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兵庫県丹波市と株式会社マイファームが受講生を支援!丹波市立農の学校で有機農業を学ぶ


丹波市立農の学校は公設民営のスタイルで有機農業の担い手を育てる学校です。学校でほ場実習を担当する前田悟志さんに、農の学校で学べること、受講生や授業の雰囲気、公設民営のメリット、卒業生の進路などを詳しく伺いました。有機農業を学びたい人はぜひご一読ください!

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神山 朋香

大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報などを執筆しています。…続きを読む

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農の学校の集合写真

写真提供:丹波市立農の学校
兵庫県丹波市に「農(みのり)の学校」という農業学校があるのを知っていますか?丹波市が設置、株式会社マイファームが運営する日本初の公設民営方式の全日制農業学校として2019年に開校し、2021年は3期生20名が学んでいます。学校の特徴や実際の授業内容、雰囲気などを詳しく伺いました!

「農の学校」とそのほかの農業を学べる学校については、こちらの記事でも紹介しています。

有機農業を学び地域に貢献することを目指して

農の学校校舎
写真提供:丹波市立農の学校

教えてくれたのは

前田悟志さん
写真提供:丹波市立農の学校
株式会社マイファームの前田悟志さん。農の学校では、主にほ場実習のサポートをしています。実習の準備をしたり、困っている受講生の手助けをしたりして、受講生の一番近くで農の学校を支える存在です。

前田悟志さんプロフィール
神戸市出身。大学卒業後、JA丹波ささやまに入組。2020年に株式会社マイファームに入社。

創設者・山下一穂氏の「田舎からの国づくり」が根底に

農の学校の創設者は、高知県で土佐自然塾を運営していた故・山下一穂氏です。山下氏は丹波市にある農業法人「耕す」の栽培指導もしていました。その縁で、丹波市が山下氏に助力を求め、農の学校が創設されました。

山下一穂氏によって創設されたことが「農の学校」にどのような影響を与えていますか?

前田悟志さん
前田悟志さん
山下先生が提唱されていた、有機農業を学び地域に貢献するということが実は国づくりにすらつながっているという「田舎からの国づくり」という構想が農の学校の根底に流れています。

農の学校 教育方針
・「自分で考え、自分で決める」自主性を養う場とする。
・畑は「学びの場」であると同時に「実践の場」である。
・失敗してもいいから試してみることを大事にする。


教育方針は自主性を重んじる内容ですね。初めて農業を学ぶ人でも大丈夫ですか?

前田悟志さん
前田悟志さん
初めて農業をする人に、いきなり自主的にやってくださいというのはできないので、4月の入学後、夏ごろまでは、講師と相談した作業内容を事務局から受講生に伝えています。

夏以降は、受講生も作業内容や作業にかかる時間がわかってくるので、1週間交代で回ってくる二人一組の作業段取り班が1週間の作業内容を決めて、1日ごとの工程に落とし込んでいきます。講師の先生とは、週に1度ほ場を回って必要な作業を確認したり、質問をしてアドバイスを受けたりします。社会人を経験している受講生が多いので、仕事の習得は早いそうです。

失敗してもいいから試してみるというのは、どのようなことでしょうか?

前田悟志さん
前田悟志さん
例えば、トマトの仕立て方には、1本仕立てやソバージュ、連続摘芯などいろいろなやり方があります。本校では、区画によって仕立て方を変えてどの方法が自分に合うのかを考えてもらいます。人によってどのような作業が得意かは異なるので、選ぶ仕立て方も変わってきます。

どのような作業が自分に適しているのかは、実際にやってみないとわからないこと。また、農業において、実践する機会は1年に何度もあるわけではありません。一つの方法しか知らずに就農してしまうのはリスクが高いので、「農の学校」ではいくつもの方法を学校で試すようにしているのです。試すこと、失敗することが許されているのは、学校ならではといえます。

