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東京の農業を学べる東京農業アカデミー|2年間のカリキュラムを大解剖!


東京農業アカデミー八王子研修農場は、2020年度に設立した、農作業と農業に関わる経営について専門的に学べるスクールです。研修生の前職での分野はそれぞれ異なりますが、農業の経験がないことは皆同じ。2年後には東京で独立就農できるように、経験豊かな指導員たちが農業のノウハウを教えています。今回は東京農業アカデミーの農場長の小寺孝治さんに、2年間のカリキュラムについてお話を伺いました。

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小林 由弥

フリーの編集・ライター。 カントリースタイルの暮らしを楽しむ、という主旨のムックで主にガーデニングやDIYの記事を担当していました。 現在は集合住宅住まいで土のない生活を送っているため、花や紅葉を追っての小旅行が楽しみです。…続きを読む

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ほ場での研修

撮影:上溝 恭香
東京農業アカデミーは東京都内での農業に特化した教育機関。農家出身ではなく、一から農業を学びたい人に門戸を開いています。新規就農を目指す人が農業を学べるスクールは全国にありますが、広々とした農地が確保できる地方と土地が限られた東京都では学ぶべき農業関連の法令も異なります。農業経験ゼロからの都内就農を考える人にはうってつけの学校です。

小寺孝治さん
撮影:上溝 恭香

プロフィール
小寺孝治(こでら・こうじ)
公益財団法人 東京都農林水産振興財団 東京農業アカデミー 八王子研修農場 農場長
1960年、東京都出身。野菜の専業農家の生まれで「東京で農家のために役立ちたい」という思いから千葉大学園芸学部で野菜学を学ぶ。1984年に都職員に採用された後、農業試験場江戸川分場(当時)での小松菜研究を皮切りに、八丈島園芸技術センター、立川の農業試験場で農家に役立つあらゆる野菜の生産技術開発等に取り組む。2004年以降は経営企画、観光(地域振興)、小笠原の産業振興、都の農業基盤整備(土地改良)、食品安全(東京都GAP)などに携わり、東京の農業にかかわるあらゆる領域に精通。2020年4月より、東京都が立ち上げた東京農業アカデミー八王子研修農場 農場長に着任、いまも毎日、自宅で育てている野菜を見てからアカデミーに出勤。

東京農業アカデミーではこんなことを学べる!

小寺農場長
撮影:上溝 恭香

2年かけて技術と経営力をバランスよく学び実力をつける

カリキュラムは2年間。1年目は農業の基礎技術の習得が中心、2年目は、東京農業アカデミーのほ場に自分の畑を持ち、就農準備に向けた実践的な研修を行います。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
ゼロからのスタートですから、1年間ですべて覚えるのは無理だと思います。2年かけてじっくり学ぶことで、卒業時にはプロの農家としてしっかりやっていけるように指導します。

ほかの学校は1年間というところが多いのですが、東京農業アカデミーは2年間です。
1年目にしっかり基礎を学んで、2年目に自分の農業スタイルをイメージしながら実際に栽培して試せるのが魅力だと思いました。
4期生 佐藤敦史さん
4期生 佐藤敦史さん


カリキュラムの概要は以下のようになります。

講義(座学)

作物の栽培に必要な基礎知識、経営する上で必要な管理会計等の基礎を習得する。

演習

機械や施設などを実際に扱い、正しい利用方法を習得する。

外部研修

農家や卸売市場の視察、農家への派遣研修を行い、経営者の感覚を身につける。

栽培実習(ほ場)

研修農場内にあるほ場で、栽培指導員の指導の下、野菜を栽培し、農業生産に関する一連の作業を実践することで農業技術を習得する。

東京の農業は独特

講義では、都市部である東京での就農に特化したカリキュラムも組まれています。農地が豊かなほかの地域と異なり、東京都では土地を借りるのに都市計画法を頭に入れておく必要があるからです。基本的な農業関連の法令ももちろん学ばなければなりませんが、あわせて市街化区域と市街化調整区域の違いなど、東京都ならではの土地の特性を把握していないと就農後に苦労することになりかねません。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
納税猶予を受けている土地か、そうじゃないかによって、今後何年間農地を借りられるのかが変わってきます。地主さんの年齢や後継者のある・なしによっても条件は違います。そういったことも覚えておかないと、せっかく土地を借りてもすぐに出ていかなくちゃいけなくなったりしますから。

研修1年目|ゼロから農業の基礎を身につける

東京農業アカデミー4期生
撮影:上溝 恭香

春から夏にかけてはほ場での実習が多い

入講(東京農業アカデミーでは入学を入講と表現します)後はまず土づくりをします。何もない畑を耕して畝を立て、夏野菜を植え付けることが就農に向けての第一歩となります。果菜類や、ナス、ピーマン、スイカなど夏野菜を収穫するまではほ場に出ての作業がメインになります。そのため、入講後2~3カ月の1年生に話を聞くと「研修はほ場に出ての作業が9割、座学が1割」と口をそろえて言いますが、それは最初のころだけのこと。季節によって研修内容は変わります。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
先に畑で季節ごとの様相を見ておくと、そのあと座学で学んだことが頭に入りやすくなります。必然的に、最初のうちはほ場に出ていることが多いので、実習が多い印象になるでしょう。
この段階で基礎をしっかり覚えれば5年先10年先にも役に立ちます。例えば、減農薬で育てたければ、虫や病気のことをよく知っている必要があります。

