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耕作放棄地で新規就農!探し方と借りる・買うまでの流れも紹介


耕作放棄地を活用して農業を始めたい方、農地を広げたい方は非常に多い一方で、探し方や具体的な借り方についての情報は少ないのが現状です。本記事では耕作放棄地を探すときのコツや具体的な手順、耕作放棄地を活用して農業を行う場合に必ず知っておくべきことについて紹介します。

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大野 千遥

2023年4月中山間地の耕作放棄地で新規就農。耕作放棄地の開墾から始めました。耕作放棄地を生み出さない仕組みや、地産地消で農家も地域も潤う仕組みを日々模索しています。ライスワークとしてライター・マーケターとしても活動中。2児の母。…続きを読む

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耕作放棄地

出典:Pixabay
「社会問題になっている耕作放棄地を有効活用して、新しく農業を始めたい!」そう思っていても、どこでどうやって探せばいいかわからないとお悩みではありませんか?
耕作放棄地の面積は事実上増え続けているにもかかわらず、実際に見つけて自分で使えるようになるまでにはいくつかステップを踏まなければならないのが現状です。
本記事では、耕作放棄地の具体的な探し方と実際に借りる・買うまでの一般的な流れについて紹介します。

耕作放棄地に関する詳しい解説については以下の記事も合わせてごらんください。

借りたい!買いたい!耕作放棄地の探し方3ステップ

階段
出典:Pixabay
次のステップを踏むことで、スムーズに耕作放棄地を見つけられる可能性があります。

耕作放棄地の探し方
1.「eMAFF農地ナビ」を活用して探す地域のめどをつける
2.就農相談窓口(自治体や農協)に直接問い合わせる
3.地主とつながりを持つ

なるべく短期間で探すためにも、上記の順に必要な情報を効率的に得ていくのがおすすめです。それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

1.「eMAFF農地ナビ」を活用して探す地域のめどをつける

「eMAFF農地ナビ」とは、農地法に基づき農地情報をインターネット上で公表するサイトです。衛星写真や空中写真の地図を表示させることで、周辺環境のイメージをつかめます。また、自分の希望する条件に絞って、その条件に当てはまる農地のみを表示することもできるので、耕作放棄地になっている農地や貸し出し希望のある農地などにある程度めどをつけておくとよいでしょう。

この段階で実際に現地を見に行ってみるのもおすすめです。ご自身の要望に合った環境かどうかを確かめることができます。ただし、「eMAFF農地ナビ」上の情報が最新ではない場合もあるので、就農・農地拡大を希望する地域で借りられそうな土地が表示されていなければ、自治体への問い合わせも行ってみるのがいいでしょう。

2.就農相談窓口(自治体や農協)に直接問い合わせる

地域のめどがついたら、就農相談窓口に問い合わせてみましょう。希望地域で離農する農家や土地を貸したい地主に関する最新情報を入手できる場合もあります。希望地域の窓口では、地域住民や農家との直接的な関わりもあるため、「eMAFF農地ナビ」では表示されなかった情報をもらえることもあります。
各自治体の就農相談窓口は「農業をはじめる.JP」から確認できます。

ただし、ご自身に農業経験がない場合、仲介する立場からは「地主への紹介が難しい」と言われてしまうケースも多いです。そのため地主から信頼を得る方法として、農業知識の習得を目的とした農業研修や、法人農家への就職などをすすめられるケースも。耕作放棄地問題の深刻化が予想される地域では、新規就農者の受け入れ体制が充実している場合も多いので、地域選びの時点で新規就農者に対する制度なども考慮に入れるのがおすすめです。

3.地主とつながりを持つ

耕作放棄地を探すときに非常に大切なのは地主とつながりを持っておくことです。農家にアルバイトに行ったり、耕作放棄地の草刈りを手伝ったりすることで、地主との関係を作れる場合があります。積極的に農業に関連する行事ごとに顔を出し、地域に溶け込みながら「耕作放棄地を探している」という情報を周囲に発信しましょう。