有機農業の栽培方法を学ぶ

農の学校ほ場
写真提供:丹波市立農の学校

有機JAS認証を取得したほ場で40品目の野菜や水稲を栽培

「農の学校」の実習ほ場は有機JAS認証を取得しており、即した農法で栽培しています。



農の学校では、有機農業の栽培方法を学ぶのですね。

前田悟志さん
前田悟志さん
有機農業と一言で言ってもさまざまな農法がありますが、農の学校では様々な農法・やり方がある中で自分にとって最適なやり方を見つけてもらえる場ということに重点を置いています。慣行農業を否定することもないですし、むしろ研修の中で化学農薬を使用している農家さんを訪問することもあります。1年を通してやりたい農業と経営のバランスの中で自分にとって最適な道を見つけてもらえればと考えています。

有機農業は難しいのではないですか?

前田悟志さん
前田悟志さん
有機農業には難しさもあるのですが、最初に有機農業をするとその難しさを感じないのではないかと思います。むしろ慣行農業から転向すると、虫がいることや生育が遅いことに不安を感じて有機農業を難しく感じるかもしれません。農の学校の受講生は、卒業後も有機農業を目指す人がほとんどです。

栽培品目はどのようなものですか?

前田悟志さん
前田悟志さん
少量多品目で1.7haの実習ほ場に40品目の野菜と水稲、丹波市特産の黒大豆、大納言小豆を栽培しています。年間を通して野菜セットが組めるように常に5品目以上の作物が収穫可能な栽培スケジュールを組んでいます。

農業経営について学ぶ

座学の様子
写真提供:丹波市立農の学校

営農計画や販路について考える

「農の学校」では、栽培方法だけではなく、農業経営などについて学ぶ座学の授業も充実しています。農業に特化した公認会計士の講義があったり、ゼミナール形式で営農計画書を作成し、講師からアドバイスを受けたりすることができます。

受講者の関心の高い授業にはどのようなものがありますか?

前田悟志さん
前田悟志さん
流通についての授業への関心は高いです。受講生が一番不安に感じるのは販路なので、いろいろな販路があることを示し、その販路に売るためにはどうしたらよいかということを考えます。

受講生の学ぶ姿勢をどのように感じていますか?

前田悟志さん
前田悟志さん
学生時代と違って、自分のやりたいことを実現するために自主的に学びに来ているので、学ぶこと自体を楽しんでいる印象があります。

農業というキーワードで集まった受講生たち

ひまわりの畑にいる受講生
写真提供:丹波市立農の学校

受講生のバックグランドは多種多様

農の学校 受講生の内訳
年齢層/10代2% 20代18% 30代31% 40代29% 50代13%  60代7%
男女比/8:2
入学前居住地/丹波市7% 兵庫県30% 関西圏45% その他18%


受講生は年齢もさまざまですが、社会人経験のある人が多いのですね。

前田悟志さん
前田悟志さん
2期生に高校卒業後に農の学校に入学した人が二人いましたが、あとは、社会人を経験してから入学してきた人ばかりです。職業も児童福祉施設で働いていた人や、自動車整備士、公務員、SEなどさまざまです。50代の早期退職、60代のリタイア後の人もいます。バックグラウンドは違いますが、皆さん農業というキーワードをもとに集まっているので、いい意見交換ができていると思います。

どのような意見交換ですか?

前田悟志さん
前田悟志さん
和気あいあいとして、みんな楽しそうです。全員が農業に対して前向きな人たちなので、一人が「こうしたい」という話をすると、「もっとこうしたら?」など、それぞれのバックグラウンドがあるところから意見をもらえるのです。農業についての話がポジティブに広がっていく感じがします。


実は前田さん自身も株式会社マイファームが運営するアグリイノベーション大学校の卒業生。農家の出身ですが、農業の話を真剣にできる人たちと出会えたのは、アグリイノベーション大学校に入学してからだったそうです。農業を語り合える仲間を見つけられることも、「農の学校」の大きな魅力の一つでしょう。

受講生からの信頼抜群の先生、充実した講師陣がそろう

生育確認をする様子
写真提供:丹波市立農の学校

優しくて何でも答えてくれる先生

受講生が一番接するのが実習担当の先生。優しくて受講生からの信頼は抜群だと前田さんは言います。

講師の先生はどのような方々ですか?

