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農業ビジネスのリスクに備える!民間損害保険の基礎知識|賠償事故、サイバー攻撃、自然災害もカバーできる

事故、自然災害、気候変動、風評被害など、農業の回りにあるさまざまなリスク。今回は損保ジャパンの保険商品を参考にしながら、農業のリスクと損害保険についてお伝えします。


トラクターのある風景

出典:写真AC
多くの事業活動と同じように、農業においても業務上のさまざまなリスクが存在します。農業経営者はリスクに備える必要がありますが、現代ではリスクの種類も多く、内容も複雑化しています。一方、農業には収入保険制度や作物別の共済制度、農業者などを対象にしたJA共済などが存在しているため、民間の損害保険については検討せずに済ませている場合もあるでしょう。今回は損害保険ジャパン株式会社の担当者にお話を伺いながら、農業経営者が考えるべきリスクと損害保険についてお伝えします。

農業ビジネスを取り巻くリスクは変化している

土石流災害
出典:写真AC
近年の天候の変化や、大規模災害・新型コロナウイルスの発生、農業従事者の減少や高齢化など、農業を取り巻く環境は変化しています。それに伴い、農業ビジネスを取り巻くリスクも変化しており、一見、有益に見えるスマート農業や6次産業化の進展、輸出の拡大などにも付随するリスクがあります。損害保険ジャパンの担当者は「農業従事者が考えなくてはならないリスクが増えている」と話します。

農業法人が備えるべきリスク

それでは、農業法人が備えるべきリスクについては、どのようなものがあるのでしょうか。損害保険ジャパンでは、リスクを4つに分類しています。
分類リスクの例
直接業務のリスク食中毒、危険異物混入、疫病(鳥インフルエンザなど)、病害虫の発生、残留農薬の検出、貸し倒れ、価格下落、設備機械の損傷、事務処理ミス など
間接業務のリスク火災・爆発、集団感染病、情報システムの外部攻撃、労働災害、関係者の不祥事、違法残業、通信システム断絶、契約不備トラブル など
外部環境のリスク地震・津波、台風・集中豪雨、天候不順、採用困難、金利高騰、風評によるイメージ低下、盗難 など
経営プロセスのリスクマーケティングの失敗、経営者の疾病、死傷 など
損害保険ジャパン株式会社「『アグリ・トータルプラン』のご案内」を参考にして作成
これらのリスクについては、それぞれ発生頻度や損害規模が異なります。例えば「火災・爆発」や「地震・津波」などは発生頻度は低いですが、一度発生すればその損害規模は大きなものになることが想定されます。一方、「設備機械の損傷」や「事務処理ミス」などは比較的発生頻度は高いものといえます。それぞれのリスクの発生頻度や損害規模を考えながら、リスクに備える必要があるのです。

個人経営規模の農家でも損害保険を検討すべき?

経営規模が小さい場合でも、農業経営におけるリスクを認識しておく必要があります。賠償事故の発生、労働人材のけがや死亡・後遺障害、インターネットを活用して販売している場合のサイバーリスクなど、経営規模にかかわらずリスクは存在します。

収入保険や共済との違いは?民間の損害保険が有効な理由

農業には、収入保険や共済制度など公的な補償制度があり、農作物に直接被害を受けた場合や、収入が低下した場合には、農業共済や収入保険などで補償を受けられます。

収入保険


農業共済についてはこちら


共済制度や収入保険は心強い備えですが、損害保険ジャパンの担当者は、「農業に関わるリスクは、共済でカバーできない部分があり、民間の損害保険会社の商品の活用が有効」と話します。

有効な損害保険商品の例
・農作業中や生産した農産物の提供に伴う賠償責任に備える保険
・労務リスクに対応する使用者賠償責任補償やパワハラ・セクハラに対応した雇用慣行賠償責任補償を付帯した傷害総合保険および労災総合保険
・スマート農業の発展に伴い、データの活用を行う環境下でのサイバーリスクに備える保険


損害保険でカバーできるリスクと対象商品|損保ジャパンの場合

握手をしている男性2人
出典:写真AC
多様化する農業ビジネスのリスクに対して、どのような損害保険があるのでしょうか。例として、損害保険ジャパンの保険を見てみましょう。


第三者への賠償事故

他人にけがをさせてしまった

農業機械で稲刈り中に通行人にけがをさせてしまうなど、第三者への賠償責任が発生するような事故に備える「企業総合賠償責任保険」「施設賠償責任保険」があります。

生産物への異物混入、食中毒の発生など

作った農作物などに残留農薬が検出されたり異物混入があったりした場合や、食べた人が食中毒を起こしたときに備える「生産物賠償責任保険」「フードリコール保険」があります。生産物賠償責任保険では、第三者に身体障害・財物損壊が発生し、法律上の賠償責任を負担することによって被る損害が補償されます。フードリコール保険では、対象商品を回収するための費用等が補償されるほか、コールセンター設置や商品回収の支援が受けられます。

損害保険ジャパンの補償事例
<事故事例>提供した商品に異物混入が発覚。相手方より損害賠償請求をうける。
<支払保険金>882万2千円


貸し倒れ

取引先や顧客から代金(売掛債権)が回収できない、取引先が倒産するなどの貸し倒れに備える「取引信用保険」があります。

輸送中の事故

農作物の輸送中や保管中の損傷や第三者への賠償事故に備える「物流総合保険」があります。

スマート農業機器の損傷

農薬散布用ドローンを飛ばしたときに第三者をけがをさせてしまったり、ドローンを落としたりした場合などに備える「動産総合保険」と「賠償責任保険」をセットにした「産業用ドローン専用保険」があります。

