のポイントを解説します。トマト(1本仕立て)・トウモロコシ
主軸のすぐ脇、10cmほど離れた場所に180~210cmの支柱を立てます。既に立てている場合は、反対側に補強用として追加してください。浅いと抜けてしまうので、30cm以上は土に埋まるように挿しましょう。誘引も忘れずに、ひもなどで3~5箇所固定します。トマト(2本仕立て)・ナス・ピーマン
株の周りを囲うように、150~210cmの支柱を立てます。支柱は、抜けないように土に深く挿しましょう。防虫ネットで支柱を囲い、行灯(あんどん)にして風よけにします。支柱の立て方や支柱選びについてはこちらでも紹介しています!
ビニールハウスの台風対策
両サイドと天井が開閉できるハウスは、雨が入り込まないように必ず閉じておきましょう。さらに、ハウスのビニールが飛ばされないように、マイカ線で補強しておくと安心です。マイカ線は、ハウスのアーチになっている上を通し、両端に重石をくくりつけておきます。