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1粒1,000円のミガキイチゴを誕生させた株式会社GRA 岩佐大輝さんに聞く|事業拡大を目指す人に伝えたい農業経営のはなし


ITベンチャー企業の経営者から農業の世界へ飛び込み、株式会社GRAを設立した岩佐大輝さん。農業とIT技術の融合で、1粒1,000円のミガキイチゴをブランディング化し、順調に事業規模を拡大、地域の活性化にも貢献しています。岩佐さんの農業経営学の極意とは?
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ミガキイチゴ

写真提供:株式会社GRA
2011年3月11日に発生した東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県山元町で、イチゴ栽培を始めて10年。株式会社GRAでは先端施設園芸での技術開発に力を入れながら、1粒1,000円のミガキイチゴを世に送り出しています。

代表取締役 CEOの岩佐大輝(いわさひろき)さんはIT企業経営者の経歴をもち、農業とIT技術の融合による作業の効率化、さらに農業法人の経営にも抜群の手腕を発揮。設立から10年で着実に規模を拡大してきました。カリスマ経営者 岩佐さんに、順調な成長の基盤である堅実な経営ノウハウについて聞きました。
岩佐大輝さん
写真提供:株式会社GRA

岩佐大輝さんプロフィール
1977年、宮城県亘理郡山元町生まれ。株式会社GRA 代表取締役CEO。
大学在学中、24歳でITベンチャーを起業する。東日本大震災後に地域活性化を目的としてイチゴ栽培を主力とする株式会社GRA創設。代表取締役CEOを務める。
著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『甘酸っぱい経営』(ブックウォーカー)、『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』(朝日新聞出版)
ホームページ:株式会社GRA
個人WEBサイト:岩佐大輝.COM

震災被害を受けた故郷の地域復興を願い農業に参入。規模拡大で雇用を創出

株式会社GRA創業メンバー
写真提供:株式会社GRA
株式会社GRAは、現在100名以上の従業員を抱える農業生産法人です。IT技術などのテクノロジーを最大限に活用し、最先端の農業経営を推進する新進気鋭のリーディングカンパニーです。そんなGRAも、創成期は小さな規模からのスタートでした。

1年目は手探り状態。できることから始めた

震災直後の2011年に被災地ボランティアからスタートし、2012年に株式会社を設立して農業を始めた創業メンバーは、岩佐さんと地元の同級生の橋元洋平さん(写真左)、イチゴ栽培歴40年のベテラン農家 橋元忠嗣(ただつぐ)さんの3人。イチゴを選んだのは、地元の基幹産業であり地域の人たちが誇りに思うイチゴで、震災復興を後押ししたいという思いからでした。
ゼロからの新規就農で、小さな土地にパイプハウスを建て、自ら井戸を掘ってイチゴ栽培をスタートさせました。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
農業をやったことがない人間が「ほんとうにできるのか」をまず周囲に証明する必要がありました。経営がうまくいかなければ、結局地域の人に迷惑をかけてしまいます。最初は小さな面積で一作目を回して、結果が出たところで2年目からは大きな土地を借りました。

2年目以降はチャンスがあれば規模を拡大

農業経営は初めてだったという岩佐さん。大学在学中からITベンチャー企業を設立しており、その経営センスはイチゴ農園にも存分に発揮されています。2年目からの規模拡大の様子やスピード感はどのようなものだったのでしょうか。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
「土地が借りられる」「資金が調達できる」そういう条件が整えばどんどんやりました。この10年間で、2〜3年に一度大きなハウスを建てて面積を広げて、今は楽天ドーム(楽天生命パーク宮城)と同じくらいまでに栽培面積は拡大しています。
こう言うと急激に拡大していったように聞こえるかもしれませんが、コツコツと地道にやってきた結果、今があります。

「ミガキイチゴ」の地域まるごとブランディング戦略

ミガキイチゴ
写真提供:株式会社GRA
GRAで栽培しているイチゴは「ハナミガキ」「とちおとめ」「よつぼし」の3品種です。完熟になるまでじっくりと育て、プラチナ、ゴールド、シルバー、レギュラーにランク分けされ、ミガキイチゴとして販売されています。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
コンセプトは「食べる宝石」です。地元の特産品だったイチゴは原石。石ころは磨き上げるとどんどん進化します。そんな思いを込めて「ミガキイチゴ」と名付けました。

1粒1,000円のミガキイチゴってどんなイチゴ?