耕作放棄地であっても土地は地主の資産です。そのため、最終的には地主に「この人ならきちんと土地を管理してくれる」と思ってもらう必要があります。地主の信頼を得られなければ、たとえ耕作放棄地であっても使わせてもらえないケースもあり、信頼を得るための活動は必須といえます。

探す前に絶対に知っておくべき!耕作放棄地活用のハードル

耕作放棄地のイメージ
出典:Pixabay
耕作放棄地を活用して新たに農業をしたり、農地を広げたりすることができれば、社会貢献の側面もあります。また地主との相性がよければ、好条件で土地を使える可能性もあります。しかし耕作放棄地を使って実際に農業をするのは、決して簡単なことではありません。
ここでは耕作放棄地を活用しようとする際に、多くの人が乗り越えなければならないハードルについてお伝えします。

耕作放棄地活用のハードル
1.土壌再生に時間と労力が必要
2.農地の賃借・売買には農業委員会の許可が必要

この2点についてあまり詳しく知らないまま耕作放棄地を探し始めてしまうと、後々「こんなはずではなかった…」と後悔するかもしれません。農地を確保したい地域の状況と合わせて必ず確認しておきましょう。

1.土壌再生に時間と労力が必要

耕作放棄地は従来は耕作地として作物が栽培されていた場所であるため、適切な手入れをすれば耕作が可能になります。しかし実際の耕作放棄地は雑草が生い茂っていたり、土壌が作物栽培に向かない状態になっている場合が多いです。そのため、農作物の栽培が可能な土壌にするまでに時間がかかります。

仮に耕作放棄地で耕作を再開できた場合でも、初期は安定した収穫量を確保するのが難しく、すぐには収入につながらない可能性がある点を考慮しなければなりません。

耕作放棄の程度によっては雑草・雑木林の除去などを業者に依頼しなければならず、お金がかかる場合もあります。作物栽培に適した土地にするためには、土壌phや水はけ、栄養素含有量など、あらゆる要素を踏まえた長期的な手入れ・観察が必要です。

耕作放棄地活用のチェックポイント
・土壌再生に必要なコスト(資金・時間・機械など)
・土壌状況(多年草の雑草や樹木の有無など)
・水はけ
・日当たり
・農業用水の有無
・周辺環境(鳥獣害・道路幅員など)


2.農地の賃借・売買には農業委員会の許可が必要

農地の賃借・売買をするためには、基本的には農業委員会の許可が必須です。農業委員会を通さずに土地を賃借して耕作を行う、いわゆる「ヤミ小作」「ヤミ農家」という言葉もありますが、農地法が適用されないため、貸し借りにかかる契約は法律上無効となります。実際に知り合いや親戚同士による農地の貸し借りが行われているのを見聞きしたことがある人もいるかもしれません。

耕作放棄地を含め、農業委員会を通さずに農地の賃借を行うと、権利関係が不明確になり、後々トラブルの元になる可能性もあります。農業として収入を得る目的で貸し借りを行う場合は特に注意が必要です。

耕作放棄地を借りる・買うまでの一般的な流れ

田んぼ
出典:写真AC
ここでは、耕作放棄地を農業目的で借りたり購入したりする場合の、一般的な流れについて2つのパターンに分けて解説します。

パターン1. 農地法第3条の許可を得る

1つ目は「農地法第3条」の許可を得て農地を借りる・買う方法です。まずは賃借・購入の要件を満たしていることを確認したうえで、耕作放棄地(農地)を賃借・購入したい地域に設置されている農業委員会で所定の手続きを行いましょう。

個人が農地法第3条の許可を得る際には、次の4つ要件を満たす必要があります。

◆農地のすべてを効率的に利用する
機械や労働力等を適切に利用するための営農計画を持っていること
◆必要な農作業に常時従事する
農地の取得者が、必要な農作業に常時従事(原則、年間150日以上)すること
◆一定の面積を経営する
農地取得後の農地面積の合計が、原則50a以上(北海道は2ha以上)※
◆周辺の農地利用に支障がない
水利調整に参加しない、無農薬栽培の取り組みが行われている地域で農薬を使用するなどの行為をしないこと

