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イチゴ農家の仕事内容を知ろう!
土耕栽培と高設栽培
イチゴの栽培方法には、畑にうねを立てて苗を植える土耕栽培と、1m程度の高さの定植用のベンチに植える高設栽培があります。土耕栽培は初期費用は少なくてすみますが、土づくりの技術が必要です。また、定植や収穫の作業の際にかがんだ姿勢で仕事をすることが多くなり、腰やひざへの負担が大きくなります。
高設栽培は、土耕栽培に比べると作業姿勢が楽で、効率的に作業が行えます。肥料や水分の調節もしやすいですが、大きな初期投資が必要です。
イチゴの品種は多種多様
日本で栽培されているイチゴの品種は約300種といわれ、現在も各地で品種改良が進んでいます。大きく分類すると、秋から冬に花芽分化(生長点が、花になる芽になること)する一季成り品種と、春から夏に花芽分化する四季成り品種に分かれます。現在、イチゴ栽培の中心は、「とちおとめ」「あまおう」「さちのか」などの一季成り品種を利用した冬春イチゴで、四季成り品種は寒冷地や高冷地での夏秋イチゴが多くなります。地域ごとにそれぞれ盛んに栽培されている品種がありますが、どの品種を選ぶのかは、苗の入手方法、育てやすさ、収穫量、おいしさ、販売単価など多角的に判断する必要があります。
メディアでも話題の高級ブランドイチゴ
「スカイベリー」「美人姫」「桃薫」といったブランドイチゴの中には、1パック数千円で販売されるものや、一粒で10,000円超の値段がつく超高額商品も。イチゴ栽培のポイント
イチゴの栽培技術はとても繊細です。栽培には、育苗・定植・休眠という3つのポイントがあります。育苗では、花芽分化を適切な時期に行い、花の大きさと数を確保することが大切です。イチゴはクリスマスなど特定の時期に大きな需要が発生しますが、花芽分化や定植の時期によって収穫の時期や収穫量が決まるため、農家はタイミングに注意を払います。
また、イチゴは自然状態では秋から休眠状態に入ります。完全な休眠状態では収穫ができなくなり、低温が続いても花芽分化を止めてしまうので、半休眠状態を作るようにします。また温度だけが高くても日照が不足すると食味が悪くなるので、気温と電照の管理が農家の腕の見せどころとなります。
具体的なイチゴの栽培方法はこちらをチェック
イチゴ農家の年間スケジュール
イチゴ農家の一年は、親株の入手から始まります。冬春イチゴの場合、4月に親株を定植して、ランナーと呼ばれる子株を作ります。育苗した苗は9月ごろ定植します。10月に開花し、開花から30日程度で実ができて、収穫期に入ります。参考:栃木県ホームページ「いちご栽培の1年」
イチゴ農家は儲かる?年収はどのくらい?
イチゴ農家の年収はどのくらいなのでしょうか?統計から粗利益を見てみましょう。品目 | 価格(円/Kg) | 10a当たりの収量(kg) | 10a当たりの粗利益(円) |
イチゴ | 1,298 | 3,230 | 4,192,540 |
2020年の青果物卸売市場調査によると、イチゴの卸売価格は1,298円となっています。これは、ほかの果物(例:みかん260円、りんご329円)よりも格段に高いものです。
圃場(ほじょう)面積や販売先にもよりますが、例えば、農林水産省の作物統計調査によるとイチゴの10a当たりの収量は全国平均で3,230kgなので、10a当たりの粗利益は約420万円となります。規模を拡大したりブランド化して単価を上げれば、収入も増えていきます。
「ミガキイチゴ」で地域をまるごとブランディング
株式会社GRAは宮城県山元町で1粒1,000円の「ミガキイチゴ」をブランディング化し、順調に事業規模を拡大、地域の活性化にも貢献しています。イチゴ農家の初期費用は?ハウスなどの設備や資材が必要
イチゴ農家に必要な設備や機械
イチゴ農家を始めるためには、必要な設備や機械を購入する必要があります。主なものとして、育苗ハウス、本圃ハウス、トラクター、うね立て機、動力噴霧器があげられ、そのほかに必要に応じて井戸の掘削や電気工事も必要です。ハウスにもいろいろな種類があり、土耕栽培か高設栽培かによっても値段は大きく変わってきます。10aの土耕栽培で新品のハウスを建てると500万円程度、高設栽培用の対候性ハウスの場合は1,500万円程度は見込んでおきましょう。初期費用を抑えるには、複数の業者から見積もりをとったり、中古のハウスを見つけたり、自作したりするなどの工夫が欠かせません。検討しているハウスが実際に使われている現場や、近隣の農家のハウスを視察して納得のいくものを選びましょう。
1年目で必要な資金のめやす