ミガキイチゴが広く知られるきっかけともなった、1粒1,000円の値段がつけられるものは大粒のプラチナ限定。通常、イチゴ1株から収穫できる約50粒のうち、プラチナランクのものは1粒程度しかありません。突き抜けた「甘ずっぱさ」をもつミガキイチゴのなかでも、特別な存在感をもつイチゴです。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
希少価値の高いものは、作れば作るほどその価値は低くなります。さらに、どこででも入手できる環境や品質が悪いものが出回るようなことがあれば、ブランドは育ちません。需要と供給のマッチング、さらにその商品をどこで売るのかも商品の価値を左右します。

六次産業化やイチゴ狩りが体験できるICHIGO WORLDを運営

イチゴワールド
写真提供:株式会社GRA
1粒1,000円のミガキイチゴは百貨店などの一部店舗での限定販売です。そのほかはB to Bの卸販売、自社のスイーツ事業やお酒・化粧品などの加工品、イチゴ狩りビジネスなど、さまざまな販路がバランスよく成り立っています。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
スイーツ部門を作って、地方と都会をつなぐというのも私たちのミッションのひとつですし、都会から地方へ来てもらってイチゴ狩りも楽しんでいただけるように、ハウスを大開放しています。コロナ禍以前は年間5万人以上ものお客様が来場され、イチゴ狩りを体験されました。

農業とIT技術の融合|「人」がコントロールするから意味がある

GRAのいちご栽培
写真提供:株式会社GRA
GRAの農業経営の特長のひとつに「農業とIT技術の融合」があります。2012〜2017年まで、大規模施設園芸実証研究施設での復興庁・農林水産省とのプロジェクト研究により、さまざまな技術を実証研究してきました。プロジェクト終了後も栽培に関する独自の研究を続けています。

GRAで実証研究している技術の一例
・クラウン部温度制御による作期拡大、高収量化および燃料費削減
・総合的病害虫管理(IPM)技術を用いた病害虫管理
・移動ベンチおよび自動収穫ロボによるイチゴ密植移動栽培システムの研究開発
・自律分散型ユビキタス環境制御システム(UECS)の構築
・養液循環によるコスト削減と環境負荷軽減発
・LED補光による高収量、高品質化

イチゴは夏の暑さに弱く、11〜5月ごろに収穫される一季成りの冬春イチゴが主流です。GRAでは、先端技術を駆使し、宮城県山元町の冷涼な気候特性を生かしながら、四季成りの夏秋イチゴや一季成りイチゴの夏季栽培を行っています。夏から秋に収穫できるイチゴの数はそれほど多くはありませんが、通年栽培を実現しています。

農業×テクノロジー、情報の判断は「人」がする

GRAのいちご圃場
写真提供:株式会社GRA
高設養液栽培による生産を行っているGRAでは、栽培圃場(ほじょう)に自動環境制御装置、暖房、CO2発生装置、クラウン冷却、細霧冷房、循環扇などの設備を導入しています。あらゆるデータを集めて数値化し、多角的かつ詳細な分析データをもとにチームで意思決定を行っているのも特長のひとつです。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
IT技術を駆使することで、何が原因でうまくいっているのか、あるいはうまくいっていないのかを、一般の農家よりは把握しやすい状況にあると思います。因果関係を明らかにして、次回以降の問題を回避したり成功体験を再現できることは、私たちがうまくいっている理由だといえます。