※経営面積は、地域の実情に応じて、農業委員会が引き下げることが可能となっています。お住まいの地域の面積については、市町村の農業委員会にお問い合わせください。
参考:e-Govポータル

各農業委員会によって審査基準は若干異なる部分もあるため、実際に手続きをする前に希望地の農業委員会に細かい要件を確認してください。

パターン2. 農地中間管理機構(農地バンク)を活用する

2つ目は「農地中間管理機構(農地バンク)」を活用する方法です。農地中間管理機構には、農地の貸し手と借り手をマッチングさせる役割があります。農地中間管理機構では都道府県ごとに借り手の公募を行っています。希望地の農地中間管理機構のHPを定期的にチェックして、借受公募が出ていれば応募しましょう
参考:農林水産省「各都道府県の農地中間管理機構HP一覧」

耕作放棄地以外にも離農直後の農地をスムーズに借りられるケースがある一方で、農地中間管理機構がうまく機能していない地域もあります。そのため、耕作に使える農地があったとしても、農地中間管理機構まで情報が出てこず、農業委員会を通じて大規模農家にそのまま貸し出されやすくなっている地域も多いのが現状です。

農地バンクについて詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてお読みください。

耕作放棄地の利活用に使える助成金・補助金はある?

お金
出典:写真AC
耕作放棄地を再生するには時間だけでなく多額の資金が必要なケースもあります。そのため国や自治体では耕作放棄地の再生をする農業者に対して、補助金を出しています。

農林水産省の補助金事業

農林水産省では、耕作放棄地や遊休農地で新たに農業を始めることにより申請できる補助金・助成金事業がいくつかあります。

◆農山漁村振興交付金(中山間地域等農用地保全総合対策及び最適土地利用対策)
→荒廃農地の有効活用や農地の粗放(資本や労力をあまりかけない)的な利用を行うモデル的な取組を支援
◆農山漁村地域整備交付金(農村集落基盤再編・整備事業)
→農業生産基盤と農村生活環境等の整備に加え、中山間地域における耕作放棄地対策を総合的に支援

参考:農林水産省「荒廃農地の解消等に活用可能な事業」

ただし、これらは個人で申請できる補助金ではなく、農業協同組合・地域協議会・農業委員会などが地域を代表して申請を行うものです。これらの補助金を利用して農業を始めたい場合、その地域に根差した活動を行い、地域・団体ぐるみで申請する必要があります。

自治体独自の荒廃農地対策事業もある

都道府県や市町村単位で、荒廃農地対策事業を行っている地域もあります。地域ごとに補助内容は異なりますが、耕作者不在で荒廃農地となってしまった土地を活用する際に申請できるものが多いです。
参考:農林水産省「都道府県独自の荒廃農地対策事業一覧」

耕作放棄地の利用促進の仕組みが今求められている

耕作地
出典:Pixabay
耕作放棄地を探す場合、ネットや農業相談窓口で情報収集するのは大切です。しかし一方で、地主や農地周辺の地域住民などと密にコミュニケーションをとって信頼してもらわなければ、最終的に農地を借りたり買ったりするのは難しいケースがほとんどです。また、農地バンクなどの利活用により、耕作放棄地を就農希望者などとうまくマッチングできるのが理想的ですが、実際にはうまくいっていない地域が多いのが現状です。

耕作放棄地を実際に活用するとなれば、土壌改良などにも時間・手間がかかることを踏まえた営農計画を立てる必要があります。しかし耕作放棄地を活用することは社会貢献的な側面も強く、山間地の多い日本では耕作地を維持していくことそのものが農業の大切な役割の一つともいえます。耕作放棄地を新たに生み出さない仕組みや効率的に利活用できる仕組みが今求められています。

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