前田悟志さん
前田悟志さん
実習担当の先生は、実習経験が豊富で、病害虫にも詳しいので何を質問しても即答してくれます。実践経験があり、学術的な話も伝えられ、新規就農者に寄り添った話ができる人に講師に来てもらっています。


ほかにも、農業に特化した公認会計士や農業経営の専門家など、講義内容に即した充実した講師陣が招かれています。

丹波市からの充実したサポートも!公設民営のメリットとは?

トラクター講習の様子
写真提供:丹波市立農の学校

受講料が抑えらえる、農地や雇用先を紹介してもらえる

「農の学校」は公設民営のため、設置者である丹波市と運営者の株式会社マイファームの両者から支援を受けられます。


公設民営のメリットにはどのようなものがありますか?

前田悟志さん
前田悟志さん
まず、丹波市から運営費が投入されているので、受講生からいただく授業料が抑えられます。また丹波市で就農を希望した場合には、丹波市から農地や雇用就農先を紹介してもらえます。農地の紹介では、きめ細かく周辺の農地の状況や将来性まで検討してくれる手厚さです。ほかにも家賃補助など、丹波市の支援はいろいろあります。

丹波市によるその他の助成
・家賃助成(受講期間中)
市外から丹波市内に移り、新たに住居(戸建てまたは集合住宅)を借りた場合、丹波市が月額上限25,000円として家賃の2分の1(1,000円未満切り捨て)を補助。助成期間は、在学期間と同一(最大12カ月間)。
・家賃助成(就農時)
卒業後、丹波市内に定住し、就農した場合、丹波市が月額上限20,000円として1年間の家賃の3分の1(1,000円未満切り捨て)を補助。助成期間は、定住後、最大12カ月間。
・農業機械・農業施設導入経費助成
就農後、丹波市で認定新規就農者の認定を受けた人には、農業機械・農業施設導入経費について、一部助成制度有り。

また、丹波市以外での就農を希望する場合には、株式会社マイファームが持っている全国のネットワークを活用することが可能です。「農の学校」は丹波市が設置していますが、就農先が丹波市内に限定されているわけではありません。丹波市内での就農、丹波市以外での就農のどちらを選択しても、手厚い支援を受けることが可能になっています。株式会社マイファームはアグリイノベーション大学校の卒業生(2021年現在1,630人)をはじめ、全国にネットワークを持っていて、その中から受講生に適した就農先を探します。就農にあたっては、受講生が農家に見学に行くこともありますが、快く受け入れてもらえるそうです。
前田悟志さん
前田悟志さん
見学に行くと、農家の人の手を半日止めてしまうことになるのですが、皆さん「見に来たらいいですよ」と言ってくださいます。おそらく、有機農家を応援したいという気持ちがあると思うのです。本当に人の優しさで成り立っています。

卒業後に歩む道|学校ともつながりながら、つまずかないように

畑にいる二人
写真提供:丹波市立農の学校

卒業後の進路は

「農の学校」の卒業生の進路は独立就農が約5割、雇用就農が約4割で残りが農的暮らしや半農半Xだと言います。また、丹波市内に就農する人は全体の約60%です。

入学前から決めていた進路に進む人が多いですか?

前田悟志さん
前田悟志さん
卒業後に独立するか雇用されるかは入学前に決めている人がほとんどです。独立後の栽培品目や経営形態は学校で経験を積む中で具体的な計画に落とし込んでいきます。その中でより実践での経験を積むために雇用就農に切り替える人もいます。


雇用就農については、こちらの記事をご覧ください。

卒業生とのつながりはありますか?

前田悟志さん
前田悟志さん
卒業後も収穫できた野菜を持って学校に顔を出してくれたり、先生に質問しに来たりする人もいます。農地や雇用の情報をくれる人もいますよ。

就農後に挫折しないように

就農後、つまずかないようにどのような指導をしていますか?