とはいえ、現時点ではテクノロジーだけでイチゴを栽培することはできません。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
私たちのところにも、イチゴの栽培経験40年以上のプロフェッショナルがいます。熟練の経験や勘とIT技術で収集した情報があって、その知見をどう使っていくかの判断は人間にしかできません。人間が介在してテクノロジーを使い、情報を見ながら栽培を制御していくことを重要視しています。

技術や機材の新旧ではなく、得た情報をどう生かすのかが重要

最新鋭の技術の導入にはそれなりに資金も必要になり、経営規模によっては使える資金に制約があるという場合もあります。GRAのように大規模な設備投資をしなくても、手ごろな価格で導入できるIT技術を活用することは可能です。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
必ずしも最先端技術でなくてもいいんです。農業は、新しい技術だからうまくいくというわけではありません。どういう情報を得て、その情報を作物の栽培や経営にどう活用していくかが大切なんです。

規模拡大へのステップ。栽培面積を広げるときに考えるべきこと

GRAいちごハウス全景
写真提供:株式会社GRA
岩佐さんは「農業は、絶対的に時間がかかる産業であり、一般的な資本市場におけるお金やもののルールとは相反するものがある」といいます。

たとえば、インターネットビジネスで1億円かけて何かのサービスを構築したら、翌年何億円分の顧客を獲得して利益を得ることも不可能ではないかもしれません。「1」投資したものが10倍になり100倍になっていくこともありえます。

農業ビジネスでは、それほどの早い展開を期待できません。植物の生長スピートに応じてビジネスも成長していくという特性があります。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
イチゴは一年に一作しかできません。同じ面積で採れるイチゴの量が急に何十倍になるわけでもありません。量産性においては等差的ですから、リニアな成長しかできないんです。植物の生長速度に合わせて、経済的な成長スピートと企業拡大ビジョンの進捗スピードのバランスをとりながらやっていくのが農業経営のむずかしさです。


それぞれの作物には最小最適規模が存在し、規模に応じた農業経営体を作ることが重要だといいます。最小最適規模は経営方針によっても異なるので、物理的な規模感を見極めていく必要があります。

「規模を拡大すればうまくいく」は幻想?

経営が安定してきたら、次のステップとして事業規模の拡大を考える機会も増えていきます。そんなときは、「中途半端にやってはいけない」と岩佐さんは断言します。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
「ちょっと栽培面積を広げたら営業コストが2倍になった」では意味がありません。ある一定規模で拡大しないと利益を出すのはむずかしく、作物ごとに正確な拡大の単位を把握することが大切です。


思い切った規模拡大をしたほうが、経営効率はよくなるのでしょうか。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
「規模を拡大すればうまくいく」というのも幻想です。人が増えるとそのケアも必要になってきますし、たくさん収穫できるようになっても販路が見つからなかったり、収穫に手が回らなくて品質が落ちてしまったら、マーケットからの信用を失いかねません。
そうなると、なかなか後戻りはできない状況に陥りますから、自身の経営規模や目指す方向性を見極めながら、最適規模で拡大していく必要があります。

イチゴ栽培で面積拡大を考えるなら、30〜40aをワンリミットに

ミガキイチゴ
写真提供:株式会社GRA
栽培面積を拡大しても、利益につながらないようでは経営が行き詰まる危険もあります。どの程度の規模感で展開していくのが理想的なのでしょうか。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
イチゴで栽培面積を拡大するときは30〜40aが目安になると考えています。もちろんGRAではもっと大規模に行う場合もあります。そのとき、リソースの補填をした人たちが、きちんと食べていけるだけの利益を確保できるかどうかが判断基準になります。

設備投資の考え方|P/Lに関する貢献度が高いものを選ぶ

事業拡大を考え、設備投資が必要になったときにはP/L(Profit and Loss statement)への貢献度を意識することが重要だといいます。P/Lとは一定期間の損益計算書で、収益から費用を差し引いた純利益を表す経営成績です。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
P/Lを見たときに、経営のどこがどれぐらい変わるかというのが、投資の重要な判断基準です。たとえば「コストの50%を占める部分が大幅に減らせる」のであれば、インパクトが大きいですよね。