研修での作業はみんなで力を合わせてやることが多いのですが、就農後一人になったらそういうわけにもいきません。だからこそ、今、同期生や指導員と一緒にやっていることを一人だったら、二人だったらとイメージして作業しています。
4期生 加藤秀隆さん
4期生 加藤秀隆さん

秋から冬は野菜ががらっと変わり、座学が増える

座学
提供:東京農業アカデミー
夏野菜が終わると、秋から冬にかけてのほ場の野菜が変わってきます。ダイコンやニンジン、ブロッコリーなど。年間を通して栽培する野菜は大体20品目ほどになります。また、実習で体得したことを知識として固めるための座学も増えていきます。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
座学では、前期は主に土壌肥料や栽培管理などほ場で研修したことを講義で知識として固めることが多いのに対して、秋以降は管理会計・経営理念などを学ぶようになります。
貸借対照表の見方や収支計算の基礎から始めますので、前職で経理の経験がなくてもここで覚えられます。

小寺農場長はじめ、全ての指導員が親身になって教えてくれます。
4期生 熊川健さん
4期生 熊川健さん

小寺孝治さん
小寺孝治さん
直売所を開くときは、前日にPOPづくりをします。POPは、どう訴えればいいのかを考えなくはなりません。きれいに描くことよりも何を伝えるのかが重要です。
荷造りも大切です。出荷先や時期などによっても変わってきます。現場力で臨機応変に対応できるようにします。

座学でのPOP講座が印象に残っています。こんなことまで教えてくれるんだ、と思いました。
4期生 横山遼さん
4期生 横山遼さん

天候によって時間割はフレキシブルに変わる

講義風景
提供:東京農業アカデミー
朝8:50に始業し、16:40に終わるまでの時間割も一応はあるのですが、自然相手の研修ですから、そのとおりに進むとは限りません。終日ほ場での研修となっていても、天候不順だったり暑さが厳しかったりするときは座学に切り替えます。

小寺さんもさまざまな講義を行います。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
研修生はみんな農家の出身ではないから、自分が親になったつもりでなんでも教えます。技術も必要だけれど、営業のノウハウや農家の心構えまで。
特に、農業は「人間力」が大切だと伝えています。土地を借りるにも営業するにも、近所づきあいをするにも必要なものですから。

小寺さんから「人間力」をたたき込まれた研修生たちは、入講直後と数カ月経ってからとでは人が違ったみたいに表情が変わってくるのだと言います。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
新規就農するには、地域の人とうまくやっていけないと支えてもらえないんですよね。
周りに応援してもらえないと農業はできないから、コミュニケーションに始まり、人との関わりも学ばないとね。

1年目の研修科目の一例

1年生の研修内容
資料提供:東京農業アカデミー

講義

    • 東京の農地概要
    • 東京の農地等の状況・農地制度の概要
    • 農業経営基盤強化促進法・農地中間管理事業法
    • 都市農地制度(生産緑地・納税猶予・都市農地貸借円滑化法)および最近の農地貸借の動きについて

栽培管理・土壌肥料・作物保護

  • 植物の生理
  • 土壌診断と土壌の改良
  • 生育障害対策
  • 肥料の品質の確保等に関する法律
  • 植物と病気、病原菌の種類
  • 害虫の種類と特徴、被害
  • 農薬の特性と使用上の注意(農薬取締法)
  • 野生鳥獣による農作物被害
  • 東京都GAP制度について

特別講義

  • スマート農業の推進(ICTを活用した農業)
  • マーケティング概要
  • 東京における農産物の流通
  • 接客販売・営業等におけるマナーについて
  • 農業の法人化について

農業機械・施設管理演習

  • ハウス施設の利用と構造
  • パイプハウスの構造
  • 農業機械の安全作業

作付け計画の立て方

  • 作型について考える
  • 栽培品目の選定
  • 栽培スケジュールと労力との関係

研修2年目|アカデミー内の農地で実践的に栽培

東京農業アカデミー4期生
撮影:東京農業アカデミー

自分でスケジュールを立てて栽培

1年次にしっかり基礎を身につけたら、2年次は就農に向けて実践的な研修に入ります。東京農業アカデミーの第2ほ場の中に、研修生一人ずつ約4aの畑をもち、自分自身で計画を立てて管理しながら作物を育て、販路を考えていきます。
経営の基礎は1年次にしっかり学んでいるから、1年の後半には経営のビジョンができてくるんです。
2年次には、将来の就農モデルに沿って即実践に移れます。生産から販売までを行い、経営的な分析まで可能なほ場を用意しています。

農家派遣研修も

1年次には農家派遣のためのガイダンスや、都内各地の指導農業士のもとで農作業を手伝う研修が組まれています。2年次になると、研修生を受け入れる農家に行って農作業を手伝うとともに、農家の生産技術や経営手法、経営理念などについて、より深く学ぶことができます。