前田悟志さん
前田悟志さん
営農計画書を作るときに机上の数字と労働時間が合わないことがあるのです。売上を上げるためには、単価もしくは収量を上げなくてはなりませんが、収量を上げるために1日中働かなくてはならないような営農計画を立ててしまうことがあります。そのため、農の学校ではゼミナールで講師からアドバイスをもらいながら営農計画書を作成しています。労働時間が合わない原因がどこにあるのかを考え、修正していきます。

卒業生の販路についてのサポートはありますか?

前田悟志さん
前田悟志さん
ゆくゆくは卒業生の出荷グループができるのが理想的だとは考えています。ただ、出荷グループに「農の学校」が関与すると自立につながらないので、そこは卒業生たちで自主的にやってほしいと思います。「農の学校」が出荷している販路については、積極的に紹介したいと思っています。「農の学校」のゴールは卒業生が自立するところにあります。そのためにも就農後の支援は行っていきたいです。

農業を志す人を全力でサポートする学校

野菜ボックス
写真提供:丹波市立農の学校

入学希望者が増えている

これまで入学希望者を全員受け入れてきた「農の学校」ですが、入学希望者は増加傾向にあり、2022年の第4期募集から選考を行うようになりました。

「農の学校」入学審査基準
1 意欲(新規就農への意欲が高いか)
2 目標意識(明確な目標を持っているか)
3 実現可能性(自己の現状に照らして、目標設定が妥当なものであるか)
4 農業への思い(どのような農業をしていきたいか/地域貢献意欲が高いか)


「農の学校」第4期募集要項
・開講期間/2022年4月~2023年3月(1年間/2学期制)
・開講時間(前年度実績)/【通常】9:00~12:00/13:30~17:30
【夏季】2部交替制
1(1)7:00~10:00/11:00~15:00(2)11:00~15:00/16:00~19:00
2(1)6:00~10:00/11:00~14:00(2)11:00~14:00/15:00~19:00 ※時期により時間帯は異なる。
サマータイム期間: 2022年6月13日(月)~ 9月16日(金)
・カリキュラム(前年度実績)/座学講義 58コマ(183時間)、栽培実習・実践 (1,381時間)、地域のなりわい講座 (60時間)
・費用/受講料:670,000円(『農業技術の教科書』及び学校指定教科書代金含む)、日本農業技術検定2・3級受験料:7,150円、農業簿記検定3級受験料1,650円※以上、価格はすべて税込
・募集期間/2021年7月5日(月)~ 2022年2月15日(火)

農の学校を目指す方にメッセージをお願いします。

前田悟志さん
前田悟志さん
農業は知れば知るほどおもしろい世界です。農業を志す人を全力で後押しする学校として「丹波市立農の学校」があるのでぜひ遊びに来てください。一緒に農業界を盛り上げていきましょう!

「農の学校」現地説明会
2021年11月28日(日)10:30~16:00
2021年12月11日(土)10:30~16:00
2022年1月8日(土)10:30~16:00
2022年1月29日(土)10:30~16:00
2022年2月12日(土)10:30~16:00
オンライン説明会
2021年12月3日(金)19:00~21:00
2021年12月7日(火)19:00~21:00
2021年12月13日(月)19:00~21:00
2021年12月21日(火)19:00~21:00
2021年12月27日(月)19:00~21:00
2022年1月11日(火)19:00~21:00
2022年1月18日(火)19:00~21:00
2022年1月24日(月)19:00~21:00
上記日程でご調整が難しい方は、個別に運営事務局にご相談ください。
現地へのご来校、またはオンラインにてご案内いたします。(日時は応相談)

丹波市と株式会社マイファームがタッグを組み、農業を志す人を育てて全面的に応援する「農の学校」。大人が集う場所ながら、「学校」と呼ぶのにふさわしい温かさがあります。全日制のため、時間や費用は必要ですが、「農の学校」は国が実施する「農業次世代人材投資資金(準備型)」の認定研修機関です。交付要件を満たせば、卒業後の進路として就農を希望する場合、受講期間中に年間最大150万円の給付を受けることができます。

補助金や融資については、こちらの記事をご覧ください。


農業を志すなら、「丹波市立農の学校」への進学を検討してみてはいかがですか?

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