「作業が楽になるから」「効率がよくなるから」という視点の先に、コスト的にどう変わるのか、売上がどのくらい増えるのか、その結果P/Lのボトムに残る営業利益がどれだけ増えるのか。数字に意識を向け「経営成績に対して貢献度が高いものに投資を行う」ことは、経営の大きな判断基準になります。

利益を生み出すことは顧客に対する価値を作り出すこと

贈答用ミガキイチゴ
写真提供:株式会社GRA
農業とIT技術の融合、最適規模の設備投資による事業拡大、自社商品ブランドの確立など、GRAの事業戦略は、この10年で大きな成果を上げています。より安定的に農業経営を続けていくために、岩佐さんが大切にしていることがあります。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
きちんと「利益を出す」ことが大切だと思います。農業は設備投資の減価償却を非常に短い期間でやらないといけないので、構造上的に利益が出にくいんです。キャッシュを生み出せるかどうかに尽きます。無味乾燥に聞こえるかもしれませんが、しっかり数字を把握して現実を見てやらなければいけません。

経営がうまくいかない理由は非常にシンプル

売上が伸び悩んでいたり、なかなか収益が上がらない、というときには明らかな理由があるといいます。
岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
利益が出ていないのは、おいしいものを作れていないということです。または、おいしいものが作れていても適正な価格で販売できていないのです。手をかけて経費もかけておいしいものを作ったとしても、お客様に買っていただけなければ「無価値」です。

「商品自体の品質がよくない」「生産コストがかかりすぎている」「販売価格・販売方法・販売場所が適切ではない」などの原因を把握し、分析して改善する努力も必要です。

利益は顧客に対する「価値の尺度」

岩佐大輝さん
岩佐大輝さん
利益を生み出すというのは、お客様に対する価値を作り出すということです。利益を生まないのであれば、誰にとっても価値を作り出していません。利益は顧客に対する「価値の尺度」だと正しくとらえることが重要です。


顧客にとって「新しい価値」を提供できれば、利益を得ることができる、という岩佐さん。GRAが提供しているラグジュアリーな1粒1,000円のミガキイチゴや、広大な空間でのイチゴ狩り体験なども、まさに新しい価値の創造です。

「農業の新しい価値」を提供し続ける農業経営体を目指そう

ミガキイチゴの6次産業化
写真提供:株式会社GRA
先端施設園芸による栽培、農業とIT技術の融合など、農業の最先端をいくGRA。設立から10年が経ち、地域で100名以上の雇用を創出し、イチゴ狩りに年間5万人以上が山元町を訪れるようになりました。設立当初に目指していた地域の復興支援のために精力的に活動を続けた結果、目に見える形での貢献ができているという自負もある岩佐さん。

今後は新規就農支援事業の強化や海外事業のさらなる拡大など、未来を見据えた事業構想も進行中です。
GRAの最新のテクノロジーを駆使した華やかなビジネス展開が注目を浴びるなか、岩佐さんの経営手法には徹底したデータや情報分析にもとづく堅実な判断が欠かせません。農業経営においてもビジネスセンスをみがき、的確な経営判断を行うことの重要性をあらためて認識することで、大きなチャンスに結びつくのかもしれません。 岩佐さんの著書もぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

岩佐大輝さんの本

ITEM
絶対にギブアップしたくない人のための 成功する農業
著者:岩佐 大輝
出版社:朝日新聞出版
発行日:2018年3月20日

イチゴ農家になるには?詳しくはこちら


紹介されたアイテム

絶対にギブアップしたくない人のための 成…

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この記事の筆者:
細川理恵

広告制作会社のコピーライター、旅行関連情報ツールの編集ディレクターを経て独立。全国各地の農園、食品関連企業を中心に取材・執筆を行う農業ライター、日本野菜ソムリエ協会認定野菜ソムリエプロ、AGRI PICK エディターとして活動中。

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