栃木県農業試験場いちご研究所が発行している「いちご新規参入経営支援マニュアル」(平成24年3月)では、初期投資の試算を掲載しており、「1年目の設備投資と必要資材の合計額として約1,500万円が必要」としています。すべての資金を自分で用意するのは難しい場合には、補助金や借り入れの情報を集めておきましょう。農業の補助金はこちらをチェック
イチゴ農家の販売先|市場出荷、直売・直送、イチゴ狩りなど
イチゴ農家になるには、販売先を確保しなくてはなりません。販売先によってメリット、デメリットがあります。市場出荷
市場に出荷するのは最も一般的な販売方法で、販売代金を確実に回収できます。地域の出荷組合やJAの部会に所属すれば、遠くの市場にも出荷できるほか、市場の情勢や栽培方法の最新情報などを得ることができます。一方、価格が自分で決められないことや、市場の規格に合わせて出荷しなくてはならないというデメリットがあります。直売・直送
自分の土地に直売所を作るか地域の直売所に出荷すれば、価格や規格を自分で決められます。しかし、近隣や同じ直売所に出荷している農家との競争は避けられません。自分だけの顧客を開拓し、インターネット通販で個人客と取引したり、レストランや菓子店などとの直接契約により直送するケースもあります。顧客に選ばれリピートされるために、ほかにはない特徴や良い品質のものを作り続けることが大切です。
イチゴ狩り
イチゴ狩りは自分で収穫する必要がなく、消費者の喜ぶ顔を直接見ることができます。一方、接客が必要であるほか、駐車場、トイレ、直売スペースなどの施設を設置しなくてはなりません。お客さんが来たときにイチゴがないという事態を避けるために、連続して収穫できる品種を選びましょう。イチゴ農家になるには|研修先や求人をチェック
研修を受けて新規就農を目指す
農業研修を受講して栽培技術を習得し、新規就農を目指す方法もあります。イチゴ栽培はデリケートな部分があり、相談できる師匠や仲間がいることは心強いものです。研修には栽培技術の習得以外にも得るものがたくさんあります。イチゴの一大産地・栃木県の研修情報【PR】
イチゴ生産量全国1位を誇る栃木県。2021年産の収穫量は24,400tで、1968年産から54年連続日本一をキープしています。そんな栃木県ですからイチゴ農家を目指す人のための研修も充実しています。栃木県農業大学校には日本で唯一の「いちご学科」があります。また栃木県内で農業を始めたいと考えている人を対象にした、基礎的な農業経営の知識や作物の栽培技術などの研修「就農準備校とちぎ農業未来塾」では、専門研修でイチゴ栽培が学べます。
栃木県就農支援サイト「tochino-トチノ-」でいちごの研修情報をチェック!
栃木県農業大学校「いちご学科」のオープンキャンパス情報はこちら。
JA全農岐阜 いちご新規就農者研修事業
生産者の高齢化・後継者不足により作付面積・生産数量ともに減少傾向にある岐阜県のイチゴの生産振興を図るために、岐阜県やJAが協議して開始した研修事業。4月から翌年5月までの研修で、生産技術、経営管理、就農に向けた準備・手続きを学ぶことができます。就農支援もあり、卒業生がイチゴ農家として経営をスタートさせた実績もあります。全国農業協同組合連合会岐阜県本部「いちご新規就農者研修事業」
求人を探してみよう!アルバイトやパートから始めるのもOK
農業専門の求人サイトにアクセスすると、イチゴ農家や農業法人の求人が掲載されています。寮付きの求人や観光農園、加工部門があるなど、それぞれ特徴があるので、条件のあうものを探してみましょう。また仕事がきついのではないか?など心配がある場合には、期間限定のパートなどで、イチゴ農家の仕事を経験してみるのも一つの方法です。農業専門の求人サイトはこちらから
イチゴ農家の現実がわかる?ブログや体験談を読んでみよう!
実際にイチゴ農家がしている作業を知るのに役立つのが、農家自身が発信しているブログ。すでに農家として活躍している人でも、ほかの農家のブログやSNSをチェックしている人は少なくありません。栽培方法はもちろん、役立つ情報がたくさんあります。はないちご農園
脱サラしてイチゴを栽培している、はないちごさんのブログ。栽培や出荷の様子が写真付きで書かれています。作業前と作業後の様子がわかる写真もあり、参考になります。はないちご農園
トミーファーム
夫婦二人で新規就農したイチゴ農家。新規就農者や農業に興味を持っている方に向けて書かれており、旅行にはいけるのか?反収は?など読者の質問にていねいに答えています。高設ベンチを手作りしたり、クラウドファンディングをしたりとその奮闘ぶりは一読の価値があります。トミーファーム