座学もより実践的に

1年次の学びを深めて、経営計画をより実現可能なものに改善するために、管理会計を自分自身への経営へと応用していきます。就農直後は、経理もすべて自分でやることになるため、青色申告の基礎や仕訳と元帳転記、試算表、経営分析など、実務に即役立つ知識がたくさん学べます。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
2年次の秋から遅くても年明けには就農地が決まります。4月になるまで営業はできませんが、農地さえ決まれば土づくりなどの準備も始められます。
その時期までに、必要な情報も座学で身についているでしょう。

就農計画を作成し、最後には研修成果報告会も

販売所
提供:東京農業アカデミー
2年次の締めくくりに、就農する畑での具体的な就農計画を立てていきます。このときに作った計画は、就農後そのまま使う大事なものになります。この時点で、計画に足りないところ、無理なところがあれば指導員から修正してもらえます。実際に就農してからは作業に追われるため、ここでしっかりとまとめておくことが大切です。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
就農後は、ここで作った就農計画どおりに進めることが基本です。
就農してから何かプラスしようとか、計画を変更しようとか考えてしまうと、そこでつまずく可能性もあります。
それくらい、実現可能で正確な就農計画をつくるんです。

2年目の研修科目の一例

2年生の研修内容
資料提供:東京農業アカデミー

講義

  • 都の農業施策・都の機関
  • 農業制度資金
  • 種苗法と知的財産権

特別講義

  • 共同直売所および学校給食への出荷について
  • 最近の野菜の消費動向とスーパーへの出荷
  • 農業ECの現在と将来
  • 顧客管理

就農準備

  • 経営計画および青年等就農計画の概要
  • 経営計画書の作成
  • 都内の新規就農者から学ぶ

会計管理・経営理念演習

  • 管理会計概論
  • 経営理念

ほかにもこんな行事が!

東京農業アカデミーの農機
提供:東京農業アカデミー

農業機械・施設管理の演習

研修生で「楽しい」という声が多いのが農業機械・施設管理の演習です。トラクターの構造と操作、農業機械の操作実習など、普通の生活ではまず触ることがない機械を扱う実習は、我先にとやりたくなるようです。危険を伴うこともありますから、作業中の事故の事例も学び、安全な取扱い方法をしっかり学びます。

卒業生の畑の視察

研修の様子
提供:東京農業アカデミー
視察研修では、都内の特徴的な農家や先進的な経営を行う農家、卸売市場などを訪れるほか、東京農業アカデミーの卒業生の畑も視察に行きます。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
東京農業アカデミーの卒業生は、研修生にとって一番身近な農家ですから、とても役に立つ事例になりますね。
卒業生にはかなり稼いでいる人もいますから、刺激にもなるしモチベーションも高まるでしょう。

卒業後、皆さん活躍なさっているので、ここなら大丈夫だろうと思いました。
4期生 磯田茉莉夫さん
4期生 磯田茉莉夫さん

直売所視察も

就農後の販路の一つとして考えられるのは直売所です。カリキュラムには、都内で主流となっている共同直売所への出荷方法について学ぶほか、直売所を訪問して具体的な出荷方法や取引方法を確認する視察研修等も行います。

東京農業アカデミーの研修施設についてはこちらをチェック!


第5期研修生募集!

四期生
撮影:上溝 恭香
東京農業アカデミーの特徴は、農家出身者ではなく、東京で新たに独立就農を目指す方を対象にしているところです。野菜の栽培技術はもちろん、経営的なノウハウなど東京の農家として必要な知識、技術などを総合的に学べます。一番重要な農地探しについても、親身に研修生の就農希望地を聞いて、その地域の情報収集をサポートします。就農後に活用できる各種の助成制度、住まいや販売先についても相談に乗ってもらえます。
小寺孝治さん
小寺孝治さん
東京での野菜作りを生業として、都民や子どもたちに安全安心な野菜を届けたいと思っている方にぜひ入講していただきたいと思っています。
就農に向けて2年間真剣に学びたいという熱い思いがあるなら、現地説明会などにぜひ一度お越しください。
なんとしても農家になるんだ、という情熱とチャレンジ精神のある方をお待ちしています。東京農業アカデミー八王子研修農場で一緒に学んでいきましょう!

第5期生応募に関する詳細情報
東京農業アカデミー八王子研修農場令和6年度研修生募集

======== オンライン説明会========
開催日程
9/23(土・祝) 13:00~15:00
※Zoomにて実施いたします。
お申し込みは下記URLよりお願いいたします。

オンライン説明会詳細はこちら
https://www.agreen.jp/job/detail.php?job_id=4242

======== 現地説明会========
【日程】
第1回:令和5年9月16日(土曜日)10:00~12:00
第2回:令和5年9月27日(水曜日)14:00~16:00
第3回:令和5年10月7日(土曜日)10:00~12:00
第4回:令和5年10月11日(水曜日)14:00~16:00
第5回:令和5年10月18日(水曜日)14:00~16:00
第6回:令和5年10月22日(日曜日)10:00~12:00

現地説明会オンラインお申し込みフォーム
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