外部からのサイバー攻撃

販売や在庫管理のシステムなどへの外部からのサイバー攻撃や情報漏洩(ろうえい)の発生に備える「サイバー保険」があります。サイバー保険では、他人に損害を与えた場合の賠償責任や訴訟費用、事故対応にかかる諸費用、自社の損失利益などが補償されます。緊急時サポート総合サービスを自動付帯しており、コールセンターの立ち上げから、必要となる各種サポート機能の調整、法令対応などについて協力弁護士事務所を紹介など、加入者に必要な対応を用意しています。

損害保険ジャパンの補償事例
<事故事例>社外にエクセルファイルを添付してメールを送信しようとした際に、ウイルス対策ソフトでマルウェア判定された。
<支払保険金>396万円


従業員とのトラブル

福利厚生の不足による離職や従業員からの賠償請求に備える「事業活動総合保険『ビジネスマスター・プラス』」や「使用者賠償責任保険」があります。損害保険ジャパンの担当者は「農業は労働災害の多い業種なので、そのリスクに備えておくことは重要」と指摘します。ビジネスマスター・プラス(傷害ユニット)では、労災事故発生により、企業や役員が負担する損害賠償金および解決のために支出する費用が補償されます。けがだけでなく、うつ病による自殺や過労死等の労働災害にも対応しています。

損害保険ジャパンの補償事例
<事故事例>長時間労働による過労死
<支払保険金>3,944万5千円


集団感染症・疾病

集団感染症や疾病に備える「傷害保険(特定感染症危険補償)」があります。

風評によるイメージ低下

SNSなどにより、風評被害を受けた場合に備える「ネット炎上対応費用保険」があります。

複数のリスクを組み合わせた保険設計が可能

空と気温計
出典:写真AC
多くのリスクがあるからといって、すべての保険に加入する必要があるわけではありません。例えば、「企業総合賠償責任保険」に加入すると、「施設賠償責任保険」「生産物賠償責任保険」「フードリコール保険」などの補償を含めた設計をすることができます。

損害保険会社の運営する「デリバティブ」とは?

ここまでは、実際の損失に対して補償をするものでしたが、民間の保険会社ならではの補償として、「デリバティブ」というものがあります。これは金融派生商品で、「平均気温が〇度以上になった場合」などの条件に基づき、あらかじめ約定した金額の補償を受けられるというものです。つまり、デリバティブ商品では、実際に損失が生じていなくても、条件に該当した場合には補償を受けられます。この商品はオーダーメイド型でその地域の過去の気温のトレンドなどを参照しながら、補償内容が設計されます。

損害保険の保険料と加入方法

書類を間にした二人の手元
出典:写真AC

損害保険の保険料

損害保険の保険料は、保険の種類によって異なります。業務災害保険やフードリコール保険は、主に売上高を基に、産業用ドローン専用保険ではドローン本体の価格を基に保険料が設定されます。損害保険ジャパンの保険料の例を見てみましょう。


賠償責任保険
賠償責任保険金額:1億円
年間保険料:67,070円

ビジネスマスター・プラス(傷害ユニット)
補償対象:役員、正規従業員、臨時雇用従業員
保険金額:死亡5,000万円、入院5,000円、通院3,000円
使用者賠償:1億円、雇用慣行賠償3,000万円
年間保険料:515,570円

サイバー保険
賠償責任保険金額:1億円
年間保険料:106,800円
※告知事項や過去の事故歴によって保険料の変動および引き受け条件が異なる


損害保険の加入方法

大手損害保険会社の損害保険に加入する際は、保険商品を販売している代理店に連絡をとるのが一般的です。損害保険の代理店といっても、なじみがないと感じるかもしれませんが、自動車保険や自宅の火災保険など、すでに何らかの損害保険に加入している人は少なくありません。損害保険ジャパンの担当者は「すでに加入してる損害保険の代理店に連絡をとり、気になるリスクを補償する商品はないかと相談するのが一般的」と話します。

自然災害などの緊急事態から早期に復旧するための「BCP」とは?

打ち合わせ風景
出典:写真AC
損害保険以外でリスクに備える方法もあります。「BCP」とはBusiness Continuity Planの略で、「事業継続計画」と呼ばれています。自然災害、大火災、テロ攻撃、新型インフルエンザなどの緊急事態に遭遇した場合に、被害を最小限にとどめて、事業の継続や早期復旧をできるように、平常時に行っておく活動や緊急時の事業継続の方法、手段などを定めておく計画のことです。

損害保険ジャパンの系列会社であるSOMPOリスクマネジメント株式会社では、コンサルタントが農業を運営していくうえでのアドバイスを行ったり、労働災害リスクの調査、自然災害ハザード状況調査などを行ったりして、BCPを策定する支援を行います。このように、コンサルティングを受けることや、BCPの策定などでリスクに備える方法もあります。

幅広いリスクを認識して備えておこう

畑
出典:写真AC
農家や農業法人が備えるべきリスクは、時代とともに広範囲なものとなっています。損害保険ジャパンの担当者は「農業には、きっかけがないと気づかないようなリスクがいろいろあるので、想定されるリスクを伝えることも損害保険会社の使命の一つ」と話します。まずは、事業にどのようなリスクがあるかを知ることが重要です。そのリスクに備える方法の一つとして、損害保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。

農業の社会保険についてはこちら


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神山 朋香

大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報などを執筆しています。

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